第410話 実務実行部隊
「……君は、いや、貴殿はいったい何者なのだ?」
ロッテンバンガーさん、と言うか、リテンちゃんの質問やら疑問やらを答え、時間も時間なので続きは明日ってことにした。
泊まっていくかとの問いに、リテンちゃんは首を横に振り、今日のことを同胞たちに伝えたいと帰っていった。
確かに、一族の未来がかかってるんだから、仲間たち報告や相談をしなければならんか。まあ、納得いくまで話し合いをすればイイさ。
帰っていく父娘を見送り、居間に戻ると、青年団もなにやら話し合いをしていた。
こーゆー連中は話し合い、いや、討論が大好きと来てる。勝手にやってろと、青年団の寝床と風呂の用意に取りかかった。
で、今日泊まるくらいには整えて戻ってきたら、青年団が待ち構えていた。なんですのん?
ご隠居さんに説明ぷりーずするが、肩を竦めるだけだった。
なんで、青年団──の代表……なんったっけ、この人? ジュンでもなくてカズでもなくて、あうお~んって感じだったような……って考えたら冒頭のセリフを言われたのだ。
……まあ、青年団で纏めさせていただきますけどね……。
「なに者かと訊かれたらこう答えよう」
キメ顔で……代表さんを見た。
「オレ、ヴィベルファクフィニー十一歳。ボブラ村に住んでる村人です!」
決まった。とか思ったのですが、なにやら場がサイレンス。だが、我が強化ガラスのハートに揺るぎはねー。負けないもん。
コホンと咳をして、近くの椅子に座った。
「村人ですがなにか?」
「なかったことにしたわね」
おっと、頭の上の住人さんは、心の声が漏れやすいんだから。そんなんじゃ嫌われちゃうぜ。
とは言え、オレがサクッとスルッとスルーしたらたんなる独り言。優しいオレは聞かなかったことにしてあげるよ。
「……もはや、村人の所業ではないと思うのですが?」
所業って、なんで悪く思われてんの? まあ、イイことしてるって自覚もないがなっ!
ふーと息を吐き、コーヒーを飲んで落ち着く。
「随分と優しい世界で生きてきたんだな、あんた」
小バカにした態度で小バカにしてやった。
そんなオレの言葉に不愉快そうな顔をしたものの、怒ることはなかった。へー。沸点は結構高いだな。プライド高そうに見えるのによ。
「この世には村人があれをしちゃいけない。これをしちゃいけないって法でもあんのかい? だいたいな、苛酷な環境で生きてる者は、生きるためならなんでもするし、なんでもしなきゃ生き残れねーんだよ。それとも村人はバカで無知じゃねーと許せねーのかい?」
代表さんの目を見て言ってやる。が、なかなかアイアンハートの持ち主のようで、目を反らすことはなかった。
……ただのボンボンってわけじゃねーか……。
「なら、逆に聞くが、オレは何者なんだい?」
つーか、オレ、村人以外のなにに見えてんの?
「……わたしは、貴殿が王と言われても驚きはしない……」
王、ね。オレにはほど遠い職業だな。
「まあ、やってることがやってることだしな、そう見えてもしょうがねーか」
言っておくが、自分がなにをしているかぐらい把握してますからね。
「あとで楽をしたいのなら最初の手間を惜しむな。これ、オレ好きな言葉だ」
まあ、他にもいろいろあるが、今生ではこれを第一のモットーにしている。
「……どういった意味で?」
「平々凡々に、悠々自適に、穏やかな人生を送るためには、世が平和で物が充実してねーとならねー。まあ、オレの住む村だけでも守ってればイイんだが、時代は常に動いている。今日と同じ明日が来るとは限らねー。幸せに生きたいなら幸せに生きられる環境つくれ。労力を惜しむな。テメーの幸せテメーで手に入れろ。それがイイ人生ってもんだ」
別にわかって欲しいわけじゃねーし、わからせたいわけでもねー。これはオレの願い。オレの考え。オレの決断だ。
否定したいのなら否定しろ。認められなくてもオレはまったく気にしねーよ。オレを決めるのはオレであり、他人じゃねーんだからな。
「それがオレの出した人生の答えだ」
その答えのままに生きて、死んでやる。後悔のねー人生にしてやるよ。
「あんたらに聞く。国とはなんだ? 命とはなんだ? 人生とはなんだ? 求めるものはなんだ? 答えてみろ!」
と言われて答えられるヤツは極少数。奇跡のような存在だろうよ。
「もし、あんたらに探求心があるなら、この計画に参加してみねーか? まだ誰も見たことがねー世界がそこにあるぜ?」
青年団に手を差し出した。
取るもよし。取らぬもよし。決めるのはあんたらだ。と言う目で青年団を見た。
「……そこに、なにがあるのでしょうか?」
「見て、触れて、聞いて、考えて、自分なりの答えを出せ。それがあんたらの人生だ」
真っ先に青年団の代表さんがオレの手をつかんだ。
「わたしも、参加させてください」
「ああ。歓迎するよ。まだ誰も見たことがねー世界を思う存分見るがイイさ」
そして、次々にオレの手をつかむ青年団。
ハイ、オレの代わりに働いてくれる実務実行部隊をゲットです。
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