第221話 メルヘンども

 羽妖精たちと子供たちが楽しそうに遊び回っている。


 ファンタジーな世界でなんともメルヘ~ンな光景だぁ~~。


「──って、現実逃避してんじゃねーよ、オレ!」


 なんなんだよ、このメルヘンと言う名の混沌は? いったいどこの不思議な国に迷い混んだんだよ?


「あ、兄貴。お帰りだや」


 頭に羽妖精を乗っけたデンコがオレに気が付き駆け寄ってきた。


「いったいなんなんだ、これは? オレがいねー間になにが起こったんだよ」


 急展開過ぎてついてけねーよ。オレ、どこで人生の早回しボタンを押したんだ……?


「タケルの兄貴が羽妖精をたくさん連れてきただよ」


「タケルが?」


 その原因タケルを捜すと、羽妖精に囲まれていた。いや、まとわりつかれていたと言うべきだろうか。なにやらモテモテのご様子だ。


「おい、タケル」


 羽妖精にまとわりつかれていたタケルがオレの声に気が付き、慌ててこちらへと駆けてきた。


「ベーさん、お帰りなさい。うるさくしてすみません」


「いや、騒がしいのはどーでもイイよ。防音仕様になってからな。じゃなくて、なんなんだよ、この混沌は?」


 説明プリーズしろや。


「タケルぅ~。この子があなたの恩人って子?」


「ちっちゃぁ~い」


「あ、この子も気持ちいい匂いがするよぉ~」


 タケルにまとわりついていた羽妖精が今度はオレにまとわりついてきた。


 まあ、こーゆー状況には慣れてんで気にはしねー。まだ毒を撒き散らさないだけマシだ。


「あぁ、こら、止めないか! 大人しくしてるって約束しただろう!」


「してるよね~」


「してるしてるぅ~」


「わたしたちイイ子だもね~」


 なんだろうな、このメルヘンどもは。ファンタジーな世界の住人ならファンタジーらしくしろや。まあ、言ってて意味不明だがよ。


「ったく。メルヘンの住人はどれもおんなじだな。騒がしくてしょうがねぇぜ」


 一人一人(匹は差別なんでご注意を。見た目はメルヘンだが、歴とした知的生命体だからよ)結界で包み込んで引き剥がした。


「なにこれ~」


「ふわふあぁ~」


「キャハハ!」


 ったく。話が終わるまでそうしてろ。


 メルヘンの住人は、基本単純なのが多いから珍しいことさせておけばしばらくは放っておけるんだよ。


「で、なんなんだよ、コレは?」


「え、えーと、あの、なんと言いましょうか、買っちゃいました……」


 ポケットから孫の手出してタケルの頭を叩いた。


「略すな、アホ」


「あー、ベー。それはわたしから謝るよ。ちょっと船長に裏社会を見せてやろうと闇の競り市にいったんだよ」


 なんでもそこに出品された羽妖精をえらく気にいったタケルが金にものを言わせて買い占めたよーだ。


「すんませんでした!」


 なかなか見ることができねー見事な土下座をするタケル。日本男児ここにありって感じだな。あ、いや、タケルも一応転生だっけ。まあ、なんでもイイか。


「別に怒ってるわけじゃねーよ。お前の金なんだ、オレが口出す権限はねー。好きなことに好きなだけ使えばイイさ。ただ、考えがあって遣ったんだろうな?」


 無駄遣いがどうこう言ってる訳じゃねーぞ。それもタケルの判断だからな。オレが言いてーのは、こいつらをどうするつもりで買ったんだと聞いてるのだ。


「……考えならあります!」


「ほぉう。そりゃ頼もしいな」


 ありませんって言ってたら孫の手チョップだったぞ。


「で、どーすんだ?」


嵐山らんざんのクルーにします!」


「はぁ?」


 なに言っちゃってのタケルくんは。まったくもって意味がわからんのですが。


「こんなサイズの子たちをクルーになんてバカみたいに聞こえるかもしれませんが、この子たち、回復魔法の使い手なんです。だから医療要員として乗ってもらい、徐々に他へと回して行きます」


 ほ~。そりゃまたファンキーでトリッキーなこと考えるじゃねーの。


「そっか。なら頑張って鍛えろよ。んじゃ、ガキどもらの寝床創んねーとな」


「え? 怒らないんですか?」


 なにか不思議そうな顔をするタケル。


「なんで怒んなくちゃなんねーだよ。お前が考えてお前が決めたことだろう。なら、オレが口出すことじゃねーよ。やりたければやれ。やりたくねぇのならやるな。これがうちの家訓だ」


 オレが決めたことだが、サプルもトータもそんな性格をしている。あ、オカンもそんな感じだな。まあ、だから好きに生きればイイさ。タケルはもううちの家族なんだからよ。


「……はい! 頑張ります!」


 まあ、頑張る頑張らないもまたタケルが決めればイイこと。でもまあ、頑張るなら応援するさ、家族だからな。

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