012「神様からの偉い御告げ-1」
「…………ふぁあ、眠い」
どうしてこう偉い人の話ってのは眠たくなるのだろうか?
俺が住んでいる孤児院の横にある教会より何倍も大きくて立派な教会。
あーあー、なんかみんな緊張で顔が強張ってるなぁ。
周りを見渡すと結構な数の子供達がガチガチに緊張した顔で座ってお偉いさんの話を聞いている。
まぁ、内容が頭に入ってるかどうかは知らないけど。
普通なら孤児の俺達や街に住む庶民の子供達はこんな立派な教会なんかでわざわざ神託の儀なんかやらない。
孤児院の横にある教会でやれば十分だし、去年はそこでやっていた。
なのに今年の神託の儀に限ってはこんな立派な教会でやっているのは何故か?
理由は簡単、貴族様の都合である。
「まったく、貴族様の見栄っていうのも大変だーね」
子供達の最前列にわざわざ特別に置かれた綺麗で高そうな二つの椅子。
そこに座ってる二人の女の子、この街の領主の娘さんとお隣の領主の娘さんらしい。
昨日孤児院の院長から細かく話をされたけど、貴族の爵位なんて知らないし、興味もないから聞き流したからどれだけ偉いのかとかは覚えていない。
なんか、この街の領主とお隣さんの領主は仲が良いらしく、その娘達も同い年で仲が良いらしいから一緒に神託の儀をやろうって感じになったらしいってとこは覚えてる。
で、俺達街の庶民の子供達は二人を祝うのに強制的にギャラリーにされたと。
そりゃ、みんなガチガチに緊張するよね。貴族なんて普通に生活するだけなら直接関わらないし、娘とはいえ貴族様の晴れ舞台を汚したりしたら悲惨な結末になるのは目に見えてるし。
前の方を見ると高そうな服を着た人がちょいちょい座っていて、その付近には護衛っぽいのが固めている。
まったく、貴族様の娘二人とその家族だけでやってくれりゃいいのに。本当に面倒くさいことこの上ない。
「――――――――――――――」
あ、やっとなんか偉い人の話が終わったっぽい。
服装からするとこの教会の偉い人っぽかったけど、教会の役職も別に興味ないのでよくわからない。
院長が話してた今日の儀式の流れだと、教会の偉い人が話をした後に娘さん二人が祭壇まで行って神様に感謝の祈りを捧げるんだっけ?
貴族の娘さん二人が立ち上がって祭壇の方へ歩いて行くのが見えたから、合ってるっぽい。
「……しかし、異世界に生まれてから多種多様な色をした髪の毛を見てきたけど、青色の髪は初めて見るな」
貴族の娘さんは二人とも晴れ渡った空みたいな綺麗な青色の髪をしている。
髪と同じ空色のドレス姿でゆっくりと祭壇の方へ進んでいく。
祭壇の前には貴族の娘さんと似たような髪色をした高そうな服を着てるおっさんが二人いて花を渡しているけど、父親なのかな?
花を受け取った二人の娘さんはそのまま花を祭壇に捧げ、膝を付く。
後ろからは見えないけど、きっと手を組んで祈っているのだろう。
「院長から聞いた通りなら、これで面倒な儀式も終わりだし。あとで、冒険者登録しにギルドに行かなきゃなぁ」
貴族様と一緒に儀式をやるなんてどうなること思ったけど、退屈なだけで何事もなくてよかったよ。
『―――
…………声が聞こえた。
周囲を見渡すが俺以外の子供には声が聞こえている様子がなさそうってことは、この声は俺にだけ聞こえてる?
聞こえてきた言葉の意味を考えようとした途端、教会内に光が溢れた。
突然溢れ出した光に驚いたのだろう、教会内のいたる所から悲鳴が上がる。
『―――
機械みたいな無機質で感情のない声が何か言ってるけど、悲鳴やらなんやらで騒がしいのに声だけはしっかり聞こえて来るってことは頭の中に直接聞こえてるのか?
これは噂の「こいつ、脳内に直接!?」ってやつなのか?
『―――
少しずつ光が収まってくる、聞こえてくる声は未だによくわかんないことを言ってるけど、悲鳴やらなんやらが騒がし過ぎて考えてる暇がない。
『―――
光が完全に収まり、眩んでいた視界が少しずつ戻ってきた。
他の連中も少しずつ回復してるのだろう、ガヤガヤと騒がしいけどさっきまでの悲鳴が上がり続けている状況よりはマシである。
「………とりあえず、状況を確認するか」
光は祭壇の方から溢れて来ていたから、何かあったとしたらそっちの方だろ。
ないとは思うけど、悪党が貴族の娘さんを誘拐する為に目眩しに魔法を使ったとかって可能性もなくはないから状況の確認だけは必須だ。
まぁ、普通に考えたらこんな警備が厳重なとこにわざわざ誘拐なんぞしに来る馬鹿はいないだろうけど。
えぇと、貴族の娘さんは二人とも無事っぽい?なんか二人して上を見上げてるけど何かいるのか??
……………何かいたよ。
祭壇の上にふわふわと女の人っぽいのが浮かんでるんだけど、何あれ?
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