034「どっかで見たことがある気がする-4」

…………こんだけ走れば大丈夫かな?


スカートだと走りにくいし、距離も離れたからもう歩きに変えたい。


「つ、着いたのですか?」


「もう少し先になりますが、ここまで走れば衛兵にも見つからないと思いますので歩いていきましょう」


少し息を乱しているシャリスティア様の質問に答える。リアリス様も息を乱してはいるけど大丈夫そうだね。


ん?リアリス様と目があったけど何かあったんかな?


フードの奥からじっとこちらを見つめているというか、睨んでないそれ?


急に走らせたことを怒っているのかな?あのまま男共を放っておく訳にはいかなかったから許して欲しいんだけど。


「聞きたいことがある」


俺に?


「名前、まだ聞いてない」


「そういえば、まだ聞いていませんでしたわね」


そういえば言ってなかったなー、これ素直に答えるべきなのかな?


ヴィルって男の名前だし、偽名でも使う?


でも、もうすぐ店に着くしレーラさんに会ったら偽名だってバレるよな。


どうしたもんかなー。


「あと、もう一つ」


まだあるの?いま偽名にするか本名にするかで悩んでるんだけど。


「……なんで、女の子の恰好してるの?」


………………………………は?


「リアちゃん、どういうこと?」


「その子、男の子だよ」


うっそだろ!?何でバレての!!??


驚愕した目でシャリスティア様がこっち見てる。そうだよねー、俺も鏡で自分の姿見た時は誰だこいつ?って思ったし。


「…………………どう見ても女の子にしか見えないけど、本当に男の子なのリアちゃん?」


「うん」


さて、これは誤魔化すべきかな?


性同一性障害なんですって誤魔化してもいいけど、それはそういう人に何か申し訳ないし。


かといって、趣味で女の子の恰好してますって言ったら……変態だな、うん。


というか、何でわかったんだろ?


「何となく」


何となくって、勘なのに断言したのか。


…………まぁ、いいや。


「名乗るのが遅れてしまい申し訳ありませんでした。自分はヴィルといいます。いまは訳あってこのような恰好をさせられていますが……性別は男です」


誤魔化すの面倒だから素直に話しましょ。


「そういう趣味なの?」


いや、違うからねリアリス様。


「御二方がご用事があると仰っていた薬屋の店主のレーラは自分の師になります。この格好は……師の趣味というか、悪ふざけというか、約束を守れなかった罰というか」


うん、何でこの格好させられたのかは俺もわからん。


「騙すつもりなどはなかったのですが、流石に言い出し辛くここまで黙っていました。本当に申し訳ありません」


頭を下げる。


「い、いえ。その、あの……本当に男の子なのですか?」


そう言われましても、男だから男としか言えないんですよ。


触らせて証明する訳にもいかないし、そんな変態にはなりたくないし。


でも、何でそんなこと気になるの?


「その、わたくしよりも可愛いので……」


褒めてるのかそれ?この姿を可愛いって言われてもちょっと落ち込むんだけど。


まぁ、シャリスティア様は可愛いっていうより美人って感じだから可愛さとかに憧れるのかな?俺より背が高いし……。


リアリス様は逆に可愛いって感じだけど。


その後は、店まで歩きながら話をしてたんだけどまとめるとこんな感じ。


シャリスティア様とリアリス様は従妹同士で、親同士も仲がいいので姉妹のように育った。


2人がレーラさんの店に用があったのは、シャリスティア様のペットが病気になったので薬が欲しかったから。


貴族なのでペット専属の薬師というか獣医みたいのはいるのだけど……あまり効果が出ていないらしくペットは弱っていく一方。


どうしたもんかと悩んでいたら、以前シャリスティア様が隣の領にあるリアリス様の家に行くのに護衛依頼を受けたエルフ族の冒険者が薬屋を営んでいることを思い出した。


その冒険者がレーラさんで、エルフ族が作る薬ならもしかしたら!と家族や護衛に相談する前に黙って出てきてしまったとのこと。


本人達はもうすぐ王都にある学園に通わなきゃいけないらしく、今日を逃すと自由になる時間もなく、学園に行けば家に戻れるのは数か月は先……最悪ペットとは死に別れることになるかもしれないから居ても立ってもいられなかったとのこと。


シャリスティア様もリアリス様も、以外に猪突猛進系なのかな?


ちなみに、俺がレーラさんの店で働いていることや冒険者をしていることを話すとちょっと驚いていた。


自分達と似たような年齢の子供が冒険者をしているというのに驚いたらしい。


んー、そういえば同い年くらいで思い出した。


「もしかして、シャリスティア様とリアリス様ってこの間の神託の儀を受けられました?」


何かこの2人を前に見たことあるなぁって、どうにも引っかかってたんだよね。


「うん、受けた」


「ええ、受けましたわ」


あぁ、やっぱりあの時の貴族の娘さんだったのね。


それが何かあるのって顔してたので、その儀に俺もいた事を伝えるとまた驚いていた。


「ヴィル様は同い年でしたのね」


「シャリスティア様、自分は平民なので様付けは辞めて頂けませんか」


あと、名前じゃなくて家名で呼ばせてくれないかな?さっき、家名じゃなくて名前で呼んで下さいとか言われたから名前で呼んでるけど……正直家名で呼びたい。


「そうは言われますが、わたくし達の命の恩人ですし」


「ですが」


「わたくしが好きで呼んでいるのです、ヴィル様はお気になさらないで下さい」


……何度目だこのやり取り。


さっきからちょいちょい訂正するんだけど、直してくれる気配がないぞ。


「……やっぱり、同い年なんだ」


ん?


「リアリス様、どうかされましたか?」


いま、ボソッと何か聞こえた気がするけど。


ふるふると首を振って何でもないアピールしてる。


まぁ、いいや。


「あぁ、ここですよ」


そんなこんなで話してたら店に着いたので、ドアを開けて2人と一緒に中に入る。








あ、やべユニークスキルのこと口止めしてねぇや。

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