第4話 地面三郎オンステージ

 しかし、警察が掴んでいる情報はここまでである。

 モグラのはったん率いるもっこ諜報部はそれに加え、世界中をいまや騒然とさせている地球最大の危機「もっこ」までがこれに関係しており、さらにニッキーねずみと極悪銀河団を中心にして西東京ディズニーランドとも繋がっていると確信していた。


 「地球全体会議―もっこ25」のオープニングセレモニーには、「地面三郎じめんさぶろうオンステージ」が予定されていた。


 今日は会議の最終打ち合わせに先立ち、ひと通りのリハーサルが行なわれることになっていた。しかし集会参加者の規模が分からないため、リハーサルは公開で行ない、大まかな参加人数を把握することになっていた。


 地面三郎は、二年前に「おらが村さの尻小玉しりこだま」で華々しくデビューし、いまや歌謡界の盗塁王とまで称される若手歌手である。西は三鷹から東は吉祥寺まで、ほぼ世界中から沢山の生き物たちが井の頭公園特設ステージに集っていた。  


 実際、地球最大の危機なんかに関心を持っている者は少ない。それははったんも承知していた。そこでいまや全国的な人気を誇る地面三郎を、ある意味で人集めの為に、大金をはたいて呼んだのだ。


 オープニングリハーサルの幕が上がった。

 マイクを持ってステージに立つ地面の姿が現われるや、大観衆の歓声、振り回されるペンライトのリズムとともにあの名曲、皆さまお待たせの「おらが村さの尻小玉」のイントロが流れた。

「遠い故郷を思い作りました。夏の午後、母と歩いた恵那えなの道、決して忘れはいたしません。そう地面三郎さんは熱く語ります。それでは聞いて頂きましょう。大ヒット曲、おらが村さの尻子玉です」

 司会の声が観衆の心に突き刺さり射貫いた瞬間、地面三郎は歌い始めた。


「グッバイ、思いで~ 春の田んぼの、しりこ~だ~ま―

河童の村山く~ん、駅舎の落書き、しりこ~だ~ま―

なつかし多摩の浦、アメンボ遊ぶ、し・・・」



(続く)

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