第90話 夜露死苦!
「捕縛」
なんかもう無理。いろいろ省略させてもらいます。
問答無用でおバカなサキュバス……あれ? 男はインキュバスだっけか? でも、こいつ男の娘だし、あれ? 性別を超越したヤツはなんて言うんだ?
って、なに悩んでんだ、オレは! んなもんどっちでもイイわっ!
「はーなーせー! 犯されるー!」
「うっせいわ! このイン子が!」
はい、命名しました。今日からこのおバカなインキュバスはイン子です。夜露死苦っ!
イン子の罵倒を右から左に受け流し、オーガを放り込んだ基地(土蔵?)に放り込んでやった。
「そこで人生の在り方を語り合え、クソどもが!」
ほんと、なんなの、こいつら? 人生どころか進化論に謝れよ。もうビッグバンからやり直せよ! もうボク、おうちに帰る!
歩いて帰るのもおっくうなので空飛ぶ結界を出して家に帰った。
「おや、ベー。もう帰ってきたのかい?」
うちのちっさい牧草地で山羊用の飼料を刈っていたオカンが一時間もしないで帰ってきたオレに気が付き、声をかけてきた。
「なんかもう、人生に疲れたから帰ってきたよ」
「……はあ? なんだい、いったい……?」
「オレ、もう寝る。夕食はいらんから」
オカンには悪いが、しゃべるのもおっくうで、なにもしたくねーんだよ。
いつもの寝室ではなく、自分の部屋のベッドに潜り込み、安らかな夢の世界に逃げ込んだ。
「──あんちゃん、起きて!」
が、世の中とは非情なもの。安らかなんて直ぐに破られんだよな。せっかくイイ夢(なにかは言いません。なんか死を予感するから)見てたのによ……。
布団から抜け出すと、なぜか矢を持ったサプルがいた。
「……なんだサプル。弓の練習か?」
つーか、今何時だ? 暗いから夜か? 弓の練習なら明るいうちにやれよ、危ないから……。
「ちゃんと起きてよ! トータが帰ってこないの!」
一瞬で覚醒し、ベッドから飛び出した。
「暗くなってどんくらいだ?」
「だいたい一時間くらいだよ」
サプルには日時計で時間を教えてあり、一日を二十四時間で区切れるように仕込んであるのだ。
「で、なにかあったのか?」
別に暗くなっても帰ってこないからと言って、別段騒ぐことではない。トータも集中すると止まらなくなる性格。暗くなっても帰ってこなかったのなんてよくあること。なんでちゃんと備えと保険は持たせてある。それはサプルも知っている。それがこれだけ騒ぐのだ、なにかあったと見るべきだろう。
「これが隣んちに刺さってたの」
なんで隣と突っ込まれそうだが、うちには強力な防御結界を施してある。矢どころかドラゴンのブレスでも防ぐので隣んちに刺したんだろう。もうそれだけであのクソども関連ってことが見えてくるぜ……。
矢に結ばれていただろう手紙を開いた。
「……フフ。だったら喜んで招待されてやんよ……」
中身? んなもん勝手に想像しろや。くだらなすぎてしゃべる気にもなんねーよ。
手紙を握り潰し、燃やしてやった。
ズボンの右ポケットから連結結界の片割れを取り出した。
「トータにオープン」
トータに仕掛けた連結結界の片割れと繋いだ。
「トータ、聞こえるか?」
「──あんちゃん!」
どうやら無事のようだな。って、まあ、どうにかできる結界じゃねーがな。
「周りに誰かいるか?」
「ううん、いない」
「そこがどこかわかるか?」
「なんか地下の部屋で狭いとこ」
「わかった。迎えにいくからゆっくり寝てろ。あと、捕まるのも勉強だ。自分がなぜ捕まったか、そこはどこで周りになにがあるか、脱出するためにはどうするか、今後捕まらないようにするにはを考えておけ」
「……わかった……」
「一人で寂しいかもしんねーが、耐えるのも勉強だ。あんちゃんが行くまで一人がどんだけ心細いかしっかり学んでおけ」
連結を解除し、ベッドに腰を下ろした。
「……あんちゃん……」
不安そうなサプルに笑顔を見せて安心させてやる。
「心配すんな。すんなら相手を心配してやれ。これから悪夢を見るクソどもにな……」
人の弟に手出して幸せな人生を送れると思うなよ。フフ。
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