第255話 女子諸君
さて。屋台をやるのは決定だとして、なにを売るかだよな?
王都にくる前は海産物を焼いたり煮たりする食べ物屋を考えていたのだが、アブリクト貿易連盟設立で人を集め過ぎて海産物類も回すことになったので食関係はできなくなったのだ。
木工品の小箱、鍋やカップと言った食器具類、土魔法で創ったフィギュア類、コーヒー羊乳や果汁と言った飲み物屋、薬類、炭、香木、籠類、護身用程度の武器、防具類、などなど。いっぱいあって悩むぜ……。
腕を組んで悩んでいると、背後からかしましい声が聞こえてきた。
「バレッタ、髪跳ねてるわよ」
「え、どこ?」
「ここよ、髪濡らしてきなさい」
「ねぇ、誰か紐余ってない? 昨日切れてもうないの」
「あ、服に穴が……」
「ターリの肌、いつも綺麗よね」
言ってる内容は貧乏な話だが、しゃべってる感じは女子高生だ。いや、小学生女子か? まあ、世界は違えどガールズトーク(?)そのものだった。
振り返り、多種多様な女子たちを見る。
一応、男女の区別はしたが、着替えが終わり、朝食の準備に取り掛かろうと言うときなので、男女混合にはなっている。
風呂に入らせ、古着を買って身なりをよくしたので街の子、とまではいかないまでも浮浪児には見えないまでにはレベルにはなっているだろう。
だが、やっぱ貧困な感じは出ている。まぁ、しょうがねーと言えばしょうがねーんだが、村の女子力を見てる者としては不憫でしょうがねー。
まだ雇い入れて数日で、給金はまだ出してない。身だしなみをよくしろと言うのは筋違いだろうな……。
……そー言やぁ、王都の女子もなんか質素だったな……。
バリアルの街の女子よりは垢抜けてはいるんだが、うちの村の女子(敢えて女子と言います)と比べたらどうしょうもなく野暮ったいのだ。
……いやまあ、うちの村が異常なんだけどね……。
「うん。オシャレアイテムを売るか」
村の女子たちの賃金として大量に作ってある。つーか、作り過ぎて流行りを過ぎて売れ残っているのだ。
……村で流行りとかなんだよって突っ込みは甘んじて受けよう。自分を責めたい気持ちでいっぱいだからな……。
「女子たち、ちゅう~も~く!」
朝食の準備に移ろうとしていた女子たちをこちらに向けさせる。
「男子は悪いが、朝食の用意を頼む」
男子には悪いが、まずは女子を焚き付けるのが優先。女子は消費を生むからな。
「デンコ、指揮を取れ」
「はいですだ!」
立場的にデンコは雇い側。タケルの補佐その二を言い渡してあるし、立場を皆に示してある。不満はあるだろうが、反論がないので男子組代表を任せている、とかなんとかカーチェが言ってました。マジあなたに感謝です。
「女子諸君。君たちに一つ、仕事を与えよう」
収納鞄から一メートル四方の厚手の布を出して下に敷いた。
更に髪飾りや首飾り、髪止め、簡素な木のクシを出して布の上に並べた。
「まずこれを女子諸君に進呈……いや、これをやるから身だしなみを整えたまえ」
多少デザインは違うが、大きさや歯の数は一緒なので適当に配った。気に入らなかったらトレードし合ってくれ。
「はいはい、騒ぐのはあと。まだ話は終わってねーんだからよ」
村でもクシをやったときはここの女子たち同様、歓喜して騒がしいったりゃありゃしないよ。
なんとか、いやまあ、カラエさんのお力で静めてもらいました。オレに女を纏める力はねーんだよ、文句あっかこん畜生が!
「で、だ。この中から好きなのを二つ選べ。そして、今日から身につけ──」
なんか、凄まじいまでの音が耳の奥に突き刺さり、脳天から突き抜けて行った。
一瞬、どころか神(?)に会ったときのように真っ白な世界を見たような気がした。
──ハッ!
我を取り戻すと、布の上にはなにもなく、視線を上げれば女子たちがカーニバル。そこは感じて察してくださいな。
「……あー……まあ、イイや」
目的は果たされた。と、自分を誤魔化そう。それが男の処世術だ。よー知らんが。
オシャレカーニバルにフィーバーする女子諸君を横目に隣の倉庫に向かった。逃げたとも言います。すまん、カラエ。君の苦労には後で報いるから!
はい。と言うことで屋台選びといきましょう。
つっても小物類用の屋台は一つだけなので、さっさと引いて倉庫を出る。
あ、朝メシ食ってねーや。いや、イイや。あの中に入る勇気はオレにはねー。
やっぱ、サリバリを連れてくるしかねーかな?
王都での活動拠点を手に入れた今、オシャレ革命に着手するときがきた──かどうかは知らねーよ。なんとなく言ってみただけです。スンマセン。
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