第846話 身内
──ぬ? 殺気!
「プリキィィィック!」
なんの! 真剣プリッ取り──なに!? リ〇ちゃん人形だと!?
白羽取りした手にはキック姿の〇カちゃんが収まっていた。
「どこだ!」
「ここよ!」
そう宣言するが姿はなし。ぬ! 後ろか? と振り返ってびっくり。リ〇ちゃん人形がたくさん降ってきた。
「なんだとっ!?」
「妖精忍法分身の術よ!」
な、なんだと!? いつの間にそんな技を身につけたんだ!
だが、こちらも村人忍法を身につけた者。人形を使った分身の術など片腹痛いわ!
「村人忍法百烈拳!」
落ちてくるリ〇ちゃんを容赦なく殴りつける。
「──トルネードプリキィィック!」
後ろからの蹴りに体を吹き飛ばされてしまった。なぜに!?
いや、今は体制を直して反撃じゃー!
転がりながら立ち上がり、敵を見据える。
「なにすんじゃボケーッ!」
「それはこっちのセリフじゃアホー!」
と、和気藹々なことがありました。
「……その結果、森を一つ潰した訳か……」
なにかとっても疲れたような公爵どの。大丈夫?
「ったく。じゃれるなら魔大陸でやりやがれ。森と湖が自慢のバイブラストが砂漠になるわ!」
「ワリーな、うちのメルヘンがバカやってよ」
まったく、モコモコ獣で襲ってくるとは、とんでもねーメルヘンだぜ。光線を何回も撃ちやがってよ。オレじゃなければ死んでるところだ。
「……まあ、いい。飛空船置き場にするからよ」
「ついでだから倉庫も造ってくれよ。ハーミルを家畜のエサにするからよ」
「ちょっと離れている間に仕事を増やすな。カーレだって一大事業なんだからよ……」
「冒険者でも雇えよ。あぶれているヤツはどこにでもいるんだからよ」
人は使ってこそ資源。上手く使うのも領主としての仕事だぜ。
「まあ、やれないならそれでイイよ。暇なときオレが刈りにくるからよ」
拠点をもらうんだし、泊まりがけでこればイイさ。
「ところでプリッつあん。そろそろ退けてくれません?」
モコモコ獣を纏ったプリッつあんの強いこと。ことごとく村人忍法を躱されましたよ。
「反省した?」
なにを? と言ったら地面に埋もれちゃうのでマジな顔で頷きました。
フフ。これぞ村人忍法心の中であっかんべーよ。
「……なんか信用ならないけど、まあいいわ」
モコモコ獣の足が退かれ、やっと解放されました。村人忍法身代わりの術で生み出したベーくんが、ね。
ケッ! 妖精忍法がなにものぞ。村人忍法は無敵よ!
まあ、ことを丸く収めるには負けてやるのも大人の対応よ。いや、まだ子供ですけどね。
一瞬の隙を見て身代わりと入れ替わる。フッ。S級村人をナメたらいかんぜよ。
「さて。イイ運動したし、一っ風呂浴びるか」
もちろん、牧草集めの方だぜ。プリッつあんの襲撃など、〇カちゃん人形が現れた時点で身代わりの術を発動してたわ。
「公爵どの、ここに風呂はあるかい?」
「あるにはあるが、お前のところみたいにいつでも入れるなんてあり得ねーからな」
なんだい。天下の公爵のうちは二十四時間対応じゃねーのかよ。しゃーねー。キャンピングカーのシャワーでも使うか。
ってか、辺り一面禿げの原になってしまったな。もったいないので木に結界を纏って灰になるのを防いだが、纏わせが甘かったようで枝はなくなっていた。
まあ、地竜に食わせるには問題あるまい。あとで回収せんとな。
キャンピングカーへといき、汚れた服を脱いでシャワー室へと入った。
スッキリサッパリさせて、いつもの村人服に着替える。やっぱ、これが落ち着くわ。
ソファーに座り、コーヒーブレイク。あーコーヒーうめ~。
「あれだけのことをして何事もなく過ごせるとか、お前の日常、どんだけ波乱なんだよ?」
ん? 公爵どのいたの。全然気がつかんかったわ。
「……はぁ~。まあいい。それより落ち着いたら夕食にするぞ。お前のところには劣るが、アルベカの食材を使った料理を用意したからよ」
別にそこまでしなくてもイイのに。オレはパン一つでもありがたく食べれる男だぜ。
まあ、そんなことしたら公爵の名が廃るか。ここはありがたくお呼ばれするとしよう。
「この格好でも構わないかい?」
あんな服着ての食事は遠慮したいぜ。固っ苦しくて食った気しねーよ。
「好きにしろ。身内だけの夕食だしな」
なら遠慮なくこの格好でお呼ばれするよ。
コーヒーを飲み干し、ソファーから立ち上がる。
「ドレミ。メイド型になれ。お前も席につけ。レイコさんもな」
身内だけの夕食と言うなら身内を外す訳にはいかない。ドレミもレイコさんも家族だ。もちろん、ミタさんもだ。
はぁ? プリッつあんは、だって?
んなもん言うまでもねーだろう。共存関係なんだからよ。
キャンピングカーを出ると、プリッつあんがオレの頭の上にパイ〇ダーオン。しっくりした重さを感じながら館だか城へと向かった。
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