第176話 島に到着です

「まあ、やっちまったもんは仕方がねー。結果オーライ。無事で良かったね、だ」


 左右の羽根が落ちていくのを見ながら纏めて見た。


「そ、そんなんでいいんですか?」


「構わねーさ。どうせあの火竜もこっちを襲いにくるところだったんだ、先か後かの違いだ」


 殺るか殺られるかの弱肉強食な時代。必要なら殺せ。必要じゃなければ殺すな。強者が法なのだ。


「なんで、火竜の羽根を回収するぞ。火竜の羽根は結構なイイ値で売れるからな」


 火竜は冒険者ギルドや国から災害指定された生き物だ。まあ、このアニメな潜水艦の前には一撃だったが、A級の冒険者パーティーが十組にB級、C級の冒険者が百集まってなんとか勝てたと言う話があるくらい。火竜に襲われ滅びた国だって十や二十じゃ利かねーだろう。


 そんだけの生き物だから捨てるところがねー。鱗はもちろん牙だろうが爪だろうがいろんなものに使えて、竜の素材でできたものは高値で取引されるのだ。


 まあ、今回は羽根しか残らなかったが、羽根はマントにできるし、骨は槍の柄になり、爪は削れば剣になる。


 安く売ったとしても金貨二千枚はいくだろう。前に鱗を一枚売ったら金貨に化けたからな。


 ……ちなみに残りはハルヤール将軍に売った。出世払いでな……。


 だが今回はあんちゃんの店に売れるだろうし、ドワーフのおっちゃんがいる。余すことなく回収せんとな。グフフ。


 結界術を使ってサクっと回収。艦尾の格納庫に入れて島へと向かった。


 で、港を出て一時間くらいで島に到着しました。


「速いな。いったい何キロ出てたんだよ」


「だいたい五十五ノット──まあ、百キロくらいです」


「……海上を百キロって、メチャクチャだな……」


 船の素人でもふざけた速度だってわかるぞ!


「ま、まあ、そう言う設定ですし……」


 ああ、そうだった。突っ込みはノーサンキューだったな、オレたちの能力は……。


「じゃあ、接岸させますね」


「あ、ついでだからこの潜水艦用に港創るわ。ちょっとここで待ってろ」


「はぁ? 港を? へ? えぇぇっ!? マ、マジですかっ?!」


「マジだよ。港創りは何度かやってるからそう時間はかからんさ」


 あの港も気に入るまで何度となくやり直したいからな、もう創るなど造作もねーさ。


 回収んときのように艦長席の上にあるハッチから外へと出た。


 以前にちょっとしたものは創ったのだが、釣り船用のもの。この潜水艦が着けられるくらいの深さはない。


「よっと」


 結界を纏い海へと飛び込む。


 この辺はまだ深いが、島に近づくにつれ岩があり、海草が生い茂っている。


 なんで、土魔法で岩を動かすと同時に海草を排除(後は波でどっかにいく)し、島の方へと移動していく。


 土魔法の才能と修練(カッコよく言ったら)のお陰で幅八十メートル。深さ四十メートルの、潜水艦用のちょっとした港を創った。


 桟橋や護岸は今度。今日はこのくらいでよし、だ。


 海上へと上がり、タケルにイイぞと合図する。艦尾を向けてるがカメラで見てんだろうよ。


 そうだったようで、潜水艦の端にあるライトを点滅させながらバックしてきた。


 ……潜水艦にもハザードランプってあんだ……。


 妙なことに関心してたら潜水艦がイイ感じに港に収まった。


「屋根とかクレーンとか欲しいよな」


 基地造りに気持ちがはぜりそうになるが、今日は下見だと無理矢理押さえ付ける。


 格納庫扉が開放され、中からモコモコ族が出てきた。


「具合はどうだい?」


 見た感じ平気そうだが。


「はい。誰も異常はありません」


 他のモンにも目を向けると、大丈夫だと頷いて見せた。


「じゃあ、荷物を下ろしたら昼食にするか。荷物はあそこの家の前な。あと、この島には危険な生き物はいねーが、海にはいる。なんか異常があったら直ぐに声をあげろな」


 この海には陸に上がってくるクラゲとか平気でいやがる。陸にいるからって油断はできねーのだ。


「まあ、あくまでも油断するなってことだ。簡単な防備はしてあるから恐れることはねーよ」


 大事な我が家の畑である。害獣は近寄らせません。


「じゃあ、開始な」

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