第9話 考えるな、感じるんだ!

 魔法を教えると言ったが、オレ自身誰かに付いて教わったこともなければ魔道書を読んで覚えたわけじゃない。


 あればできる。やればできる。考えるな、感じろの精神でやったら、あらできた。手を地面に向けて動けと命じたら動いてしまったのだ。


 我ながらメチャクチャなとは思うが、できてしまったのだから仕方がない。ならば使うしかないじゃない。


 まあ、その当時、三歳くらいで今世の状況もわからず、感じるままに、前世のアニメやマンガを思い出して魔法を使っていたが、六歳頃に魔法と魔術の違いを知った(旅の魔道師からの情報)。


 魔法は世に満ちる魔素を用いてイメージで現象を起こす万物の法。


 魔術はおのが魔力を用いて理を解いて現象を具現化する法。


 あん、わからないって?


 それはな、考えるな、感じろだ!


 いやだって、こんなド田舎に学のあるヤツなんていねーし、猿でもわかる魔道書なんて売ってねーんだもん。自己流になって仕方がねーじゃんかよ。


 ただ、経験則から言って、人間種(獣人種やドワーフ種と言った人間に近い種な)なら、そのどちらも使えるはずだ。


 三つの願いで土魔法の才能を得たオレではあるが、ちゃんと火や水の魔術を使えることができた。妹や弟もどちらも使えた(ただし、弱い魔法しか使えない)しな。


 ただ、魔術はおのが魔力を使うので限界はある。と言うか、理を解くのに限界があると見ている。


 火はイメージできてもなぜ燃えるかなんてこっちのヤツらにわかるわけもねー。だからイメージした火を魔力と言う薪で燃やして強くするぐらいがやっとなんだろう。


 オレだってそんなに燃焼原理を知っているわけじゃねーが、酸素を加えるイメージで大木を炭にできたほどだ。


 ……どうやら魔力は人並みなようで失神してしまったがな……。


 ちなみに結界の方は魔法や魔術とは違うようで、なんか知らん不思議パワーで生まれているよーだ。


 とにかく、だ。あればできる。やればできる。考えるな、感じろの理論でやるしかない。特に問題があるわけじゃねーし、世間に認めさせたい訳でもねーしな。


「じゃあ、まずお復習さらいだ。サプル、右手に火。左手に氷だ」


「火と氷、出ろっ!」


 焚き火するのにちょうどイイサイズの火とスイカ大の氷の塊が生まれた。


「よし。次はトータ。右手に風。左手に雷を出せ」


「んー!」


 右手には扇風機の中くらいの風が。左手の親指と人差し指の間にスタンガン並みの電気が生まれる。


 純真無垢だからこそできる方法だ。たぶん……。

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