第6話 ん~マ〇ダム
家畜小屋の掃除を終えて家に戻ってくると、眠っていた腹の虫を一瞬で目覚めさせるくらいの匂いが漂っていた。
「今日は肉まんか」
前世で例えるならこの今世は中世時代であり、水車が最新技術と言う感じの科学レベルだ。
ただ、魔法や魔道具のレベルは高い。ド田舎じゃまず見ることはないが、王都では魔石を燃料とした自動車(貴族の乗り物だがな)があり、飛空船が飛んでる。照明器具やら冷蔵庫と言った日常品(富裕層の話な)もあるそーだ。
まあ、都会で売っているものの、どんなもんかまでは知らねぇが、三つの能力があるオレに掛かれば冷蔵庫など造作もねーし、日常品も負けてねー。調理器具は王宮の厨房より豊富だろうよ。
昔(前世)は、スーパーの見切り品が主食だったオレではあるが、煮る焼くの食事は余りにも辛く、淋しいものだった。
厳しい世界(時代)ではあるが、食材に関しては恵まれた土地だ。味噌みたいなものもあればトマトソースもある。
油が取れる植物に香草もいろいろ生えている。海では魚はもちろん昆布も貝も取り放題。山では鳥に兎に猪が狩れるから肉も困らない。オークなど見た目はアレだが結構旨い。ちょっと遠いが竹もある。今なら竹の子取り放題だ。
パンが主食なこの時代ではパン屋でしかパンを買えない決まりがある。麦が税金なので、できたものは全て国のもの。それを管理しているのがパン屋なわけだ。まあ、なにごとも抜け道はあって、商業ギルドに属している店(この村では雑貨屋だな)から小麦を買うことができるのだ。
そう。パンが食えないのならお菓子を食えば良いじゃないと言った昔の人は偉大である。確かにそーだ。パンが食えないのなら他のものを食えば良いのだ。
肉まんしかり。ナンしかり。パスタにラーメン、クッキーしかり。料理がダメなオレでも作り方ぐらいは知っている。なら、できる者に教えればイイじゃない。
なんて軽い気持ちで妹に教えたら、才能開花。僅か八歳ながら前世の肉まんにも負けぬ肉まんを作り出してしまったのだ。
由緒正しい村人なのに、なんなの、その無駄な才能は? なんて言う突っ込みはノーサンキュー。生かそうが殺そうが、それは本人が決めること。妹が料理人になりたいと言うならなればイイし、このままがイイと言うのならこのままでいればイイ。好きに生きろだ。
「あ、あんちゃん。もうちょっと待ってな。もうすぐできるから」
ド田舎の家には不釣り合いな台所(竈かまど二つに湧水を利用した流し台に氷結界の冷蔵庫に調理台がある)で生き生きと料理に勤しむマイシスター。
「イイよ、急がんでも。オカンもまだだしな」
日本風家屋の我が家は土禁であり、居間には炬燵がある。冬は雪は降らないが氷点下になるので暖炉もある。
その暖炉から土瓶を取り、近くにある茶碗に中身を注ぐ。
コーヒー紅茶はさすがにないが、薬茶なら数種類ある。タンポポみたいなものもあるのでコーヒー(モドキ)も作れる。今はこれがお気に入りでよく飲んでいる。
ん~〇ンダム。
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