第966話 ミモナ梟の生態

「それじゃ、引き継ぎするね」


 と、ミミッチーがドーム状の建物から出て来た。意外とスムーズな歩行するんだな……。


「なんでそこまでデカいんだよ?」


 ドーム状の建物に入ってたから二メートルくらいかと思ったら、三メートル以上のデカさがあった。


「つーか、梟として生きていけんの?」


 ファンタジーな世界。ミミッチー以上の鳥はたくさんいるが、この体型で飛べんのか? この雪ダルマ体型で?


「大丈夫。もう歳だから肉を食べることは少なくなったし、木の実や魚を食べるから」


 梟の生態など知らんから、ミミッチーの言ってることが正しいかはわからんが、ここまでデカくなってんだから大丈夫なんだろうよ。


「ミミッチーって飛べるの?」


 プリッつあんからの質問です。


「飛べるよ。ほら」


 と、ミミッチーが翼を広げ、音もなく飛び立った。え、航空力学とか無視してね?


 音がないのはまだ納得できるとして、風が起こらないってどう言う訳よ? ってか、羽ばたきもしなかったよね?


「はぁ~、飛べるんだ。ミモナ梟は飛べないのが多いのに」


 え? 飛べない梟なの? なんでよ?


「ミモナ梟は、飛ぶと言うより跳ねる鳥なの。わたしのいたところのミモナ梟は、空中を蹴ってたわよ」


 それ、もう生き物としてのカテゴリーから外れてんじゃね?


「あの大きさで、あの速さなら飛竜でも食べちゃうかもね。トカゲとかネズミとかが好物だから」


「さすがに飛竜は食わんだろう」


 梟としてはビッグだが、飛竜はさらにデカい。逆に食べられんだろう。


「ミモナ梟を侮っちゃダメよ。音のない音を出して自分より大きいのだって食べちゃうんだから」


 なんかマジヤベー生き物らしいです。


「ふぅ~。疲れた」


 大空間を一っ飛びしたミミッチーが降りて来て、しんどいとばかりに息をついた。


「いや、久しぶりに飛んだから喉乾いちゃった。なんか飲み物ない?」


「ってか、なに飲むんだ?」


 生き血か?


「冷たいものが飲みたい」


 と言うので冷えたペプ○缶を出してみる。試しな感じで。


「なにそれ? どこから飲むの?」


 蓋を外してミミッチーに差し出した。


 さあ、どうする? と見てると、翼を広げ、器用に翼で缶をつかみ、嘴で缶を噛んだ。


 ベコ! とばかりに缶が潰れた。え? もしかして吸い込んだのか……?


「美味しいね。もっとある?」


「あ、ああ。好きなだけ飲めや」


 無限鞄からペ○シを出して床に並べた。


 翼を器用に使い、蓋を開けて一気吸い。よくゲップとか出さずに連続で飲めるよな……。


「……あ、あの、引き継ぎは……」


 おっと。そうだった。つい、ミミッチーの生態確認に夢中になっちまったわ。


「ミミッチー。どうぞ」


 オレは関係ないのでマンダ○タイムといかせてもらいます。


 その場にテーブルと椅子を出してコーヒーをいただいた。あ、ちょっと小腹が空いた。ミタさん……はいねーんだった。なんかねーかな? あ、ハンバーガーでイイや。モシャモシャゴックン。あー旨い。


 さっきの足止めで結界術を全開にしたせいか、味の濃さが気にならない。これならもう一個……はさすがに胸焼けするな。ごちそうさま。


 半分以上残ったハンバーガーをテーブルに置いたら消えてしまった。え?


「美味しいね、これ」


 は? と顔を上げたらミミッチーがいた。なんで?


「ダメよ。ミモナ梟の前で食べちゃ。すぐ人のもの獲っちゃうんだから」


 そこは獣なのな。つーか、そんな濃い味のもの食って大丈夫なのか? いや、炭酸飲んでるけどよ。


「ミモナ梟の胃は強いから大丈夫よ。毒を持つ魚だって食べちゃうしね」


 悪食な生き物だな。まあ、猫も同じもの食ってるがよ。


「もっとない?」


「さっき、肉がどうこう言ってなかったっけ?」


「硬いのが嫌いなだけ。柔らかいなら食べる」


 たんにメンドクセーからかよ。子どもか!


「あ、あの、引き継ぎ……」


 カーレント嬢がスゲー困った顔をしていた。


「ちょっと待て。こいつの腹を満たしてからだ。じゃないと話が進まんわ」


 自由な獣になにを言っても無駄。まずは腹を満たしてから従わせるのが獣との付き合い方だ。


 ハンバーガーを出してやると、包み紙を器用に外して次から次へと口の中に放り込んで行くミミッチー。丸飲みか?


「カーレント嬢も公爵どのたちも一旦休憩しろ。先は長そうだしよ」


 全員分の椅子を出してやり、茶と菓子を出してやった。


「まあ、急がば回れ。事を急ぐな、だ」


 これも獣との付き合い方の一つさ。

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