6歩
「んと、だぁれ?」
「フェリチタ様、私です。ジャグでございます」
「…ジャグ?」
「はい、左様にございます」
うん。ものすごくイケメンである。うぅ、俺の顔がもっと霞む…平凡にさえなれないとは…。
「ジャグ、なんでお顔のあれ、とったの?」
「…あぁ、フェリチタ様の顔をもっとちゃんと見たくて」
「…ぼくのお顔なんて見ても、なにもたのしくないでしょ?」
首を傾げて何言ってんだこいつと言った風に問えば、俺の肩をガシッと掴んで「いいえ!!!」と物凄い気迫で迫ってきた。怖い怖い怖い。やめてよ。精神年齢が実年齢に伴ってないといえども、怖いものは怖いんだから!!
「フェリチタ様のこの、ぱっちりとした目…愛らしいピンクに染まるぷっくりとした頬!そして、うるつやなぽってりとした唇…!髪色をとっても、目の色をとっても…!!何をとっても素晴らしいのです!!」
「…ぅ…」
やばい人だ…。口からポロリと出そうになったが、すんでのところで飲み込んだ。大人な俺。ぐっじょぶ。
この人俺が何歳がちゃんと理解してるんだよね?大丈夫?そういうご趣味でもあるの?
イケメンでもそんな興奮したようにはぁはぁ言ってたら流石に気持ちが悪いよ?
気持ち悪いが、流石にオブラートに包まないとかわいそうだ。
きっと仕事三昧で疲れているんだろうな。
そして、何重にもオブラートに包んで言った言葉は、
「…ジャグ、なんか、や」
だった。
精一杯の拒否、だ。
その言葉を受けたジャグといえば、この世の終わりといった表情で絶望に打ちひしがれていた。
…ぷくく、ちょっと面白い。
「フェリチタ様が…私を…いや……」
「……」
「あぁ、もう生きる意味がなくなってしまった…フェリチタ様に必要とされない私など…」
「じゃ、ジャグ!?」
「…フェリチタ様は、お優しいのですね…お役御免の私にもまだお声をかけて下さるなんて…」
ぶつぶつと独り言を言い始めたジャグの雲行きが怪しくなってその名を呼べば、青白くなった顔をこちらに向けて微笑んだ。
…こ、この人本当に危ない人だ…。
んもう、面倒だなぁ!
「ジャグ、おれ、ジャグがきらい「や、やはりそうなのですね…」…じゃなくてぇ!きらいなわけじゃなくて、おれの顔なんて、兄上たちみたいにきらきらしてないんだよ?…きっと、ジャグは ひいきめ でみてるから、そう言ってくれるだけで…」
舌足らずで喋りにくいが一生懸命伝えるがジャグは納得していないようだ。なぜ。
あと、嫌い、というワードは今後あんまり使わないようにしよう。かわいそうとかではなくて、ちょっとうざったい。一々返すのが。
それに、兄さんたちみたいにきらきらした美形ならまだしも、俺の顔だよ?
鑑賞するに値しない顔なのに、ジャグったらさぁ。
なんて文句を交えて言えばジャグは「…なるほど、ご理解されていないのか…」なんて呟くし、ご理解されてないのは、ジャグの方ですー!
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