第286話 めでたしめでたしと行かないのが人生だ

 ベーは幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。


 ………………。


 …………。


 ……。


 はい、ウソです。すみません。ちょっと言いたい気分だったので言わさしてもらいました。二度としないので石投げないでください。


 今、オレの防御力は紙装甲。ちょっとの暴言(突っ込み)で死にます。ご注意くださいませ。


「ほ~ら、刺身もあるよ」


 炙りがなくなったので刺身を出して食べさせてやる。


「旨いか? たーんとお食べ」


 は~。癒されるわ~。


 なにやら後ろが騒がしいが、もう少し静かにしてくんないかな。今のオレには美味しそうに食べるモコモコガールに癒されると言う大事なセラピーを受けてるんだからよ!


「ふふ。モコモコガールはイイ食いっぷりだな」


「──あんちゃん。あんまりアリザに食べさせないでね。そうじゃなくても羊でいる時間が多いんだから」


 なんか意味わからないこと言われたが、妹が女になっていることはわかった。


 ……前略、転生したかもしれない父上さま。妹がすくすく育って女になってます。日々の成長に嬉しくもあり悲しくもあります。父上さま。あなたと酒を酌み交わしたい気持ちでいっぱいです……!


「──ベー! いい加減戻ってこんか!」


 と、頭に激痛が走った。


 あまりの痛さに目から火花が散り、視界がグルグル回った。


 ……な、なに、これ? なんだこれ? なんだって言うんだよ……!?


 痛みのはわかる。だが、オレの体は五トンのものを持っても平気な体で痛みを感じたことはねー。なのに、なにかに頭をぶつけた以上にいてーよ!


「アーガル。もう少し加減するさね」


「と言うより、アーガルが殴って生きてるとかありえませんね」


「そうだな。あれ、オーガなら挽き肉になってるぞ」


「丈夫な村人だな」


 なんか聞き捨てちゃいけないことが耳に入るが、今はこの痛みをなんとかするので精一杯。ほんと、なんとかしてくれー!


 悶えに悶えること数分。やっと痛みが引いてくれた。


「本当に丈夫だな、ベーって」


「まったくだ。わたしの出番がなかったよ」


 なんとか痛みは引いてくれたが、人外どもにぶつかっていく元気はねー。せめて睨みでもしねーと兄としての矜持が廃るわ!


 ……もう廃ってるとかは言わないで。オレ、泣いちゃうよ……。


「……で、なんだよ、あんぽんたん人外どもが」


「いや、お前も大概人外だからな。本気ではないとは言え、アーガルに殴られて生きてるとか、ここ四十年、お前だけだからな」


「あー確か、岩石王でしたね」


「ああ、アーガルのアホ度が最高に達したときのアレか」


「聞いたときはアーガルのアホさに笑ったものだ」


「ほんと、アーガルはアホさね」


「う、うっせーよ! アホアホ言うな! オレは白拳王なんだ、拳で倒してなにが悪いんだよ!」


 怒鳴るアーガルの肩……は届かねーんで腰を叩いてやる。


「ドンマイ!」


 優しい笑顔で慰めてやった。決して仕返ししてる訳じゃございませんぜ、ダンナ。


「ドンマイがなんだかわかんねーが、その小憎らしい笑顔は止めろ! スゲー腹立つわ!」


 また殴り掛かって来たが、もう結界は纏ってある。例え隕石が直撃しても揺るがねー結界だぜ。


 ゴチン! と痛そうな──と言うか悶絶してしまった。ざまぁ!


「うわ~、えげつな」


「魔王か、お前は」


「これだからベーとは争いたくないさね」


「確かに。なにをしたかまったくわからんかったぞ」


 気分がちょっとだけ晴れたので残りの人外どもに体を向けた。


「で、なんだい?」


「切り替え早いぞ、こいつ」


 オレの百……あれ、なんぼだっけ? 四、八、どっちだっけ? ま、まあ、いっぱいある特技の一つである!


「なんかムカつくな、そのどや顔」


「ま、まあ、いいさね。話が進まんさね。サプルから聞いたのだが、バリエの唐揚げやバリエのステーキがあると聞いたが、本当なのか?」


「あと、鍋やバーベキューと言った調理法があるとか」


「パンケーキに蜂蜜をかけるとか、なんなのだ?」


「オーク肉の角煮とはなんなのだ?」


 なにやら血に餓えた野獣のような目付きになる人外さんたち。更なる食いしん坊キャラの出現か!?


「な、なんかよくわからんが、食いたいなら食うか? 材料も王都で仕入れたしよ。あ、サプル。ここからアブリクト島は近いのか?」


「ランブですぐだよ」


 なんか当たり前に言われたが、ランブってなんだよ。ジェット機ならどこでも直ぐだよ。


 スーパー幼女ながらちょっと賢さが足りないマイシスター。落ち着いたら勉強しようね。


「ご隠居さん、アブリクト島の位置わかるか?」


「ああ。わかるさね。あちらの方角に八バル位のところさね」


 八バルか。やっぱ単位があるとわかりやすいな。


「なら、そこで昼にするか。サプル。ワリーが料理を頼む」


「わかった。ならバーベキューにするね」


「ああ。あとは適当に頼むわ」


 指示するより任せた方が旨いものが出るからな。


「アリザ──は、イイや。あんちゃんたちときてね」


 モコモコガールの生態を熟知したようで深追いはせず、放置の方向でいったよーだ。


 バビュン! とばかりに蒼い空に消えるマイシスター。


「あー、んじゃ、ご隠居さん、頼むわ」


 釣りはまた今度。一人でいくとするか。あと、ジーゴ。いろいろスンマセン。


 白目剥いてるジーゴくんに合唱(鎮魂歌)──じゃなくて合掌です。

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