好きと言えたらいいのに
松浦 由香
第1話 中3秋
秋の―。運動会が終わり、日が短くなってきて、放課後の教室はオレンジ色で溢れていた。
一か所だけカーテンを開けたままにして、その側の自席で日誌を書く。
今までなら、「そんなもの、まじめに書かずにさっさと終わらせよ」と言って、相棒となる男子はさっさと帰っていった。
べつに、まじめな性格でも、几帳面な書き方をしているわけではないが、こういうものにきれいに書くのは好きだった。最近になって、あれほど書かれると、その次が書きにくかった。ということを知り、申し訳なく思ったが、当時は解らず、文字で頁を埋め尽くしていた。
「まだ書いてたんだ」
入ってきたのは、この春転校してきた中村
「相変わらず、
妙子は顔を上げて前に座った達樹君を見る。
なんてきれいな横顔なんだ。とほれぼれしそうなほどあばたもニキビもないつるんとした肌、長いまつ毛、ちょうどいい厚さの唇は血色がとてもいい。
妙子は椅子をひっくり返す勢いで立ち上がる。
「本気だよ」
見上げてくる達樹君から逃げるように鞄を掴んで教室を出た。
淡い、淡い中学三年の秋の思い出―。
「俺、妙子のこと好きだよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます