第755話 プリッつあんの株が急上昇

 と、叫んだところでタケナカちゃんはタケナカちゃん。オレの中では魔王ちゃん。以後も魔王ちゃんと呼ばせていただきます。


「まあ、魔王ちゃんの名前を覚えるのはヤオヨロズ国の住民。ガンバってくれだ」


「いや、まず真っ先にベー様が頑張って覚えるべきでしょう!」


 そんなまっとうな突っ込みなんてノーサンキュー。オレは誰がなんと言おうと魔王ちゃんと呼ぶぜっ!


「完全に覚えるのを放棄した顔ですね」


「それがベー様ですから」


 漫才なら他でやれや、幽霊とメイドが!


「あはは。ヴィどのの周りはおもしろいのが揃っているでごさるな」


「周りがおもしろいのはお前の方だろうが。一緒にすんな」


「いや、自分で言うのもなんでござるが、ここにいる者はヴィどのに集まって来た者たちばかり。ヴィどのが中心でござるよ」


 なんだよそれ。オレが原因みたいな言い方しやがって。つーか、お前が原因でオレが巻き込まれてんだろうがよ。いや、オレが決めて巻き込まれてんだけどさ。


「すみません、ベーさま。マスターは悪気があって言ってる訳ではありませんのでお許しください」


 できたスライムが頭(?)を振るわせた。いや、スライムの表情? つーか言動? まあ、なんでもイイが、まだオレにはスライムの生態は謎すぎんだよ。人型でやれや。


「そうでござる。褒めてるでござるよ。ヴィーどののハー──ふぐっ!」


 と、バンベルがエリナの頭にパイ〇ダーオン──って言うより、スライム装着? なんか水玉に顔を包まれている感じだな。


「……なにしてんだ……?」


 悶えるエリナを見ながらバンベルに問うた。


「な、なんでもございません。お気になさらず」


 いや、気になってしょうがねー状況だよ! と、叫びたいが、考えるな、感じろピューターがスルーしろと警告を出している。なので素直に従っておこう。触るぬ腐海に祟りなし。サラッとスルッとスルーです。あーお茶がうめー!


 で、主従漫才が終了したようで、なにもなかったように元の位置に戻った。


「なるほど。そうでござるか」


 いや、なにがなるほどで、なにがそうなんだよ。なにもなかったことにしたいならちゃんと繋げや! こっちに丸投げされても困るわ!


「……ま、まあ、そう言うことだ……」


 こちらもなにもなかったことにしたいから繋げるけど、これ以上は無理。あとはそちらで繋げよな。


「プリッシュ様の偉大さがよくわかりました。いないと場が混沌としますね」


「それだけはプリッシュ様に勝てません」


 なにやら幽霊とメイドの中でプリッつあんの株が急上昇してます。ってか、プリッつあんがいねーが、どうしたん?


 また見えなくなっちゃった病にかかったのかと、頭の上を探るが、やっぱりいなかった。


「プリッシュ様って本当に健気ですよね」


「そこも勝てないところでした」


 だからなぜにプリッつあんの株が上昇するのよ? あなたたちの目にはどんなプリッつあんが写ってんの? ちょー気になんねーよ! こん畜生が。


「プリどのならリリーたちと遊んでいるでござるよ」


 リリー? って誰だっけ? そんなヤツ、ここにいたか? いや、エリナの手下の名前、完全無欠に忘れたけどさ。


「カバ子でござるよ。今はリリー・シラトリと言う名前でごさるが」


 あ、ああ、カバ子ね。言われてみればそんな名前だっけ。ってか、なんかアニメに出て来そうな名前だな。いや、どんなアニメかは知らんけどさ。


「遊んでいるって、もしかして、ルンタやアリザもいるのか?」


「いるでござるよ。最近はよく三人で遊んでいるでござる」


 種としてあれだけ違うのによく仲良くなれるよな。どんな友情物語が展開されたんだ?


「まあ、仲良くしてんなら構わんか。で、そのニューブレーメンどもはどこにいんだ? 呼べるんなら呼んでもらいたいんだがよ」


「地下の遊園地にいるでござる。ヴィーどのの義兄弟が魔族の子供たちのために創ったのでござるよ。まあ、某浅草にある花のやしき程度のものでござるが」


 あの腐れは遊園地まで造ってたんかい! つーか、ジオフロントってどうなってんのよ? 国造りしてんじゃねーのかよ!


「……こ、今度、時間があるときに見にいくとして、ニューブレーメンは呼べねーか?」


「呼べるでござるよ。拙者のテリトリーでござるので。ちょっと待っててござれ」


 なにか電波を出しているのか、妖怪アンテナのごとくエリナのアホ毛が直立不動していた。


 ……お前の存在がなんなのかわかんなくなって来たよ……。


「ふて腐れていたでござるが、来るようでござる──と言うか、なぜバットを抜くでござるか?」


 エリナの言葉に自分の手を見ると、なぜか殺戮阿吽が握られていた。なんでだよ!?


「ベー様。大丈夫ですからそれを仕舞ってください。なにも危険なことはないんですから」


 そ、そうだよな。なんで殺戮阿吽を抜いてんだよ、オレ? 自分でやっておいて意味わかんねーよ。


 でも、仕舞おうとすると、オレの中のなにかが強く拒否する。ほんと、なんなのよっ!?


「まあ、ヴィどのがそれで安心でいられるなら構わんでござろう。バンベル。ミタどの。頼むでござるよ」


 なにがなにやらわからんが、とりあえず、殺戮阿吽を構えてニューブレーメンを待つことにした。


 クソ! ほんと、意味わかんねーよ!

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