第796話 結界発生具、購入
もう珍しくもなんともなくなったカイナーズホームにやって来ました。
「いらっしゃいませ~。今日は空母が半額ですよ~」
どこからともなく現れるとんでも店長。こいつはオレが来るのを待ち構えてんのか?
「買わねーよ!」
「フフ。冗談ですよ、冗談。カイナーズジョークです」
「どいつもこいつも最後にジョークをつけたら許されると思うなよ!」
いやまあ、オレも使ったことあるけど、使うならジョークとわかるように使いやがれ! つーか、本気で買わせようとしてるよな、こいつは!
「今日はなにをお求めですか~?」
「魔道具が欲しいんだがよ」
そう答えると、なにか落胆したような顔になった。なんだよ、いったい?
「いえ、魔道具はそんなにないので売り上げは期待できないな~と思いまして」
思うのは自由だけど、それを露骨に出すなや。客商売してんだからよ。
「なんでもイイから魔道具が売っている場所を教えろ」
「でしたら、コンシェルジュをつけますか? 魔道具に詳しい者を」
そうだな。魔道具に関しては素人だし、詳しいヤツがいてくれた方が都合がイイか。んじゃ、頼むよ。
と、現れたコンシェルジュさんは、フミさんと同じ種族のねーちゃんだった。
「つーか、フミさんに似てね?」
ガテン系のフミさんとは違い、インテリジェンスな雰囲気を纏わせていた。
「はい。フミの従姉でハルと申します。今回、ベー様のコンシェルジュとしてつかせていただきます」
きっちりとお辞儀するハルさん。こりゃ、水と油のような関係だな。
「そうかい。なら頼むわ」
あまりフミさんのことは触れない方がイイようだ。まあ、フミさんのこと、そんなに知らんけどさ。
「はい。ではこちらです」
と、案内された場所は二階の奥。あまり人がこなそうな場所に魔道具コーナーがあった。
……人気ねーのかな……?
「もともと魔道具は一部の者しか使いませんし、ここでは水も火も困りません。団地では電気も通ってますからね」
と、ミタさん。なんかうちより快適そうだな?
「なにか家畜小屋って感じで、わたしは嫌だわ」
見に行ったことある口振りですね、メルヘンさん。ってか、家畜小屋は失礼でしょう。
「ベー。うちにも電気通してよ。わたし、加湿器使いたいの。最近、肌が乾燥するのよね」
うちはファンタジーでやっていくんです。電気なんていりません。つーか、うちは冷暖房必要ねーし、結界で心地よい環境を創ってるわ。乾燥すんのはプリッつあんの不摂生だろうが。
……日に日に俗物になりやがって。ちょっとメルヘン界に行って野生(?)を取り戻してこいや……。
「ベー様。今回はどのような魔道具をお探しですか?」
アホなメルヘン無視して、コンシェルジュさんに要望を伝える。
「街を覆うほどの結界発生具ですね。それなら四種類あります」
言っててなんだが、あるんだ。それも四種類も……。
「魔王城はこれがないと住めませんから」
あ、うん。そうだね。あんな砂嵐や凶悪な敵がいるんだからないと大変だよね……。
「しかし、これだけの技術力があるんならもっと魔族が繁栄してもイイんだがな」
「共存共栄なんて考えもありませんし、教育と言う概念すらありませんから」
とはレイコさん。魔大陸で学ぶことは至難の業なんだな。
「殺伐としたところだ」
それで滅びないんだから魔族はスゲーぜ。それともそれが命のサイクルとなってんのか?
「はい。だからこそ、ここでの生活は壊したくありません」
ミタさんの場合、どこでも暮らせそうだがな。万能だし、適応力もあるしよ。
「ベー様。これが結界発生具です。性能としてはこれが一番優れてます」
と、いくつもの台座を示すコンシェルジュさん。なんか燈籠っぽいな。
「これがかい? どう使うんだ?」
「壁や高い塔に置いて、発動させると結界が発生します。密に設置すればそれだけ強硬になりますが、その分だけ魔力は消費します」
まあ、それはしょうがねーだろう。エコロジーや省エネなんて概念すらもねーんだからよ。
「んじゃ、十個ばかり買わしてもらうわ」
「……それでは少ししか結界を発生できませんが?」
「イイんだよ。あとは竜人さんたちに買わすから」
なんでもかんでもオレがやることはねー。あそこは竜人さんたちが治める場所。オレたちは対価を払って商売させてもらう者。拡大したけりゃ竜人さんたちがガンバレ、だ。
「で、一つ幾らだい?」
「一つ二百万円になります」
結構な値段だな。いや、安いのか? よくわかんねーな。
「わかった。これで頼む」
カードをコンシェルジュさんに渡した。
「他にもご購入されますか?」
「見てから考えるよ」
興味はあるが、別にこれと言ったものは求めてねー。おもしろければ買うくらいの意気込みしかねーしな。
「では、ご自由に見て回ってください。質問等があれば遠慮なくお申しつけください」
あいよと答え、魔道具を見て回った。
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