第365話 お任せします

 サリネの元店にやってきたが、まだ帰ってないようだった。


 なら待つかと、土魔法でベンチを製作。マ〇ダムタイムをしながら待つことにした。


「な、なんだこれは!?」


 美中年さんが、当然、驚き出した。なんだい、いったい?


「……いや、不思議そうに首を傾げているが、お前のやったこと、上級の魔術師でもできないからな!」


「そーなん? 別に難しい魔術でもないだろうに」


 このくらいだったらオレの魔力でもできるぞ。まあ、半分はなくなるがな。


「いやだから、自己流で魔術を覚えるお前がおかしいんだからな! あと、お前の魔術がお気軽過ぎるわ!」


 すまん。その突っ込み、よーわかりませんわ。


「人は楽をする生き物。魔術がそこにあるなら利用するのは当然じゃねーか。なに言ってんだ?」


 魔術魔法がある世界で、それを利用しねーって、どんなアホだよ。意味わからんわ。


「それより、美中年さんはどこまでついてくんだ?」


 当然のようにいるが、あんた宰相でしょう。あ、いや、一年前くらいに大老どのから聞いたから、今はどうなのか知らんけどよ。


「ダメか?」


「いや、美中年さんがそうしたいと言うならオレは止める気はねーが、これからどこ行くかわかってんのか?」


 たぶん、わかってねーだろうから、会長さんに目を向けた。


「あーいや、そうだったな。カーベライル様、実はですね──」


 そこら辺の説明は会長さんにまるっとさくっとお任せします。


 あーコーヒーうめー!


「……なんと言うか、ふざけているな……」


「わたしもまったく持って同意見ですが、この者に常識は通じません。ベーだからと納得した方が心安らかでございます」


 なにやら横から失礼な会話が流れてくるが、スルー力レベル45のオレには通じません。お、サリネがきた。


「すまない。待たせたようだね」


「いや、そんなに待ってねーよ。挨拶は済んだのか?」


「ああ。滞りなく済ませてきたよ。ところで、こちらの方々は?」


 共通点が見当たらないのだろう、不思議そうにオレらを見交わしていた。


「そっちのは別件だからサリネが気にすることねーよ。関わっても面倒なだけだしな」


 オレも関わりたくねーが、自業自得な面倒だ。最後まで責任を果たさねーとな。


「そ、そうかい。まあ、ベーがそう言うのなら……」


「そう言うこった。んじゃ、いくか──と言いてーが、連れを迎えにいかなくちゃならんので寄り道するな」


「ああ、問題ないよ」


「会長さんもイイか? メンドーならそこら辺で待っててもらっても構わんがよ」


「いや、ついていくよ」


 まあ、美中年さんの目的もそれだし、嫌だとは言えんわな。ご苦労さまです。


 ってなことで、じいさんの酒場へと向かった。


 これと言った会話もなくじいさんの酒場に到着。これと言った変化は見て取れなかった。


「ここは?」


「前に船長さんから教えてもらった旨い料理と旨い酒を出してくれるところさ」


 あれ? そー言や、船長さんの名前なんだっけ? アでもなくラでもなく、イだっけか? あれ、なんだっけ?


「タージが?」


 あ、ハイハイ。そんな名前でした。タージ、タージ、ハイ、覚えました。絶対とは言わないがな!


「まあ、船長には船長の世界があり、付き合いがあるんだよ」


 見た目に変わったところもないので、酒場の扉を開いた。


「あ、ベー。早かったね」


 と、直ぐそこにカイナがいた。


「なにしてんだ、お前は?」


 あ、いや、モップがけしてんのはわかるけどよ。


「後片付け。さすがにあのままってわけにもいかないしね」


 そりゃまあ、あのままはさすがに営業妨害だしな。つーか、あれだけのも、良く片付けられたな。魔王、どんだけなんだよ!


「ま、まあ、そりゃご苦労さん。他のは?」


 人外が見当たらないが。


「うちで寝るって、帰っていったよ」


 人外の家、なんかスゲー興味があんだけど。いったいどんなところに住んでんだ?


「あ、剣客さんとおじいさんは、そこで寝てるよ」


 見れば床で死んだように倒れていた。


「まったく、剣客さんもじいさんも普通の生き物なんだから無茶させんなよな」


「アハハ。ごめんごめん。久しぶりにおれと付き合える人がいたから羽目を外しちゃったよ。あ、大丈夫だよ。二人は、ちゃんとアルコールは飛ばしておいたから。今は騒ぎすぎて寝てるだけさ」


 まったく、困ったヤツらだよ。


「片付けはまだあるのか?」


「ううん。これで終わり。直ぐ終わらすよ」


 その間に剣客さんを小さくしてポケットに回収。じいさんはそのままに……すんのは可哀想なんで、奥の部屋へと運び、多分、寝室だろう安楽椅子しかない部屋に寝かせ、収納鞄から出した毛布をかけてやった。


「なにしてんだ?」


 戻ってくると、なにやらカイナが酒を棚に並べていた。


「あ、うん。この店のお酒、全部飲んじゃったからね、お詫びに補充してるんだよ」


 前世酒でイイのか? とは思ったが、酒の違いなど知らんオレにどうこう言えんので、カイナの好きにさせた。


「これでよしっと。ん? 団体さんだね」


 扉のところで唖然としてる会長さんらに気がつき、なんなのとばかりにカイナが首を傾げた。


「村にご案内さ。それで、カイナ。ワリーんだが、キャンピングカーを出してもらえるか? 予定以上に人数が増えて、泊まる場所がねーんだよ」


「うん、いいよ。任せて」


「ほんと、ワリーな、無茶言ってよ」


「全然構わないよ。元おもてなしの国の住人で、元宿屋の経営者に万事、お任せあれだ」


 なんとも心強い言葉に、マルッとサクッとお任せします、だ。

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