化粧
まず断っておきたいのは、今回私が書くのはSNSなどでもよく見かける『大学に入ったら/社会人になったら化粧をしないと非常識だと言われるのはなぜだ』という話ではない。
化ける、という字の入る化粧。まさに化粧次第で人は化ける。多くの女性は「化けた」ままで学校に行き、出社し、友人と遊び、恋人と愛を育む。社会や他人に見られている「自分」は「化けた」姿なのである。今までで何度か「化粧を落とした顔は見ないで!」という友人にも出会ってきたが、果たして私は「友人」と顔を合わせていたのだろうか。私は「化けた」友人と話していたのではないだろうか。
化粧をすると嫌に緊張する。慣れていないのもあるが、化粧が崩れるのを気にして顔を触れることができない。心のどこかで「化粧をしているのだからきちんと行動しなくては」などと思うこともある。いつもと違う、自ら制限した行動、心情。自分が自分ではないような、大げさかもしれないがそんな気がして化粧に化かされている気分になる。
しかしメイク落としの広告などを見ると化粧を落とすことで自宅に帰ってきた感や社会から解放され、緊張の解けるような描写をするものが多い。裏を返せば化粧をした自分は社会用の、他人から見た自分に「化けた」自分であり、素の自分を守るもので、メイク落としによってその鎧を脱いでいるのかもしれない。
化粧とは自らを「化かす」ものなのか、他人を「化かす」ものなのか、素の自分を守る他人から見た自分に「化ける」ものなのか。
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