第187話 王都の港
──王都スレンビィーク。
アーベリアン王国の中心都市であり、港が発展して国となった海洋王国でもある。
国自体も海に面し、細長く、大都市はだいたい港を持っているのが特徴な国だ。
まあ、海洋王国とは言っても他にも海洋王国はあり、大国は幾つもあるのでそれほど大国と言うわけじゃない。可もなく不可もないそんな国だ。
それでも一国の王都であり、三百年の歴史があるだけあって、空から見る王都はなかなか壮観であった。
「ルクク。山の方に頼む」
魔法や魔術があり、魔物がいる世界であるため、大都市には結界や城壁に囲まれており、空の防衛も万全になっている。
王都スレンビィークも三重もの城壁に囲まれ(陸地だけね)、王さまが住む城には強力な結界が施されている。
海洋王国では珍しく竜騎士(数は少ないが、いるといないとでは防衛に差が出てくるんだよ、この世界は)もいるので、下手に近づくと攻撃されかねないのだ。
なんで、バリアルの街同様離れた場所に下りなければならんのだ。
「ルクク。ここでイイ。夕方にきてくれ」
ルククの首を撫でてから飛び下りた。
「キュイ!」
了解とばかりに旋回するルククに手を振り、空飛ぶ結界と迷彩結界を発動する。
ゆっくりと下り立った場所は街道から少し離れた山の中腹。もちろん、人の姿はない。
空飛ぶ結界を操り、街道へと出る。
この道はうちの村まで通じたアーベリアン王国の主要街道だが、常に人の往来がある時代ではないので人の姿、もしくは魔物の姿は見て取れなかった。
ならばと行けるところまで空飛ぶ結界で移動し、王都まで二キロくらいのところで人の往来が出てきたので結界を解除し、徒歩で向かった。
王都付近は様々な畑が広がり、村が乱立しているので、人の往来は結構あるのだ。
王都の門が見えてきた。
さすが一国の首都だけあって城壁の高さはハンパない。巨人族の侵攻にも耐えられそうな高さと重厚さがあった。
王都には入るのに税はかからず、これと言った検問もないので簡単に王都に入れた。もちろん、警備兵が立って不審者がいないかを見張ってるし、魔物が襲ってきたときは真っ先に戦うことだろうよ。
門を潜った場所は三の街で、商人街、宿屋街、倉庫街、各ギルド本部(国を超えるギルドは冒険者ギルドだけ)、商店街があり、だいたいのものは三の街でだいたい揃えられるので、ここいら辺しか知らねーんだよな。
まあ、一の街たる貴族街なんて用はねーし、二の街は住宅街。四の街ってのはねーが、まあ、こんな大都市には必ずあるスラム街なんでいく必要もねーんだよ。
「さて。まずは港だな」
今回は泊まりできたので買い物は後々ってことで、まずは港の下見とタケルたちの受け入れ準備だ。
門から真っ直ぐ伸びた道が港に通じていることは知っているので、迷うことはない。
「ほ~! こりゃまた壮観だな~!」
上空から港の様子は見ていたが、近くで見るとこれまた違った臨場感があった。
この時代では帆船が主流だが、中には会長さんの船と同じく魔道船が何隻か停泊してるのが見えた。
「外国の船かな?」
さすがに魔道船を持っている商人がこの国に何人もいるとは思えねーし、それほど特産がある国じゃねー。輸入や輸出で儲ける商人なんて聞いたこともねーわ。
意外と停泊している船を眺めながら港を回っていると、見知った船を発見した。
「あ、そー言やぁ船の名前、聞いてなかったな」
それほど船にロマンを感じなかったんで聞く気にならんかったわ。
「ついでだし、挨拶してくか」
と思ったら港は関係者以外立ち入り禁止で入れなかった。
「しゃねー。下見を続けっか」
と思ったらばったり会長さんの船の船長さんと出会ってしまった。
……人生、先が見えねーって本当たな……。
「おう。船長さん、久しぶり」
手をあげて挨拶するが、船長さんは化け物でも見たような目でオレを見ていた。
「……お、お前、いや、え? あ、え? えぇぇっ!?」
我を取り戻したと思ったらパニクる船長さん。
やれやれ。そんなんじゃこのファンタジーな世界の海を乗り越えられんぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます