第709話 オレ、ガンバレ
結界を纏わせたワイヤーを海の中へとゆっくり、意識を乗せながら降下させていく。
連結させているとは言え、やはり遠くなるにつれ操り難くなって来てるな……。
百メートル、二百メートル、二百三十メートルくらいで意識がとどかなくなった。
「ダメだ。完全に操れなくなった ……」
この世界の神(?)に介入されたとは言え、これが人としての限界だ。愚痴を言ってもしょうがねーか。
「どうしたの?」
「オレの限界を越えてワイヤーを操れなくなった。ワリーが、これを持っててくれや。ちょっと潜って引っかけてくっからよ」
ワイヤーをカイナに渡し、連結結界を切り離した。
結界を操り沈んで行く中、ふっと、やけに視界がクリアなのに気がついた。
三百メートルって、結構深海じゃねーか。なんで視界がクリアなんだよ! 気づけやオレ!
はっ! まさか魔眼開化っ!?
な~んてあるわけねーか。まあ、いつものファンタジー理論が働いてんだろう。気にすんな、だ。
海中に停止しているワイヤーに結界を連結させて岩さんのもとへと向けて潜った。
「岩さん、聞こえるか?」
いつの間にモニターが消えていたので直接岩さんに呼びかけた──ら、モニターが現れた。音声認識なのか?
「我だ」
岩さんの世界ではコミュニケーションが存在しねーのだろうか? なんか話が噛み合わねーよな。いやまあ、宇宙からの使者(と言う名の迷子?)とこうして会話してて言うセリフじゃねーがよ。
「今からこのワイヤーを岩さんに巻く。そしたら海上に出すからよ」
「ベーに任せる」
「あいよ。なら、やるぞ」
ワイヤーを操り、岩さんに巻きつける。巻きつけはテキトーです。玉掛けの資格なんてねーんでな。
「あとは、岩さんの周りを結界で包めばオッケーだ」
直接だと効きがワリーのでその周り。聖金を取り残さないようにする。つーか、能力限界を越えてんな。しゃーねー。岩さんと聖金を区別するか。
岩さんだけを包んだ後、腕、足、顔の部分からこぼれ落ちる聖金を包み込み、本体にくっつける。
「岩さんは効き難いのに聖金はそれほどじゃねーんだな」
ファンタジー理論も謎が多いが、宇宙理論はそれ以上だな。ここまで来ると突っ込みも湧き起こらねーぜ。
「んじゃ、引き上げんな」
岩さんに言って海上へと向かう。まったく、サルベージってメンドクセーな。オレには海洋ロマンとか無理だわ。
海から上がり、また轟牙装着。で、巨大化。なんかいろいろ湧き起こって来るが、突っ込み不在ではスルーするしかねー。プリッつあん、カムバァ~ック!
「……ベーを見てると自分が普通に思えてくるよね……」
なに言っちゃってくれてんの、このアンポンタン魔王は?
「いや、お前の方が異常だからっ! それはオレのセリフだからっっ!」
そんな突っ込みなんていらねーんだよ! つーか、ドッグファイトしたいからって艦隊出すお前に言われたくねーわ!!
「……わたしから見たらどっちもどっちですが……」
ハイ、非常識でフリーダムな幽霊からの突っ込みが入りました~。クソ! だからそんな突っ込みは望んじゃいねーんだよ! まっとうな突っ込み役プリーズだよ!
「畜生が! なんでオレの周りには普通なヤツがいねーんだよ!」
「まあ、中心点にいるベー様が飛び抜けてますし」
「オレのせいかよっ!」
突っ込まずにはいられねー発言だよ、それ!
「ベーのせいでしょう」
「ベー様のせいでしょう」
って、オレのせいでした~! じゃねーよ! それじゃまるでオレが呼び寄せているようじゃねーか! 異議ありだわ、こん畜生どもがっ!
憤慨してはみるが、反論する言葉が見つからず、悔しまぎれにカイナからワイヤーを奪い取り、岩さんを引き上げ──らねー! クソ重いわ!
轟牙の力なら岩さんくらいの重さでも難なく持ち上げられると読んでいたんだが、まったく見当外れだったわ。つーか、岩さん、どんだけ重いんだよ。
「カイナ、手伝え!」
持っているワイヤーをカイナに渡し、空中に浮いていたワイヤーをつかみ、最初のワイヤーに絡ませる。
「引くぞ!」
「アイサー!」
二人の力で引くと、少しだけ浮いた。が、それでも重い! 結界を纏わせてなきゃ切れてる重さだぞ、これ!
「ダメだ。モコモコ獣を増やす。カイナ、人選頼む」
「了解。とりあえず三人でいい?」
「任せる。こちらもとりあえず三体ほど変形させておく。姿はカイナの、ブラックサウザンガーな感じでイイよな?」
いちいち個人の好みなんて聞いてらんねーからよ。
「うん。だけど個体がわかる印はつけてね。あ、一番機、二番機でお願い。肩に番号つけてよ」
注文多いな。つーか、そんなことできる能力なんてオレにねーわ。ペンキで描いて結界でコーティングするからそれで我慢しろな。
また轟牙を小さくし、脱いでから空母へと上がる。
「まったく、引き上げんのにこんな苦労するとは思わんかったぜ」
それでもなんとかするのが関わった者の責任。オレ、ガンバレ、だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます