第511話 よりよい仕事をいたしましょう
扉が開くと、なにやらホテルのホールのような光景が広がっていた。
「な、なんだいこりゃ?」
来るとこ間違えたかと、辺りを見回してたら髪も肌も白いねーちゃんが、奥から出て来た。え、誰?
「いらっしゃいませ。ベー様でしょうか?」
「あ、ああ。そーだが、ここ、博士ドクターとカブキねーちゃんの研究所だよな?」
あ、なんて研究所だか忘れた。
いやまあ、そんなことはどうでもイイ。なんなのこれ?
「はい。アマラヴィ研究所です」
「なんつーか、ちょっと来ねーうちに変わったもんだな。って、ねーちゃん誰?」
まあ、姿から言って魔族なんだろうが、全身白の魔族なんて聞いたことねーぞ。
「わたしは、ここで受付をしています、ナリエラと申します。お見知り置きを」
受付? いや、この感じからして受付な場所だが、研究所に受付とか必要なん?
「ベー様。先日、ここは飛空船の製造販売をする商会として立ち上がり、世界貿易ギルドの一員となったらしいです」
と、アダガさん。
「……なに、その奇想天外な流れ? まったく意味わからんわ。つーか、よく
「飛空船の置き場に困ったので、アバールさんに相談したら商会にしろと言われたんですよ」
と、忽然と
「あんちゃんが?」
もはや人外に不可能はなし。できて当然。もう驚きもしねーよ。
「ええ。ベーが所持していた飛空船を研究して、飛空船の仕組みは理解したので試作を、と思ったら場所がないことに気づきましてね、外に出したものの小人族から邪魔と言われまして、また中に仕舞うことに。どうしようかとカイナーズホームの飲食コーナーで考えてたらアバールさんと偶然会いまして、世間話の一つとして話したら、そう言うことになりまして、取り合えず、形だけ整えてみました。魔族の方々の受け入れもお願いされましたので」
へ~。あんちゃん、ギルド長としてがんばってんだな。
「まあ、さすがに飛空船をどう売るかなどわからないので、ベーに相談しようと待ってたんですよ」
好きにしたらとはさすがに言えねーか。飛空船なんて超技術の塊。国家予算級に金がかかる乗り物だ。国ですら買うのを躊躇うようなもの。売って誰が買うんだって話しだ。
「んじゃ、一隻――いや、オレが四隻買うよ」
「いえ、元々ベーのものですから、最初から所持していたものはベーの判断に任せます。この場所や資金などベーが出しているんですからね。販売は、わたしたちが一から造ったものから始めます」
変なところで律儀な
「まあ、
オレは人の主義主張を大事にする派。譲れることは譲るよ。
「ありがとうございます」
「別に礼を言われることでもねーが、ありがたくもらっておくよ。で、出れる飛空船って何隻あんだい?」
「修理と整備は終わってますので全部出れますよ」
仕事の早い
「じゃあ、プロキオンと輸送船に適した船を二隻、第二港に下ろしておいてくれや。あと、オレの名を使って小人族から飛空船の乗組員と技師を集めてくれ。魔族に飛空船の扱いを覚えてもらうからよ。なんで、アダガさん。飛空船で働きたいって者を選んでくれや」
「わかりました。が、あまり人数は期待しないでください。さすがに飛空船で働きたいと言う者は少ないと思うので」
「なに、足りなきゃ小人族から引っ張ってくるよ。その辺はオレがなんとかするよ。これは小人族にも関係あることだからな」
多分、小人族の方も仕事不足に陥っているはず。それは食糧不足が語っている。
「博士》ドクター》。小人族もいんだろう?」
「はい。ベーに借りた恩を返す名目で、百人以上来ています」
そんなに来てんのかい。まあ、二、三万も飛び出して来たことを考えたら微々たる数か。
「その辺の細かいことは
「……随分と破格な報酬ですね……」
確かに、破格だろう。
「なに、オレが楽をできるなら安いもんさ」
その苦労を考えただけで胃に穴が開くわ。
「なんで、よりよい仕事をしてくれたら手当を弾むぜ」
よりよい仕事は、オレの人生をよりよいものとしてくれる。そのためなら飛空船の一隻や二隻、安いもんだぜ。
「まったく、あなたは……」
呆れ果てるアダガさんだが、すぐに商人の顔に戻った。
「わかりました。よりよい仕事をいたしましょう」
おう。期待してるよ。
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