第91話 訪問者

 そんなわけで〇ンダムタイム。


 はぁ、なに言ってんのとの突っ込みはノーサンキュー。


 この怒れる感情を静めねーと世界を滅ぼしかねねぇからな、まあ、クールタイムってことだ。


「あんちゃん、夕食だよ」


 いつもの暖炉前の席でコーヒー(モドキ)を飲んでいると、不安そうなサプルが肉まんを持ってきくれた。


「ありがとな」


 あんま食いたくねーが、サプルの心遣い。食わねば兄が廃るってもんだ。


「そー言やぁ、ねーちゃんたちは帰ってきたのか?」


 冒険者に規則正しい生活を求める方が間違っている。食事の用意以外はねーちゃんたちに任せてある。離れにだいたい必要なものは揃ってるしな。


「ううん、まだだよ」


「そっか。ならしゃーねーな」


 いるんなら頼りてーとこだが、いねーのなら諦めるしかねぇな。まあ、心の支え的な存在でいて欲しかっただけだしな。


「ベー。トータは大丈夫なのかい?」


 不安そうな顔はしているが、取り乱したりはしないオカン。さすが冒険者の嫁だっただけはある。


 それに比べてオレはダメだな。大丈夫だとわかっていながら心が騒いで落ち着いてらんねーよ。


 だが、オレがドンと構えてなけりゃオカンやサプルが心配する。この家はオレがオトンから託された大切な場所だ。毅然と顔あげて前を向けだ。


「全然問題ねーよ。やろうと思えば直ぐに助け出せるし、話しはできるしな。これはトータへの教訓と訓練だ。一人前になるためにな」


 いや、それは自分へのセリフだな。


 万全と言いながらトータを拐われ、こんなにも動揺している。まったくもって情けねーぜ。しっかりしろや、オレ!


「心配すんなってのは無理な話だが、なんの問題はねーよ。つーか、オレがさせねー」


 結界が繋がっている限りトータに手は出させねぇし、したら最後、その一帯百年は草も生えねーようにしてやんよ。


「まあ、今日は休みな。明日、トータを迎えにいくからよ」


 まだ夜の八時くらいだが、なにかをする気にもなれんだろうし、寝るのが一番だ。


 オカンもサプルも不満ありそうだったが、それを口にすることはなく、片付けをして寝室に下がった。


 オレはその場に止まり、コーヒー(モドキ)を飲みながら心を静めていた。


 四杯目を飲み干した頃、戸を叩く音が響いた。


 直ぐに応えることはせず、深呼吸を三回して気持ちを切り替えた。


「……開いてるよ。入ってきな」


「では、お邪魔させていただきます」


 外からなんともイケメンなイイボイスが返ってきた。


 ……さて。今度はどんな珍妙が出てくるやら……。


 戸が開かれ、声の主が入ってきた。


 ガシャン!


 知らず手にしていたカップを落としてしまった。


「初めまして。わたし、バンベルと申します」


 すみません。ちょっと叫びます。


「──ふざけんなっっ!」


 あんまりだろう、いくらなんでもよっ!

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