第677話 お話
王さまや守護神ズの存在はサクっと頭から外し、次の問題に切り替えた。
廊下(?)を適当に進んでいると、また姫戦士に出会った。
……この人(魚)、城内を散歩してんのか……?
「おう。王さまと会えるようにしてくれてありがとな。続け様にワリーんだが、ハルヤール将軍どこにいるか知ってるかい? 知ってたら案内して欲しいんだがよ」
オレの出会い運に頼るのもイイんだが、運頼りだけあって会えないときもある。確実に会いたいなら案内してもらうのが確実だ。
「……王との話はよいのか……?」
「それは済ませて来たし、任せて来たから大丈夫だよ」
なにか納得できない顔をする姫戦士。なんだいったい?
「ベーの常識は世間の非常識。気にしたら負けよ」
最近、毒舌なメルヘンになっていると思うのはボクの気のせいでしょうか?
「そうだな。プリッシュの言う通りだ」
なにがだよ? つーか、なんかプリッつあんの言葉が重要視されてね? いつの間に信頼関係が結ばれてんだよ。
「ベーがわたしを忘れてるときによ」
心の声に即座に突っ込むプリッつあん。あなた、心を読めるメルヘンじゃないよね……?
読めるとしたら今後の付き合いを考えさせてもらうんだけど。
「たまに、ベー様の表情で会話をしますよね、プリッシュ様は」
「長い付き合いだしね」
いや、あなたとの付き合い、二ヶ月くらいですよね。まあ、気分的には二年くらいになるけどさ……。
「あたしもベー様の表情と会話できるくらいにはがんばらないとなりませんね」
「たまに表情に出さないときがあるから、気をつけた方がいいわよ。まあ、一緒にいると雰囲気でわかるけどね」
なにそのオレの使用法的な会話は? 見んなよ。理解すんなよ。生きずれーわ!
クソ! もっと表情操作と感情操作を鍛えねーとオレの人生先回りされるわ!
「フフ。プリッシュはいいお目付役だな」
プリッつあんの株が上昇中。だが、オレの中では急下落だよ。この不良債権が。
「どうでもイイが、ハルヤール将軍んとこに案内してくれるか?」
ガールズトークはオレのいないところでやってくれ。オレの心は繊細なんでよ。
「ああ、すまぬ。こっちだ」
この姫戦士、城内のことなんでも知ってんのか? と思うほど足……ヒレに迷いがねー。迷うことなくハルヤール将軍のもとに案内してくれた。
……文官っぽいのがたくさんいるところを見ると、役所かなんかか……?
「ここは?」
「内務室だ」
内務室? に、ハルヤール将軍が? いる場所違がくね?
「それはお主のせいだ。お主関連で決裁できるのはハルヤールしかおらぬからな」
ハイ、そうでしたね。管轄外なことさせてごめんなさい。
「ハルヤール。ベーを連れて来たぞ」
文官に囲まれたハルヤール将軍。お忙しいようなのでまた後で来ますね。んじゃ!
と、立ち去ろうとしたら頭を鷲づかみされました。
「この野郎、やっと来やがったな」
さすが将軍様。お力がお強いことで。オレじゃなかったら辺りが真っ赤になってますぜ……。
「お仕事ご苦労さまです!」
敬意を込めて敬礼で答えた。
「ああ、本当に苦労だよ。もう三日も寝てねーよ!」
あらヤダ。将軍様。お口が悪くなってますことよ。
なんて思ったらハルヤール将軍の握力が急上昇。さすがにちょっと痛いよ。
「……お前のその無駄に読みやすい表情が憎らしくてたまらんよ……」
今生のオレ、素直に生きるって決めましたからっ。キラン。
オレのキメ顔になぜかハルヤール将軍はご立腹。さらに握力が増しました。
「冗談は暇なときにやりやがれ」
「ハイ、すみません。調子に乗りました」
素直に謝りました。素直に生きてるから。
「ったく。お前は、いったいなにがしたいのだ?」
「異種族連合国家設立かな?」
まあ、ザックリとしたイメージだがよ。
「……すまぬ。もう一度言ってくれ……」
なんだい。聞き逃したのか? しゃーねーな。
「異種族連合国家の設立だよ」
「…………」
えーと、聞こえた?
なにやら目を点にするハルヤール将軍。上手く翻訳されなかったか?
「……ベーよ。異種族連合国家とは、どう言うものなのだ?」
ハルヤール将軍には届かなかったが、姫戦士には届いたようだ。なに気にこのお姫さま、豪胆。
「小さな国が集まって外敵に協力して対抗したり、商売をしたり、国民が行き来したりしましょうって、意味か?」
あ、ザックリし過ぎて答えらんねーわ。でもまあ、あながち間違ってる訳じゃねーし、そんな感じでイイだろう。うん。
「うん。別なところでお話しようか」
と、頭を鷲づかみにされたまま、どこかに連行されるオレ。あ、カツ丼食いたくなった。
「ミタさん。サプルに言ってカツ丼作ってくれと伝えてくれや」
「プリッシュ様。どう言う意味でしょうか?」
「いい、ミタレッティー。ベーの言動になんでも意味を求めても疲れるだけよ。話の流れがちぐはぐのときは軽く流しなさい。それはベーにしかわからない流れだから」
「なるほど。勉強になります」
あ、いや、なんの勉強かは知らんけど、カツ丼のことは伝えてね~。
そしてその夜、カツ丼が差し入れされましたとさ。チャンチャン。
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