9歩

あの後なんとかラルア兄さんを誤魔化して庭へと向かった。


上手く扱えるかはわかんないけど、なんとなくのイメージは出来てるし危なくなったらジャグがいるし大丈夫なはず!

根拠はないけどね!


むんっと意気込む俺にジャグはおろおろしながら「本当に大丈夫ですか?」と話しかけてきた。


む。ジャグってばまだそんな事言うの。



「…すごく、すごーーーーーーくたのしみにしてたの…」

「フェリチタ様…」

「…それに、あぶなくなっても…ジャグが、たすけてくれる…でしょ?」

「勿論でございます!!!!何があっても、お守り致します!!!!」



ずずいっと俺に近づいて手を握りながら言うジャグに内心引きながらもーージャグってばパーソナルスペースどうなってるの?ってぐらい近いーーにこっと笑みを浮かべて「ふふ、ジャグだいすき」と頬に軽いキスを送った。

これするとね、ジャグってばでろでろ~ってなっちゃうの。面白いから何回でもやっちゃう。

それに、これはよくお父様とお母様が熱が出てはぁはぁ言ってる俺によくしてくれたおまじないでもある。

『大好きな人に気持ちを込めておくるのよ』って、お母様が言ってた!


よし、ジャグがでろでろ~ってなってる間に練習するぞー!



「んーと…まずは、火をだしてみよう!」



火を連想して……。



「ファイアー……わわ!でたっ!…じゃあ、つぎは水?」



ぽっと小さく手のひらに炎が出て思わずぴょんぴょんと飛び跳ねる。

そのまま基本的な属性の魔法を出し、俺は満足気にふーっと息を吐いた。


日常生活で使用される魔法は大体の人は出せるって本に書いてあったけど、魔法の世界って本当に凄いなぁ~。

だけど、攻撃や防御は自分の持っている属性でしか出来ないらしい。

まあ、危険だし当たり前だとは思うけど…日常生活に困らないんだったらなんでもいいや。


攻撃魔法とか、防御魔法とかは自分の属性が判明してからにしよう。楽しみにしてたけど、危ないもんね。

これで怪我しちゃって禁止なんて言われたら………!!


因みに属性がわかるのは、学園の入学式の日らしい。ステータスがわかるのも。



「いま3さいだから……あと、1ねんかぁ…」



半年に一回誕生日を迎えるから人間より早いとはいえ、後一年…短いような、長いような。

ぽふっとふかふかの芝生に寝転がり空を見上げる。

……この庭は庭師の人以外あんまり人が近寄らない場所で、俺のお気に入り。



「……はやくおとなになりたいなぁ…」



ぽつりと意味もなく呟いた言葉に復活したジャグが「今のままでも十分ですのに、もっと魅力的になられると…」と語り始めたので無視してぼーっと流れる雲を見つめていた。




早く大人になれば、誰にも迷惑かけずに生きられるのに。


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