第936話 霊化
聞くも涙、語るも涙なキャロリーヌの物語が紡がれた。
うんうんと頷き、口元を手で隠しながら後ろに憑くレイコさんに振り向いた。
で、要約するとなんだって? と口パクで尋ねた。
「……無駄にいい笑顔でいたからそんなことだろうと思ってましたよ……」
なぜか呆れ果てるレイコさん。んなことはイイから要約して!
「所謂『
霊化? なんですの、それ?
「生前、強い後悔や思いがあり、なんらかの魔力霊力が合わさることで霊体として現世に固定されるのです。リッチや骸骨霊がそのよい例です」
あなたはそれに入らないの?
「わたしは、いわば魂の具現。思念体です。霊化ではありません」
その違いがよくわからんが、「一緒にしないで!」と解釈しておこう。レイコさんを同類にしたらリッチや骸骨に失礼な気がしないでもないからよ……。
「なるほど。事情はわかった」
「いや、百を聞いて一も理解してない人がなんの事情をどう理解したんですか?」
ソコはアレ。アレはソレ。考えるな、感じろさ☆
「ふふ。おもしろい方たちですね」
「……なかなか手強い性格してますよね、キャロリーヌさんって……」
この幽霊にそこまで言わせる骸骨。目くそ鼻くそを笑うってヤツだな、うん。
「しかし、怨み辛みでいる感じではねーし、なんで成仏しねーの?」
まあ、後ろにイイ例(いや、例外か?)がいるので、怨み辛みどかじゃないかもすれんけどよ。
「う~ん、後悔、ですかね~」
随分と軽い口調(後悔)やね~。
「どんな後悔よ?」
まったく興味はねーけど、一応、聞きはする。
「もっと可愛い男の子を飾りたいです!」
………………。
…………。
……。
「ドレミ召喚! 助けてー!」
席から立ち上がり、全身全霊を込めて叫んだ。
「畏まりました」
と、ドレミの声が。どこよ!?
辺りを見回すと、ベストの下から拳大の水色の塊が出て来た。なによ!?
テーブルの上に落ちた水色の塊が、グニョグニョと蠢き、十七、八センチのメイド型ドレミとなった。はぁ!?
「マスターを守るために分離体を仕込ませました」
なに仕込ませてんだよ! いや、今回は助かったけどよ。
「まあ、可愛いらしいですこと」
……マイペースな骸骨嬢やな……。
「初めまして、キャロリーヌ様。マスターの僕でドレミと申します」
「ふふ。可愛い名ね」
「ありがとうございます。マスターにいただいた名です」
いつも無表情なドレミがにっこり微笑んだ。表情筋とかあるんだ……。
「キャロリーヌ様は、こう言う男の子をどう思いますか?」
と、メイド型ドレミが十歳くらいの、半ズボンを穿いた男の子に変身した。
「う~ん。わたしは、もっと丸みがある男の子が好きですわ」
「こう言う感じですか?」
と、女の子っぽい男の子に変身。半ズボンを変えない理由はなによ? いや、訊きたくはねーけどよ。
「はい。大好物です!」
なんだろう。この寒気(恐気)は? 今すぐお家に帰りたい!
「──やはり、仲間でごさる!」
ぬわっ!!
突然、上からエリナが降って来て、吹き飛ばされてしまった。なによ!?
「まあ! どちら様で?」
「キャロリーヌどのの同志でごさる!」
うん、同類な。
水の中に沈みながら突っ込んだ。ってか、誰か助けてー!
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