014「この指輪は一体何なんだろう?-1」
「…………………疲れた」
孤児院に帰って来て真っ先に自分のベッドに倒れ込む。
神託の儀で何やら異変が起きたってことは既に街の人達にも知られていたらしく、帰って来るまでに街の知り合いから色々と聞かれたから余計に疲れた。
貴族も関わっているから何処まで話していいかわからなかったし、隠しきれる物でもないから貴族から発表があるまで待ってくれって適当に誤魔化して来たけど、みんな興味深々で聞いてくるから帰って来るまで時間がかかったし。
「…………さて、結局この指輪は何なんだろうか?」
ベッドが4つ並んだ部屋には今は俺しかいない。この部屋を使っている俺以外の子供は仕事に行ってたり遊びに行ってたりしてるから、今のうちに考えておくべきだろう。
「やっぱり、外せないか…」
指輪を弄ってみるが、やはり動く様子はない。
「んー、やっぱり隠した方がいいよなこれは」
孤児の子供である俺が指輪なんぞ身に付けてたら奇妙でしかない、盗んで来たとか言われるのも嫌だし。
あー、そういや剣の訓練するときに着けてた皮の指抜きグローブがあったな。それで誤魔化せるかな?
ベッドから起き上がり、俺用の小さなタンスを漁る…あった。
「これなら、なんとか誤魔化せるかな?」
グローブを着けてみると指輪がある辺りに不自然な盛り上がりがあるけど、ぱっと見られるだけなら誤魔化せそうだ。
グローブを外して再びベッドに横になる。
さて、改めて外せない事はわかったし。
とりあえず、グローブを着ければ誤魔化せそうということもわかった。
でも、四六時中グローブ着けてんのも面倒だしなぁ。
外に行く時だけグローブ着けてればいいか。
身内とかには「神託の儀を迎えた記念に自分にプレゼントしました」とか言っとこう。
「しかし、これが何なのか……何もわからんぞ」
小さな透明な石が埋まっているだけで横に文字とかが書いてある訳でもないし、何なんだ本当に?
「鑑定の魔法とかあればわかるのかも知れないけど、この世界にはないんだよなぁ」
異世界系の物語によくある鑑定の魔法はこの世界には存在していない。それ以前に鑑定の魔法が存在していたとしても魔法が何故か上手く発動しない俺には関係ないことでもある。
「そいや、魔法のことも考えなきゃならんのだよなぁー」
一年くらい前に二次性徴に入り出したのを確認した俺は、レーラさんに頼んで仕事の合間に魔法も教えてもらっている。
人間に比べて魔法への適性が高いエルフのレーラさんから教えを受ける事が出来るなら、独学で魔法を鍛えるよりはずっと良いと思ったからなんだが…。
俺は何故か上手く魔法が使えなかった。
レーラさんに魔法を教えて欲しいと頼むと、レーラさんは俺を冒険者ギルドに連れて行き、魔法適性と属性適性と魔力量を測る魔道具をギルドに頼んで使わせてくれた。
結果は魔法への適性はちゃんとあったし、魔力量も子供としては普通の量があり。そして、かなり珍しいことに全ての属性へ高い適性があることがわかった。
普通は得意な属性や苦手な属性みたいなのがはっきり分かれていたり、使えない属性がいくつかあったりするらしい。
レーラさんもこの結果にはかなり嬉しそうにしていたから、本当に珍しいかったのだろう。
ちなみに、この世界の魔法の使い方は簡単に言ってしまえば粘土工作みたいな感じだったりする。
魔力という無色透明な粘土を好きな形にこねこねして、属性という色を塗るフルスクラッチのフィギュア作りみたいな感じと言えばいいのかな?
火の魔法を使いたいなら、魔力という粘土で火の形を作り、火に見えるように色を塗ればいい。
魔法への適性ってのは、粘土をこねこねして色々な形を作れるか出来るかどうかってことで、適正が高ければ色々な魔法が使える。
魔力量ってのは、その人が持っている粘土の量で多ければ大きな物を作れるし、沢山作ったりも出来る。
属性への適性ってのは、粘土に色を塗る為の絵の具を持っているかどうかってこと。
俺は普通の人よりも沢山の種類の絵の具を持っているということだった。
そんな感じだったので俺はウキウキしながらレーラさんから魔法を学んでいたのだが、すぐに挫折した。
何をしても魔法が上手く発動しなかったのである。
これにはレーラさんも原因がわからないって首を傾げていた。
自分の身体から魔力を適量取り出す工程も、魔力を形にする工程も、属性を変える工程も問題なく出来ているのに、それが魔法として発動はしない。
レーラさんが言うには「んー、頭の中ではちゃんと設計図も完成予想図も出来てるのに、それを実際に作ることが出来ない人みたいだねー」だそうだ。
前世で言う最高にエロいイラストを考えたけど、それを脳内から出力する技術がないってやつみたいだよな。
神絵師の利き手を食べれば技術が上がって解決するってやつなら、この場合は何を食べれば解決するんだろうか?
一応、訓練すれば出来るようになるかもってことらしいので色々と試してはいるのだが今のところ進展は全くない。
「とりあえず、魔法のことは置いといて。今はこれについて考えるか」
手をくるくる回して色々な角度から指輪を見てみるが、やはり手かがりになりそうな物はなさそうである。
「となると、あの機械みたいな声が言ってたことから推測してくしかないのかなぁ」
神様(仮)のせいで印象が薄いんだけど、何を言ってたっけなぁ…………。
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