第149話 そんな妹ですんません!
二度、三度と銃を創っていくうちに、体が工程(魔素の流れや変換していく感じ)を記憶した。
「サンキューな」
銃(見本)をタケルに返し、地面に手をつけ記憶から創り出してみる。
「うん。バッチリ」
確実に覚えたので、今度は弾だけを生み出してみると、こちらも寸分の狂いもなく創り出せた。
「……ほんと、チートですね、べーさんは……」
じゃらじゃらと創り出される弾を見てタケルが呆れている。まあ、オレもそう思うよ。
「こんなもんかな」
自分でも何発創ったかはわかんねーが、三百発近創った感じはする。あ、マガジンも創っておくか。
「タケル。これは練習用にしろな」
「へ? 練習用、ですか?」
不思議そうな顔をする。
「タケルは一人は嫌だって言ったが、オレんちにきたら農作業だ。まあ、他にも手は出してるが、どれも泥臭いものばかり。そして重労働だ。お前にできねーとは言わねーが、ハンパな気持ちではできねーぞ。前世のように農機具はねーから己の体を使うしかねー。それでもって言うならうちにくればイイ。だが、あんな潜水艦を願うくらいだ、やりたいことはあったんだろう?」
前世の記憶を持って生まれたのだ、その思いは強いってことだろう。
「……はい。この大海原を冒険したいって思ってました……」
それでなんで潜水艦を願うかはオレには理解できんが、人それぞれの思い。他人が口出すことじゃねー。
「今の気持ちに負けてオレんちにきたら絶対後悔する。そして、あやふやな気持ちで逃げ出すことだろうよ。まあ、それもお前が選んだ道だ、勝手にしろ。だが、人生の先輩として言ってやる。そんな人生、クソだぞ。なに一つ楽しくねー。また悔いを残したまま死んじまうことだろうよ。そんなのもったいねーだろう。神の失敗とは言え、人にはねー力をもらい、人より有利なところからスタートできんだ、捨てんじゃねーよ。みっともなくてもイイから思いのままに求めてみろや」
オレは求めてやる。二度と前世のようなクソな人生なんて送ってやるかよ!
「……お、おれ……」
オレの睨みから逃れるように俯いてしまう。まあ、十七の子供にはこれが精一杯か。
「まあ、直ぐに答えを出せとは言わんよ。こっちもいろいろ立て込んでいて、正直タケルには構ってやれねー。きても放置になる。そうだな。一月……もしたら落ち着くと思う。だからその間、体を鍛えろ。技術を高めろ。ちゃんと食糧は置いてってやるし、たまに顔見せにくる。どうしても寂しいって言うならあのジェット機で遊びにきてもイイ。うちには秘密の港があるから人目を気にすることはねーし、知り合いの商人が店を出してるから欲しいものがあったら注文したらイイ。なんなら潜水艦で来たって構わねー。港からちょっと離れてはいるが、あの潜水艦なら接岸できる場所がある。ただ、海面下は人魚の町があるから潜ってはくるなよ。そうだな。一回ウルさんと顔合わせしとくか」
さすがのウルさんらもあの潜水艦にはびっくりするだろうから、下準備は必須だな。
「よし。今日、うちに泊まりに来い」
「え? あ、へ? いったい……」
タケルの戸惑いに構わず、光の魔術で光球を二発、打ち上げた。
「……べーさん、魔術チートなんですか……?」
「オレの魔術は並みだよ。あの光球も魔術初級者なら誰でも出せるものだ」
知り合いの魔術師系冒険者が言ってたし、そう難しくもねー。光をイメージして生み出すもの。まあ、魔術と言うよりは魔法だな。
光球に気が付いたサプルが大きく旋回し、もう十年は乗ってんじゃねーのって感じで海に着水させた。
なんかもう不機嫌いっぱいな顔でやってくる。そんなに気に入ったのか、お前は?
「あんちゃん、もう帰るのぉ?」
「ああ。今日、タケルがうちに泊まることになったんでな、今日はこれで終わりだ。あ、タケル。なにか持っていくもんがあんならあのジェット機に積み込め。デカイもんならオレが持ってくからよ」
ニヤリとサプルに笑って見せると、オレの言葉の意味を瞬時に理解。タケルの手をつかんだ。
「タケルあんちゃん、用意するよ!」
まさに有無を言わせずタケルを引っ張っていった。
タケル。そんな妹ですんません!
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