027「俺が倒れた後のこと-2」
「それで、結局ヴィルのこれはどういうことになるのよ?」
「…………………」
「ちょっと、聞いてるの?」
「ん?あぁ、聞いているさ」
「………………ヴィルに近寄って何をする気?」
「そう警戒するな、確認するだけだ」
「確認?」
「あぁ……………やっぱりか」
「やっぱりって、何かわかったの?」
「このガキの怪我が治ったのはユニークスキルだ」
「それ本気で言ってるの?」
「本気に決まっている。わざわざお前に嘘をついてどうするんだよ」
「ユニークスキルは万能じゃないのよ?それは転生者や転移者がこの世界の機構を組んだ貴方も知っているはずだけど?」
「俺は力を貸しただけで他は知らんよ。ほぼ全てゼンがやったことだ」
「でも」
「まぁ、待て」
「……何よ?」
「とりあえず聞くが、お前ユニークスキルについてどれだけ知っている?」
「……それ、いまさら聞かなきゃいけないこと?」
「ユニークスキルに対しての認識が間違っていたら、そこから説明する必要があるだろうが」
「異世界転生、異世界転移してきた人に対する特典でしょ?」
「………間違ってはないんだが、正しくもないな」
「どういうことよ?わたしは彼からそんな感じの説明を受けたけど」
「そもそも、ユニークスキルが何故元異世界人にしか発現しないかってことになるんだがな……魂の質が違うからだ」
「魂の質?何よそれ」
「ゼンが言うには、元異世界人……地球人の魂とこの世界の奴らの魂は似ているが実際は全く別物なんだとよ」
「………………」
「『細かく説明するの面倒なんだけど、この世界に来た地球人の魂の形や色に応じて特殊な能力が発現するように機構を組んだから。本人しか使えないんだしユニークスキルって名前でいいよね?』って俺は前に言われたよ」
「………………」
「だから特典ってのは決して間違いではないが、正しくもないわけだ」
「………………」
「で、ここからがガキの話になる訳だが」
「……………えぇ」
「さっきの力はユニークスキルで、このガキは転生者だ」
「なんで言い切れるのよ、ヴィルの指輪が高度な魔道具である可能性もあるんじゃないの?」
「それはない」
「何でよ?」
「その指輪だがな、そいつは
「
「ユニークスキル専用の装備品だ」
「………知らなかったわそんな物があるなんて」
「だろうな、俺が知る限りでは
「………は?」
「別の話だ。ガキの話を続けるぞ」
「まぁ、いいけど」
「そもそも、
「じゃあ、やっぱり彼がヴィルの関わっているってこと?」
「
「……………そう」
「ちなみにだが、加護に関して予想は付く。このガキの異常性はお前も気づいているな?」
「……ヴィルは異常なんかじゃないわよ」
「普通のガキは、手足切り飛ばされても取り乱さずに反撃の為に魔法を組もうとはしない。お前も異常だってさっき言ってただろうよ」
「それは………そう、だけど」
「感情を制御する類の加護を与えられているんじゃないかとは思っているが、実際はわからん」
「感情を制御する?」
「生命の危機に瀕した時にも普段通りに振舞えてしまう。そんな加護だ」
「それって加護として必要なのかしら?出来る人には簡単に出来ると思うのだけど」
「逆に言えば出来ない奴には全く出来ないことだ。お前の本気に近い殺気を平気で耐えて動けるガキは普通はいない。死ぬような怪我を負っているのに反撃出来るガキが異常じゃないなら、そういう加護を与えられているとしか思えんだろう」
「……………………………」
「それ以前に、このガキはおかしな部分が多すぎる」
「……………どういうこと?」
「俺やお前が考えても答えの出ない存在って時点で相当おかしいだろうが」
「……………………………」
「ゼンと同じ魔力を持っている理由も不明。このガキに加護を与えたのかも正確には不明。なんでこのガキに
「……………………………」
「結局、ゼンが関わっていること以外は何もわからんということだ」
「……………………………」
「なんだ、不満か?」
「えぇ、不満と言えば不満よ」
「まぁ、諦めろ。ゼンに関してだけ言えば、俺でもあいつの考えていることはわからん」
「…………そう、まぁいいわ」
「なんだ、帰るのか?」
「例え彼が関わっていたとしても、この子は私にとってはただのヴィルだもの」
「………本当に甘いなお前は」
「何とでも言いなさい。ヴィルが転生者でユニークスキルを使えて、彼がヴィルに加護と
「そうか」
「えぇ………ヴィルを連れて帰るわ」
「送ってやろうか?」
「お断りよ、前にも言ったけど私は貴方を仲間として信用はしていても信頼はしていないの」
「そうかよ」
「まぁ、ヴィルの事を色々と考えて教えてくれたことには感謝するわ。それだけは、ありがとね」
「…………………ツンデレなのかお前?」
「彼みたいなこと言わないでくれるかしら?鳥肌が立つから」
「…………………はぁ、まぁいい」
「前にも言ったけど、ヴィルに何かするなら本気で殺すからね?それだけは覚えておきなさい」
「…………………………………行ったか」
「改めて思ったが、あいつはゼンを信用しすぎていないか?」
「その気持ちはわからんでもないが、あれはそんな良心的な存在でもないだろうに……」
「
「俺もお前も、特別な何かを与えられた奴の結末が碌なことにはならないことくらい………死にたくなるぐらいよく知っているだろうに」
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