第409話 仲良く行こうや
やはり、エリートな青年団の自制心は強い。どこかの人外のようにバカ食いバカ飲みはせず、最後まで理知的に夕食を終えた。
片付けをパッパと終わらせた、食後の一服。あーコーヒーうめー!
「さて。これからは国家機密的なお話だ。秘密を守れねーヤツは帰りな。あ、ダルマ――じゃなくて、ロッテンバンガーさんらは残ってくれよ。あんたらが建国の要なんでよ」
まずは場所を創らんと始まらんからな。
「帰りません。仕事をいただけないとノーム族は生きていけませんから」
ハイ、ご隠居さん説明ぷりーずデス。
「ノーム族は、西の大陸で迫害を受ける種族でな、絶滅寸前と言ってもよい状況だ。昔のよしみで匿っていたが、さすがに万を超えるとなんともいかん。まさにベーは救世主じゃな」
「村人になに求めてんだよ。救われたいなら己の知恵と勇気でなんとかしやがれ。オレは種族保護活動家じゃねーぞ」
物好きなオレだが、自分の都合で動いてるまでだ。
「お前さんは、たまによくわからんことを言うな。なんさね、種族保護活動家って?」
「弱肉強食を否定して、生命は素晴らしいとかヌカす自己中心なアホのことだよ」
「まんま、お前さんのことのよう思えるがな」
悪戯っぽく笑うご隠居さんに、ふんと鼻で笑い返した。
「オレは滅びたいのなら勝手に滅べ派で、生きたいのなら勝手に生きろ派だ。そして、仲良く生きていきましょう派でもある。勝手に生きたいのならこっち来んな、だ」
オレの平穏無事のためにオレの見えねーところで好きに生きやがれ。こっちもいかねーよ。
「そんで、帰るか残るか、どっちだい?」
青年団の代表だろうあんちゃんを見る。
「残らせていただこう。君の、いや、貴殿の話は興味深いのでな。もちろん、秘密は厳守する。カオン・ジーグの名に誓って」
それにどんな価値があるかは知らんが、目が本気と書いてマジと読めたので青年団が同席することを許可した。
まあ、その辺はご隠居さんにお任せだ。しっかり秘密を守ってくれんだろうよ。
「んじゃ、秘密のお話をしようじゃねーか」
結界で居間を包み込んだ。
「……また、これか。何度見てもわからん術さね……」
まあ、オレもわからんからなんとも言えんがな。
「さて。ロッテンバンガーさん。まずはこれを見てくれや」
車座になるオレたちの真ん中にジオフロントを描き出した。
この結界は、脳内映像具象化結界。所謂オレの想像を映像化させることができる。ハイ、超ご都合結界ですがなにか?
「……こ、これは……?」
ロッテンバンガーさん、ちょー無反応。なのに、リテンちゃん、ちょー食いつき。オレは、あんたら父娘、ちょー引くわ。
「オレらはジオフロントと呼んでいる。まあ、あんたらには聞き慣れない名称だから、地下都市で進めるか。で、だ。ロッテンバンガーさん──らには、この逆三角以外のところを造って欲しい」
逆三角のところは、エリナの領分。自分の領域は自分で創れ、だ。
「まずは、こことここまでの道を造って欲しい」
港からジオフロントの最下層までの道を拡大して映し出した。
「ここの道は外洋船が余裕で……外洋船ってわかるか?」
「はい。船は見たことあります」
まあ、賢いお嬢さんをお持ちで。お父様……なんか反応しろや。置物じゃねーんだからよ。
「ごめんなさい。父は、極度の人見知りで、こうしているのがやっとなんです……」
しゅんとしながら頭を下げるリテンちゃん。ごめん。あなたがイイ子すぎて涙が溢れそうです……。
「あ、いや、まあ、理解してくれてるなら構わんよ」
なんとか堪えて話を進める。
「と、まあ、将来的には計六本。街の中心湖まで繋げるようにして、地上の光り取りの湖まで昇降水路、はまたいずれな。ここまではイイか?」
「……はい。いえ、理解し難いところが多いですが、我々の力なら問題ないかと。ですが、魔術を使わないと不可能な場所があるのではないですか?」
ほんと、この幼女さん、超天才児。
「そこは、小人族の技術を借りる。それと魔族の力も。異種族間国家だからこそ、だな」
「……小人族かい。また難儀なところと繋がりを持っておる……」
「小人族の中にも話のわかるヤツはいるし、未来を求めるヤツはいる。どの種族も同じさ」
千差万別十人十色。種が同じだからって個が同じとは限らない。生きたいと思い、努力したヤツが生き残るのだ。まあ、例外は別としてな。
「……あ、あの、それで、わたしたちの移住のことなんですが……」
「そうだな。いきなり全てをってのは無理だから、この辺に仮の住み家を造ってくれるか? さすがにこの逆三角のところに全ては暮らせねーし、種族の特性もある。なんで、ここをノーム専用区にする。だが、出入りは自由とする。他種族を否定した時点で国家反逆罪だ。それが、認められねーと言うならこの話はなしだ。王ではねー王とオレが許さねー。即、国外追放だ。今後一切の入国を拒否する。どうする?」
その問いに、ロッテンバンガーさんとリテンちゃんが両膝をついた。
「王ではない王とあなたの法に従います。どうか我らに安住の地を与えたまえ」
……リテンちゃん、恐ろしい子……。
なんてネタをやったところで理解者はいねー。
「まあ、仲良くいこうや」
リテンちゃんの頭をポンポンと叩いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます