第2話、卵が孵ったぞ!!……あれ?殻が……
次に意識が覚醒したのは暗闇の中だった。
というか、すごく狭い空間にいる気がする。
ここはどこだろう。
死んだことは覚えている。残念な神様と対峙して転生ガチャを引いたのも覚えている。
ということはここが転生先か。
人間として転生するなら母体から産まれるが俺の転生する種族はひよこだ。
鶏は卵を産んで孵化させるが……まさか殻の中か?
試しに身体を動かそうとしても狭すぎて中々動かない。
だが身体の一部に力を入れるとピシッと何かヒビが入った。
うん。殻の中だな。
産まれるにはこの殻を破らなければいけない。
だが生半可な力ではヒビを入れるのも無理そうだ。
転生したばかりで未熟な肉体だからか思うように力が出ないし、これは骨が折れそうだ。
どうにか全身を使って殻を破ろうと試みるがほんのちょっとずつしかヒビは入らない。
すごいな。鶏は皆この試練を突破して立派な大人になっていくのか。
飛べもしない役立たずな鳥もどきと思ってスマン。
食用にしかならない家畜と思ってスマン。
今は俺がその家畜一歩手前さ。
どれほど時間が経ったか定かではないが、いつまでもちまちま殻にヒビを入れるのも飽きてきた。
手っ取り早く殻を破る方法はないのか?
そうだ、前世から継続した魔力は使えるだろうか?
感覚を研ぎ澄ませてみると前世と変わらぬ量の魔力が全身を駆け巡っていることに気付く。
よし、魔力は使えそうだ。
だが成熟していない肉体でいきなり魔法を使うのは何かと危険だし、そうなると方法はひとつしかない。
早く異世界をこの目で確かめたい一心で魔力を練る。
殻を破るのに必要そうな分の魔力を練り上げ、それを一気に外に放出した。
パァァァンッ!!
すると全身を覆っていた卵の殻が粉砕した。
魔力の衝撃波で卵を割るつもりだったのだが、どうやら力を入れすぎたようだ。まさか粉砕してしまうとは。
急にクリアになった視界に眩しくて目を堅く閉じる。
人間の頃と同じ感覚で思わず手で遮ろうとしたがそれは叶わなかったからだ。
数回ほど目を瞬き、ようやく外の光に目が慣れてきたところで勿体ぶらずに目を見開いた。
「…………っ!!?」
視界の先に広がる光景に、俺は絶句した。
どうやらフェイドスという世界は、元の世界の常識を悉く覆す気満々のようだ。
まさか誕生した瞬間から驚かされることになるとは思わなかったぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます