第518話 類は友を呼ぶ

 マイシスターを求めて厨房にいくと、なぜかメイド型ドレミがそこにいた。え?


 思わず横を見たら、黒猫のドレミがそこにいた。え?


 説明ぷりーずだよ、ドレミさーん!


「分離体です。マスター」


「分離体? 分裂とはなんか違うのか?」


 前、バンベルがそんなこと言ってたよーな気がするが。


「分裂は新個体を生むためのもで、分離はわたしの一部を切り離したものです。主はわたしですが、どのドレミもわたしと繋がっていますので、黒猫のわたしが消滅しても違うドレミが新たな主となります」


 うん。つまり超力万能生命体ってことだねっ☆


「……ん? なあ、ドレミ。つかぬことを聞くが、お前って誰かに化けられるってこと、できるか?」


 それが可能ならいろいろやることの幅が出てくるんだが。


「はい。一度見た個体や見本があれば擬態することは可能です」


 ……ほんと、どんだけ優秀な生命体なんだよ、スライムって……。


 ま、まあ、なんにしろだ。できるなら好都合。よかったと納得しとけ、だ。


 事実を飲み込み、サプルを見る。


 サプルのお料理教室中らしく、ドワーフのおっちゃんの嫁さんや見知らぬモコモコレディたち、タケルんとこの二人、ダークエルフのメイドが三人、あと魔族のヤツらが四人いた。


「サプル。勇者ちゃんと女騎士さんを連れてきたんだが、部屋はどうなってる?」


「三階の三〇五号室と三〇六号室を用意したよ。あと、サリネさんに言っていき来できるようにドアをつけてもらったから」


 超力万能生命体より万能なマイシスター。お前は人でいてくれよ。


「あいよ。ありがとな」


 礼を言い、厨房を出ようとしてストップ。回る右をする。


「そーだ。トータたち、どこにいるか知ってるか?」


 朝食時にはいたから冒険には出てねーはずだ。


 まあ、それぞれの生き方を尊重してるので、用がない限りはそれぞれの判断に任せているが、冒険にいくときはいくと申告するマイブラザー。あいつは結構律儀な性格をしているのです。


「トータなら訓練室にいるよ」


 衝撃の真実! 我が家の地下には訓練室があるのです!


 だから? なんて冷たい突っ込みはノーサンキュー。ただ、言ってみただけです。


「そっか。ありがとな」


 今度こそ厨房を出て地下の訓練室へと向かった。


 まあ、地下の訓練室とは言っても、そんな大層なものではないし、ちょっとした体育館的なところだ。


 本来は保存庫の一つとして使ってたのだが、フェリエが冒険者になると言うので、訓練できるように改造してやったのだ。


 ちなみにだが、この訓練室は、フェリエの家からも繋がっているので、フェリエが村で見かけない理由の一つでもある。


「お、やってるやってる」


 結界で強化した訓練室の中では、トータ&ガブVSチャコ&誰だっけ?が戦っていた。


 反則的に強いトータと戦って勝負になるんかい? とか思いながらしばらく観戦してたが、どうしてチャコ&誰だっけ?も反則的に強いじゃねーの。


 つーか、誰だっけさん、あなたの持ってるのサブマシンガンですか? なんかスゲー鮮やかに、そして流れるように扱ってますね。


「……この世界のメルヘンって意外とバイオレンスだよな……」


 ま、まあ、そーゆーもんだと納得しておこう。もうメルヘンに夢は見ねーよ。


「ガブは……まあ、無理ねーか」


 明らかに場違いだが、それでも果敢に挑んでる。それだけで立派だよ。


 邪魔するのもワリーと終わるのを待っていたら、チャコがオレに気づいて訓練を止めた。


「どうしたの?」


 なんか、宇宙の戦士さん風なチャコさん。こいつはいったいどんな願いをしたんだ?


「おう、ワリーな、励んでるとこ」


「構わないわ。そろそろ休憩にしようと思ってたし」


「そうかい。ならちょうどよかった。トータを借りてーんだがイイかい?」


「なに?」


 全身汗だらけのマイブラザー。結構真剣にやってんだな。


 オレが教えているときは汗を流すどころか、半分お遊び。真剣になったこともねー。


 ……それでも成長が早いって反則だよな……。


「ちょっとお前に頼みがあんだが、まずは汗を流してこい。終わったら食堂に来てくれ」


「? わかった。ガブ、いこう」


「おう!」


 仲良く駆けていく二人。イイ相棒を持てて羨ましいよ。


 ……なんでオレには変なのしか近寄って来ねーのかね……。


「類は友を呼ぶ、だね」


 チャコが二人を微笑ましく見ながら呟いた。


 グサっと、特大のブーメランがオレの心には突き刺さった。


 ――ぐはっ!

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