第500話 料理人ゲットだぜ!
夕暮れ近く、新孤児院のお披露目が終了した。
食いも食って……何人分だ?
完全無欠にドレミ隊任せだったので、何人分食ったかなんて全然知らねー。
まあ、これしきの人数で空になるような集め方はしてねー。三割使ったか使わないかぐらいだろうよ。
「マスター。残ったものはどうしましょうか?」
ドレミ隊のドレミが……ってややっこしいーな。なんとかなんねーの? 区別つかんわ!
「では、髪の色を変えます」
と、オレの表情を読んだ猫型ドレミがそう言うと、目の前にいたメイド型ドレミの髪が赤に変わった。
他のドレミにも目を向けると、青や緑、ピンクに黄色、ゴールドに黒と、ドレミ隊がドレミ戦隊になった。
「……いやまあ、なんでもイイけどよ……」
もう超力戦隊に突っ込むのもメンドクセーわ。
「スラムのガキどもにでも配ってやれ」
こちらを壁越しに見る獣人のガキをアゴで差した。
この国に獣人を差別するクソったれな慣習はねーが、弱肉強食な世界の更に底辺な世界ではあるそーだ。
他人を、自分と違う者を攻撃しねーと自分を保てねーんだろう。なんともクソったれなことだが、力があり運のイイオレにどうこう言う資格はねー。
「やらぬ偽善よりやる偽善。幸せのお裾分けだ」
「はい。畏まりました」
あとは院長さんに任せた。がんばって人材を育成してください、だ。
スラムのガキどもの対応はドレミ戦隊に任せ、かなり最初の方で見失ったイタリア~ンな店主夫婦を捜す。
全てを全力全開で丸投げしていたオレだが、別に遊んでいたわけじゃねー。
この群衆に紛れて悪さをするアホどもを陰日向に排除し、そこら辺で排泄しようとする不埒者をトイレに連れていくとか、結構ハードなことをしていたのだ。
「イタリア~ンイタリア~ン、イタリア~ンな店主はどこですか~」
なんて歌いながら捜していると、ドレミグリーンが担当していた屋台の陰で、調味料が入った瓶を見詰めているのを発見した。
「なにしてんだい?」
調味料の瓶を見詰めているだけのイタリア~ンな店主に尋ねた。状況がさっぱりわかりませんがな。
「……こんなに種類があるんだな……」
「調味料かい? まあ、料理のことはよーわからんが、調味料次第でいろんな味が出せるからな、調味料の発見と模索は最重要らしいぜ」
ちなみにオレは発見担当。模索はサプル担当です。
「……これを作ったのは誰なんだ?」
「オレの妹だよ」
「妹? いや、妹って、お前何歳だよ!?」
「十一歳だよ。妹は九だな」
目が飛び出さんばかりに驚愕するイタリア~ンな店主。まあ、無理はないわな。
「言っとくが、オレの妹は別格だ。違う世界にいる。納得しろとは言わねーし、挑むのも勝手だが、絶対に自分を卑下はするな。悲しいが、この世にはどうしても勝てねー相手がいる。天才がいる。だから凡人は凡人なりに努力しろ。月並みなことしか言わねーが、努力は裏切らねー。あんたはあんたの道を歩みなよ」
神(?)から三つの能力をもらいながら、妹や弟の才能に敗けている凡人な兄貴。そのちっぽけな威厳を守るための努力は、オレの自信であり誇りでもある。
「凡人に妬み羨んでる暇はねーぞ。そんな暇があんなら、人生を楽しめ。料理を楽しめ。時間は有限だぞ」
まあ、それができたら苦労はねーって話だが、それは本人の努力でがんばってもらうしかねー。自分の人生は自分でしか歩めねーんだからよ。
「……まったく、生意気なガキだな……」
「それがオレさ。隠す気も偽る気もねーよ」
そのお陰で苦労したり厄介事に巻き込まれたりするが、今生はオレを貫くと決めた。なら、貫ける力を、知恵を身につけろだ。
「ふふ。あの悪たれどもが変わるはずだ。なんだか生きるのが楽しくなってくるぜ」
「それは結構。なら、遠慮なく楽しめだ」
この手を取るもよし。取らぬもよし。決めるのはあんただ。そう思いを込めて、イタリア~ンな店主に手を差し出した。
もう答えは出ていたんだろう。ニヤリと笑うと、力強くオレの手を取った。
「ああ。楽しんでやるさ」
オレもニヤリと笑い、その手を力強く(加減はしてね)握り返した。
オレの料理人ゲットだぜ!
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