第866話 参加者募集

「こんなものか」


 ほどよく小石が集まったので、リュケルトの掘っ立て小屋跡地へと戻ると、なにやら野郎どもが集まっていた。なんだい、いったい?


「リュケルト! 店はどうしたんだよ!?」


「店を辞めたのか!?」


「ここがなくなったらどこで買うんだよ!」


 どうやらリュケルトの店を利用しているヤツらのようだ。


「別に辞めちゃいないよ。ベーに新しい店を造ってもらうんだよ。なんか必要なのか?」


 まあ、客ならリュケルトに任せて、オレは無限鞄から小石を一つ、取り出した。


「どうするの?」


 しゃがんだオレの前に、ちょこんと座り、不思議そうに尋ねるレディ・カレット。ポカーンから復活したようでなによりです。


「組める用に加工するんだよ」


 こんなふうにな、と土魔法と伸縮能力で小石をレゴブロック化する。


「おー!」


 素直に驚くレディ・カレット。なんか新鮮。


「レディ・カレットは、魔術は使えねーのか?」


 高い魔力は感じるが、使ったところは見てねーな。


「習ってはいるけど、才能がないみたいで、初歩しか使えないの……」


 なにやらコンプレックスなご様子。そうなのかい?


「ちょっと、オレの手を握って魔力を流してみな」


 握手するよに右手を出した。


 躊躇う様子を見せたが、引かないオレに諦めたのか、しょうがなくと言った感じで右手を握った。


「……どうすれば魔力って流せるの……?」


 そこからか。まあ、うちの天才たちもすぐにはできなかったからしょうがねーか。


「んじゃ、オレがレディ・カレットの魔力を強制的に高めてオレへと流す。ゆっくりやるから慌てるなよ」


 他人の魔力は、違和感そのもの。上手く魔力の波長を似せても違和感は消えない。まあ、結界術でまったく同じに似せることは可能だが、今回はレディ・カレットに魔力を感じさせるのが目的。その違和感を感じろよ。


「ふひゃっ!」


 可愛らしい悲鳴を上げるが、手をしっかり握って離さないようにする。


「それがオレの魔力だ。わかるな?」


「う、うん。わかる……」


「じゃあ、その魔力でレディ・カレットの魔力を流して、オレへと引っ張っるぞ」


 返事を待たず、オレの魔力でレディ・カレットの魔力を流し、回し、巡らせて、オレへと流した。


 ……やはり、魔力の循環がワリーようだな……。


 遺伝的か後天的かはわからんが、ちゃんと矯正してやれば魔力はちゃんと流れる。


「オレの中に流れるレディ・カレットの魔力を返す。流れを感じて自分で流すように思い浮かべろ」


「……わ、わかった……」


 魔力をレディ・カレットに返し、流すのをサポートしながら徐々に流すのを任せて行く。


 完全に自分で流すことができたら手を離す。


「レディ・カレット。それが魔力の循環だ。それを毎日やることによって魔力の制御ができるようになり、威力が増していく」


「まずは、魔力循環を今より早く、より正確に、より自然にできるようになれ。そしたら魔術の理が見えてくる」


 と、旅の魔術師は言ってました。あとは、本職に教えを請え。オレじゃそれが精一杯だからよ。


 こちとら凡人。レディ・カレットの五分の一もねーんだ、教えるなんて、どだい無理なんだよ。


 ……そんな拙い教えからでもぐんぐん伸びるうちの妹と弟はスーパーです……。


 練習に入ったレディ・カレットをしばし眺めてから、小石のレゴブロック化を再開した。


 で、やってたらいつの間にか辺りは暗くなっちゃいました。まだ、半分もレゴブロック化してねーのによ。


「レディ・カレット。練習は終わり。帰るぞ~」


 オレだけなら野宿でも構わんが、人様の娘に野宿はさせられない。まあ、大丈夫な娘には強制的にさせますけどねっ!


「……わ、わかった……」


 慣れない魔力循環は疲れるもの。我が儘を言わず帰ることに了承した。


「リュケルト。また明日来るわ」


「そりゃ構わんが、お前、なにしに来たんだよ?」


 あれ? なんだっけ? ヤベー、マジで忘れたぜ。


「マスター。合コンの参加者を誘いに来たのでは?」


「あ、それだ! 合コンだよ、合コン。すっかり忘れてたわ」


 どこからか目的が変わって、完全に頭からこぼれ落ちてたよ。


「合コンってなんだよ?」


「若い男と若い女が仲良くおしゃべりしたり遊んだりして、将来の伴侶を見つける催しだ。うちでメイドやってるダークエルフ、知ってるだろう?」


「あ、ああ。肌の黒いエルフだろう」


「そのダークエルフを嫁にしてもイイってヤツに参加しねーか声をかけておいてくれ」


 と、無限鞄から葡萄酒を何十本と出してリュケルトに渡した。


「十人集められたらイイものやるから頼むわ。んじゃな」


 レディ・カレットの腕をつかみ、ドレミといろはがつかまったのを確認して、別荘へと転移した。アデュー!

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