第710話 サルベージ成功

「思うんだけど、別に大きくさせたまま乗り込めばいいんじゃないの?」


 轟牙を小さくし、着たままモコモコ獣を改造。カイナが選んだヤツらに着させようとしたら、なにかずっと考えている様子だったカイナがそんなことを言った。


「はぁ? なにがだ?」


 突然言われたので、なにを言われたか理解できなかった。


「いや、ブラックサウザンガーを着て大きくするより、大きくしたまま乗る方が効率的なんじゃない?」


 非効率なことしかしてねー野郎からの効率論。まったくもって説得力はねーが、なるぼど、一理はあるな。


「でも、デカくしたままって邪魔じゃね?」


 三十メートル級の巨体が四体、置く場所に困るだろうがよ。


「あ、それもそうだね。あーなら、十五メートルサイズにしてよ。それなら空母を改造すれば積めるしさ」


 まあ、三十メートルにすんのも十五メートルにすんのも労力(?)に変わりはねーし、お前の趣味嗜好に口出す気もねー。好きにしろだが、世界を破壊するような遊びは辞めてくれよな。


「これが終わったらやってやるよ」


 今はカイナの案を実行してみるか。


「プリッつあん。この中にプリッつあんはいませんか! いたら至急オレのところに来てください! 繰り返します。この中にプリッつあんがいたらカモーン!」


 って叫んだら、空母に搭載してあるファランクスがこちらを向き、容赦のない攻撃をしてきた。


「アダ! イダダダダァーーッ!」


 な、なんで痛いんだよ!? つーか、防御力ねーな、轟牙! あ、鎧すんの忘れてたわっ!


 結界を纏い、銃弾の雨(豪雨だよ)を防いだ。なんなんだよ、いったい!?


「……自業自得だよ……」


「なにが自業自得だよ。お前んとこの空母ならお前のせいだろう!」


 攻撃したのお前の艦で、攻撃されたのはオレだぞ!


「そんなことより、ブラック隊を大きくしてよ」


 オレ、攻撃されたんだけど? とか抗議しても軽く流されそうなので、気づく前にオレの方から軽く流してやった。くすん。


 今は力が欲しいので三十メートル級にする。


「皆、搭乗開始!」


 カイナに選ばれた三名は、なんの躊躇いもなく、カイナが創った階段を昇り、ブラックサウザンガー量産体に飛び込んだ。


 ……勇気のある連中だこと……。


 まあ、カイナに付き合ってんだなら当然か。度胸がなけりゃあこのバカ野郎と一緒にはいられねーよ。


 カイナの案は正しいようで、デカくしてから着込んでもちゃんと動かせるようだ。


 ただ、さすがに四体の重さに空母が耐えられねーようで、甲板がへこみ、船体がかなり沈んでいた。


「沈む前に海に出ろ。沈まないようにしてあるからよ」


「了解。皆、海に出るよ」


「「「はっ!」」」


 仕込みがよろしいようで、またも躊躇いもなく海へと飛び下りた。空母は今にも沈みそうなくらい揺れるけどな……。


 巻き込まれてはいかんとオレも飛び下り、巨大化する。


「カイナ! ワイヤーを人数分出してくれ。岩さんに巻きつけるからよ」


「了解。はい、ワイヤー」


 空中に現れたワイヤー三つの先端をつかみ、轟牙を結界で包み込んでまた岩さんのもとへと向かった。


 最初のワイヤーを岩さんの首に、残りを両腕両足に巻きつけた。よし、これで行けるぜ!


 まあ、雑なのは理解してるが、こんな深海で生きてる(?)ような宇宙からの使者(迷子?)だ、このくらいじゃ壊れんだろうよ。


 海上へと浮上し、カイナたちに合図し、引っ張り上げてもらう。


 二体では無理だったが、四体では余裕なようで、苦もなくワイヤーを巻き上げていた。


 巻き上げること二十数分。岩さんの影が見えてきた。


「ベー! このまま上げていいの?」


「ああ、そのまま上げてくれ! つーか、お前の目にはどう映ってんだ?」


「ん~、人の形をした、彫像? なんでだろう、はっきり認識できないよ」


 まあ、あると認識してんならそれで充分さ。


 海面から岩さんの半分が出た。


「ヘキサゴン結界!」


 を岩さんの下に 敷き、湾曲にして仮の船とする。


 オレの結界は岩さんに干渉できるようで、ちゃんと浮いている。まったく、この世は謎に覆われてるぜ……。


「まあ、なんにせよ。岩さんのサルベージ、成功だ」


 やれやれ。苦労させられたぜ……。

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