第707話 ブラックサウザンガー
なんてやってみたものの、これ、大丈夫なん?
全長三十メートル弱。プリッつあんの能力に縛りはねーから三十メートル以上でもデカくできるが、オレの精神を守るにはそれが限界。それ以上は常識が身に持たねーよ。
「よし、プリッつあん。いけ!」
頭の上にいる実験体──じゃなくて最強メルヘンをつかもうとしたら空振り。あれ?
「いくかボケーッ!!」
プリッつあんのスーパースクリューキックがオレの頬に決まった。
「ヌホー!」
と、ノリで吹き飛ばされてみる。
「……なにをやっておるのだ、お主らは……」
「プリッシュは常識なヤツと思ってたが、非常識と一緒にいるには非常識でないといけないのだな……」
「わ、わたしは、常識的な羽妖精よっ! べーと一緒にしないで!」
「……ふっ。やるな、プリッつあん。今のは効いたぜ……」
ヨロヨロと立ち上がり、イイもんをくれたメルヘンにサムズアップを見せた。
「べーの喜劇にわたしを巻き込まないでよ!」
さすが頭の上に住んでいるだけあってオレの意図を見抜くメルヘンさん。だが、逃がしはせぬ! お前も道連れじゃー!
「わたしは非常識なんかじゃないわよ! うわーんっ!」
突然泣き出し、どこかへと飛んでいってしまった。まっ、腹が空いたら帰ってくんだろう。気にせず次にいきますか。
「……お主、いつかプリッシュに刺されるぞ……」
いや、いつもパンチやキックを受けてますが。
なんてじゃれ合いはこのくらいにして、さっさっと轟牙に入りますか。
「──随分とおもしろいことしてるね」
と、突然カイナが現れた。唐突だな、おい。
「……お前はなんかおもしろセンサーでもついてんのかよ……?」
なんでもありな男だが……いや、止めておこう。こいつはこう言うバカ野郎だしな。追及するだけヤボってもんだ。
「うん。ここについてるよ」
髪の毛の一部を立たせるアホ野郎。妖怪センサーかよっ!
「お前、平成生まれじゃなかったのかよ?」
「平成でもゲゲゲはやってたよ」
「そうなの? どんだけ愛されてんだよ、ゲゲゲって?」
まあ、おもしろいとは思うが、世代を超えて観られてるとかゲゲゲってスゲーんだな。あ、オレ、目玉おやじのモノマネできるぜ。おい、キタロー。事件じゃ! って、まあ、やらないけどね。恥ずかしいから……。
って、そんなことはどうでもイイんだよ。今は轟牙だよ。いや、岩さんか。目的を忘れるところだったわ。
「つーかお前、あーゆーのに興味あんの? どちらかと言えば変身系じゃね?」
まあ、変身と言ってイイかわからんけどよ。
「おれ、戦隊ものも好きだよ」
「戦隊系に入んのか、あれ?」
それは斬新な見解だな。あれ? でも戦隊ものってロボットじゃなかったっけ? 生き物に乗り込んだのあったっけ?
いやまあ、戦隊ものなんて小学生低学年までしか観てなかったからよー知らんけどさ。
「正確に言えば敵の方だけどね。怪人がやられたら最後に巨大化してたじゃん」
あーそう言やなってたな。なんでやねん! とか子ども心に突っ込んでたわ。
「それに、あんな大きいものを操れるなんておもしろそうじゃん。あれ、おれにも乗れるの?」
乗ること決定の口振りだな。まあ、イイけどよ。
「あれはオレ専用だよ。一度纏うと搭乗者登録されるようでな。たぶん、モコモコ獣はたくさんあると思うから、サプルに聞けばわかんじゃねーか?」
あの様子では何着も脱いでるはずだし、サプルの性格を考えたら捨ててはいないはずだ。オレと同じで貯め癖があるからな。
「わかった──」
と、消えるカイナ。行動力のあるバカ野郎だ。
このまま無視すると後がうるさそうなので、ちょっとブレイクタイム。あ、ミタさん。なんか甘いものちょうだい。
「では、あんみつなどいかがですか? 最近、メイドの間で流行ってるんですよ」
あんみつって、うちの中でとんな食文化が開花してんのよ? ド田舎が流行の発信源とか意味わかんねーよ!
なんて心の中で突っ込みながらあんみつをいただいた。
「あんみつ美味いな」
「ああ。これも土産に頼む」
「あ、わたしもお土産にいただきたいです」
なにか当然のように同席してあんみつを頬張る姫さんズ。ほんと、人魚の味覚は摩訶不思議だな。
あんみつをお代わりして、抹茶オレをいただいていると、再度カイナ降臨。なんかモコモコに覆われていた。なんだ、いったい?
「全部もらってきた」
なにやら晴れ晴れと笑うカイナさん。お前の趣味嗜好がわからなくなって来たよ……。
「そんなに持って来てどーすんだよ?」
「せっかくだからカイナーズに配備しようと思ってさ」
配備ってなんだよ? お前はなにを目指してんだよ? つーか、今更だが、カイナーズってなんだよ? カイナたちって、魔族ってみんなお前と趣味趣向が同じなのか?
「でも、羊の形してるんだけど、なんで?」
「オレが、いや、プリッつあんの能力で変えたんだよ。四足歩行だと動き辛かったからよ」
「あーなるほど。でも、ビーストモードも燃えるよね!」
「知らんがな」
オレはお前ほどマニアックじゃねーんだよ。そこまで追求してねーわ。
「ノリが悪いな~。まあ、いいや。早くあれと同じにしてよ」
メンドクセーが、カイナにはいろいろ世話になっている。せっかくだから借りを返しておくか。まあ、そう言うとヤボだから言わんけどよ。
「わかったよ。でも、やることあるから他は後でだぞ」
「うん。それでいいよ。まずはおれが熟知しないと皆に教えられないからね」
本当にお前はなにを目指してんのよ? 世界征服目指してんなら先に言ってくれよ。真っ先に降伏するからよ。
……こいつに付き合うとか拷問だわ。絶対、均衡にさせて、長く遊ぼうとするからな、こいつの性格からしてよ……。
将来の面倒事は考えないようにして四足歩行型から二足歩行型へとトランスフォーム。カイナの趣味嗜好でちょこちょこ変更。カイナ用が完成した。
「スゲー! カッケー!!」
子どものようにはしゃぐカイナ。これに付き合うとか、魔族も大変だな……。
「決めた! お前の名前はブラックサウザンガー。おれ専用だ!」
ブラック? モコモコ獣、白じゃん。どっからブラックが出てくんだよ?
「ブラックサウザンガー、発進だ!」
と、轟牙──じゃなくて、ブラックサウザンガー? の背中へと飛び込んだ。
「……躊躇いのねー男だよ、お前は……」
羨ましい気もしないではないが、アレと一緒にされるのも心外だ。まあ、オレはオレの趣味趣向で動くまで。
轟牙装着! とかオレも轟牙の背中へと飛び込んだ。
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