第454話 家
昨日、夕食で言ったように朝から家の片付けを始めた。
つっても片付けは一時間もしないで終わり、今は家の掃除をしていた。
結界でコーティングしてるから結界を纏めてポイすれは終了。では、今まで住んでいた家に申し訳ねー。ここは、感謝を表すために通常の掃除をしようじゃねーのさ。
「ふ~う。腰いて~!」
家の掃除はサプルの領域。下手にオレらがやると怒られる。なんで、雑巾がけなんてしたの生まれて初めてたぜ。
「サプル~。終わったぞ~」
「はーい。今度は屋根をお願いねー!」
意外と人使いが激しいマイシスター。イエスマム!
心の中で敬礼して屋根へと上がり、モップでゴシゴシ洗う。
「ベー。なにしてるの?」
なにやら久しぶりに見る頭の上に住むメルヘンさん。未だに共存って意味を見いだせねーが、プリッつあんがいねーと伸縮能力が上手く使えねーんだよ。
最初の頃はなんら問題なく使えていたんだが、二日前に使ったらちょっとしか縮まなかった。
疑問に思ったが、元々プリッつあんの能力。使えてラッキーぐらいにしか思ってなかった。なんで、使えねーのならしゃーねーとさっさと諦め、次の日、試しに使ってみたらさらに使えなくなっていたのだ。
「おう、お帰り。家の片付け、いや掃除してんだよ。オカンとザンバリーのおっちゃんの結婚を機に新しい家にしようと思ってな」
つーか、その話したよね。なに忘れてんの、プリッつあんよ。とは言わない。逆に突っ込まれそうだからね。
……なんか最近、プリッつあんも雑になって来たよな……。
ペットは飼い主に似るとか言うが、まさにそんな感じだよな。ハイ、ペットはプリッつあんの方だからね。間違えないように。
「ふ~ん。あ、わたしの部屋はあるんでしょうね?」
オレの頭の上の住人でカイナからもドールキャッスルをもらってまだ部屋が欲しいとか、なんなのこのメルヘン? そんなに部屋を持ってどうすんだよ?
「なぜかあることにサリネに感謝しろよ」
本当になぜだかわからねーが、オレの部屋にプリッつあんの部屋があったりする。これもなぜだか知らんが、オレの部屋より豪華な造りとなっている。
……まあ、部屋なんて寝ればなんでもイイだが、なんか納得できねーのはオレがまだ青いからか……?
「わかった。で、いつできるの?」
「結婚式が終わってからだよ。って、あっちはイイのか?」
オシャレ同盟がどうとかこうとか言ってたが、もうあっちの人……じゃなくて、メルヘンになったんじゃねーの?
「わたしの役目は終わったし、いつまでもベーを一人にできないでしょう」
なにやらムカっとくるが、オレはクールなできる男。メルヘンの戯れ言など右から左さ。
「おー。プリッつあん優しさにオレ感激~!」
プリッつあんの体をわしっとつかみ、愛情全開で頬をスリスリしてらやった。
オレの深くて痛い愛情に昇天するプリティープリッつあん。可愛いヤツよ。
幸せな顔で昇天したプリッつあんを頭の上に乗せ、屋根掃除の続きをする。あー忙しい忙しい~!
なんてこともなく屋根の掃除、終~了~!
「あーコーヒーウメ~!」
働いたあとのコーヒーの旨いこと。世は満足である。
「こんにちは~。進んでる?」
これまた久しぶりにカイナがやって来た。
「ああ。もう終わったようなもんだな」
今はサプルが台所の収納棚を調べてるとこだ。なんせ収納棚に並べられた収納板はコンテナくらいの収納力がある。サプルと言えど全てを確認するのは時間がかかるんだよ。
土魔法で椅子を創り、席を勧める。
「お、ありがと。これお土産」
テーブルに銘菓、アヒルの卵饅頭と書かれた箱が置かれた。
「……どこのパチモンだよ……」
カモメさんとこの菓子屋さんが激オコするぞ。
「今度うちのホテルの土産屋で出すんだ。まあ、それの試食だね」
つくづく誰が買うんだよってもんを売るのが好きだよな、こいつはよ……。
まあ、たまに饅頭を食うのもイイだろうとアヒルの卵饅頭を食した。
「どう?」
「イイんじゃねーの。甘過ぎもせず薄過ぎもしない。こっちのヤツの舌に合うと思うぜ」
前世の菓子はこっちのヤツにしたら甘過ぎだと思うし、合うのは相当な甘党か舌が肥えたヤツぐらいだろうよ。
「よく考えて作ってんだな」
「まーね。魔族の大陸から観光客が来るからね」
「なにを観光すんだよ、こんなド田舎で」
「いや、種族に関係なくこれる場所でありながら小人族や人魚族が造る浮遊都市やら海底都市。ここほど観光のしがいがあるところはないよ」
まあ、確かにあの光景は金貨百枚以上の価値はあるはな。
「そうかい。まあ、好きにしな」
そう言う商売事は世界貿易ギルドの領分。オレの範疇じゃねーよ。
「あんちゃん、終わったよ!」
と、家の中からサプルが出て来た。
「おう。んじゃやるか」
勢いよく椅子から立ち上がった。
「なにするの?」
「家を片付けんのさ」
結界で家を包み込み、大地から切り離して収縮能力で小さくした。
元々この家は三代目。まだ三年しか住んでねー新築だ。思い出はそれほど詰まってねーが、愛着はある。捨てるのはもったいねーので収納鞄に仕舞って置くことにしたのだ。
「……最初の家も取って置きたかったな……」
オレが生まれた家であり、オカンやオトンの思い出が詰まった、思い出深い、オレの宝物だった。
……プリッつあんの能力があればこうして残して置けたんだがな……。
「いや、言ってもしょうがねーか」
思い出は心の中にある。消えてねーのならそれでイイじゃねーか。
「思い出なんか生きてりゃできる。人生を楽しめだ」
それが生きてる者の特権なんだからな。
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