第412話 カイナーズ港ホテル(仮)
朝の仕事が終わり、ちょこちょこ必要なものを用意して、また
戻ると、だいたい八時半くらいで、もう朝食は終わっていた。
「おはよう。遅かったわね」
なぜかピンクのエプロンをした居候さんがオレに気がつき、満面の笑みで挨拶してくれた。
「おう、おはよーさん。ちょっと用意するものがあってな、時間がかかっちまったよ」
オレの考えるな、感じろピューターがスルーしたほうが正解だよと出したので、素直に従いエプロンのことは見なかったことにした。
「朝食は?」
「まだだよ。なんかあるかい?」
なければ収納鞄から出すがよ。
「ええ。まだあるからたくさん食べてね。プリちゃんも同じでいい?」
おっと。プリッつあん、いましたね。あ、髪の毛一本抜く嫌がらせは止めてください。ハゲたくないので。
「ええ。好き嫌いないから大丈夫よ」
この謎の生命体、意外と雑食なんだよな。肉は食うし魚も食う。酒だって飲む。リアルメルヘン、生々しいぃー!
お茶を飲む青年団の間に入り、野菜スープと黒パン、目玉焼きをいただきます。
「たまにはこう言う朝食もイイもんだ」
質素だけど、ファンタジーな朝と感じるぜ。
「……ちょっと野菜が固いわね……」
テーブルの上に自分のテーブルを出して朝食を食すプリッつあん。端から見てたら姑だよ、君。
「プリちゃんは、食通ね」
あまり気にした様子がないが、居候さんが作ってるわけじゃないのか? つーか、この人外さんが料理している姿が想像できねー。給仕している姿は悪い夢のようだけどよ。
「サプルの料理ばかり食ってると他のものが食えなくなるのが問題だな」
それでもちゃんと食べるプリッつあんはエライよ。
「確かに、あの味を知ったら他は食べられなくなるわね。パンにチョコレートとか神だわ」
いやまあ、言ってる意味はわかるが、人外さんのセリフではないよね、ソレ……。
全ての料理に感謝を籠めながら、出されたものを全て食し、コーヒーで一服する。
あーコーヒーうめー。
「さて。青年団の諸君。このままうちの村に来てもらってもオレは一向に構わねーが、そっちにも予定やら都合があんだろうし、今日これるヤツはこのままで、ダメなヤツは後日ってことでどうだい? まあ、三日後ぐらいにここに来てもらえばイイかな?」
予定は未定。どうなるかわからんけど、そのときはご隠居さんになんとかしてもらおう。
オレの提案に青年団が、話し合いを開始。六人がこのまま来る結論が出た。
「んじゃ、いくか」
ってことで六人を連れて村へと転移した。
驚く六人に構わず、カイナーズ港ホテル(仮)へと向かう。
「ういっす。やってるかい?」
フロントに立つ、紫肌のナイスミドルに声をかけた。
「いらっしゃいませ。はい、営業しております」
誰来んだよの突っ込みはノーサンキュー。よー知らんがカイナの流儀なんだろう。
「なら、六人頼むわ。宿泊は……一月で頼む。あ、あと、予約とか大丈夫かい? あと二十人以上宿泊させたいんだが?」
「はい。問題ありません。いつでもお越しくださいませ。それと、お部屋は一人一部屋に致しますか? それとも二人に致しますか?」
「部屋数があるなら一人一部屋で頼むわ」
プライベートは大事だからな。
「畏まりました。では、一人一部屋でご用意致します」
ってなことで各自名前を書いてチェックイン。ホテルマンらしい鬼ーサンに案内されて部屋へと向かった。
しかし、随分と変わったもんだな。もう完全ホテルじゃんかよ。まあ、時代も世界も超越しちゃってるけどさ。
「ベ、ベー殿。これはいったい……」
言われるがままに従っていた代表さんがやっと我を取り戻した。
「ここは、世界貿易ギルドの本拠地で、その一人がやってる宿屋だ。まあ、地下都市とは違うくくりだ」
部屋へと案内され、中へと入ってみた。
「充実してんな」
風呂に洗面所にトイレつき。シングルベッドに六畳ほどの居間まであった。
「御用の際は、ここを押してくださいませ。フロントに繋がりますので」
と、鬼ーサンが部屋の取り扱いを説明してくれた。
なんつーか、まさにホテルだな。いや、今さらなんだがよ……。
各自の部屋が決まり、一旦サロンへと移動した。
羊の下半身を持つウェイトレスのねーちゃんに適当に茶を頼み、腕の通信機でカイナに繋いだ。
なにやら料理しているカイナが映し出された。
「おはよーさん。今大丈夫かい?」
「はい、おはよう。うん、大丈夫だよ。なに?」
「ワリーんだけどよ、この界隈を案内してくれるヤツ、貸してくんねーかな? 将来の人材を連れて来たんだわ」
「わかったー。なら、おれがいくよ。午後からでいい?」
「おう。それでイイよ。港のホテルにいっから頼むわ」
「アイアイサー」
と、通信が切れた。軽いな~。
「ってなことで、午後から案内人が来っから、聞きてーことはそいつから聞いてくれ」
今日も今日とて他人任せな人生を送ってるオレでした。
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