第175話 突っ込み上手なタケルくん

 海の上を走っている。


 表現的にはそう間違っちゃいないと思うんだが、潜水艦的にはどうなの? 感じからして百キロくらい出てんじゃねぇ?


 あ、海ではノットだっけか? 確か……まあ、なんでもイイか。今の時代じゃ寸法も場所によって違うしな。


「……これ、潜水艦だよな?」


 なんか聞き間違いをしてたか、オレ。


「はい、潜水艦ですよ。まあ、主は潜水艦なんですけど、このイ六〇〇改には海上推進機能があるんです。対海上艦隊戦や対航空機戦をするためにね」


「アニメだな」


 そうとしか言いようがねーよ。その万能性は? あ、万能型って言ってたっけ。


「ア、アハハ。それが現実に出てくるんだから神ってスゴいですよね」


「そーだな。こっちの神に介入されなかったら更に良かったんだがな」


 補給なしなんてイジメとしか思えねーよ。


「……ですね。あ、そう言えば補給、なんとかなるって話だったですけど、ベーさんの魔法で出すんですか?」


「いや、知り合いにダンジョンマスターがいてな、触ったものや前世で記憶したものは出せるんだよ。まあ、魔力次第だがな」


 生命体を出せるなら未来的武器も出せんだろう。


「まあ、落ち着いたら紹介すっから武器は大事にしろよ」


 あっちもこっちも忙しいからな、武器は後回しだ。


「……なんかそれ、フラグが立ったみたいな言い方ですよね……」


 フラグ? なんか聞いたことあるが、なんだっけ?


 首を傾げていると、モニターに『未確認感知』と言う日本語の文字が出た。


 ……ジャパニーズアニメだからか……?


「え? マジでフラグ立ち!?」


『マスター。前方より飛来するものがあります。最大映像に切り替えます』


 モニターに赤いカッコが表れ、飛来するなにかに焦点を合わせ、それをズームしていく。


「──ドラゴン!?」


「火竜だな」


 赤みを帯びた体に翼の形、前に戦った(サプルがね)のと同じだ。まあ、前のは殺したので違う個体だろうがよ。


「や、やっぱりいるんですね。海の中にはでっかい魚やガ〇ラがいたから、そうじゃないかとは思ってましたが、実物見ると、こ、怖いもんですね……」


 まあ、竜の中では凶暴で強い分類に入るし、あの見た目だ、心臓が弱いヤツなら見ただけで死んでるな。


「ベ、ベーさん、どうしましょう?」


「弾薬はあとどのくらいあんだ?」


「三割あるかないかです」


 うん。弾切れ寸前ってことね。


「エネルギー兵器ってねーのか?」


「ありますが、戦艦に撃つもので機動力のあるものには不向きなものです」


「じゃあ、一発撃て。威嚇と警告だ」


「ド、ドラゴンにですか?」


「この世界の竜は賢い。自分より強いと思ったら襲ってこねーんだよ。まあ、どの種族にもバカはいるから絶対じゃねーし、全ての竜がって訳じゃねーがな」


 あと、若い竜もダメだな。ケンカっぱやい上に残虐性があるから。


「ダ、ダメだったら?」


「お仕置きだ」


 バカになにを言っても無駄。優しく体に教えてあげましょうだ。


「……え、えーと、わかりました。嵐山。主砲用意」


『了解です。主砲、用意』


 カコンと軽い音がして正面モニターの右下の小さなモニターに、その主砲ってのが映し出された。


 ……やっぱアニメ的主砲だな……。


『主砲用意よし。いつでも発射可能です』


「わかった。主砲、発射!』


 その掛け声に半秒ほど遅れて青白い帯が発射された。


 ……んーと。ビーム砲……?


 音が遮断されてるのか、撃ったときの発射音は聞えなかったが、見た限りでは戦艦を一撃で沈められそうな感じだった。


 視線を正面モニターに戻すと、向かってくる火竜が主砲に気が付き、慌てて回避──できずに撃ち貫かれてしまった……。


「……え、えーと……」


 タケルからの視線が頭に当たってるのを感じるが、完全無欠にスルーです。


「うん、まあ、あれだ。自己防衛ってやつだ」


「あきらかに過剰防衛ですけど」


 もータケルくんたら突っ込み上手なんだからっ。

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