400字詰の小宇宙

宇宙音

「GHOST SOUP」のラスト


《エピローグ》


「ねぇ。」


 僕は顔を上げて思わず彼らの背中に問い掛けた。呼び掛ける僕に二人は同時に振り向く。しかし彼らの足が止まることは無かった。何も言葉を用意していなかった僕は一瞬呼び止めたことを後悔したが、咄嗟に思いついたことを口に出していた。


ばないの?」


 間抜けた質問だと思ったが、僕は何かを言わなくてはならない気がして仕方なかった。


「翔んでくんなきゃ信用出来ないよ!」


 叫んだ僕に驚いたように顔を見合わせた二人だったが、一瞬で破顔する。くるっと前を向き直した彼ら。そして―。


 次の瞬間、二人はパタパタと飛ぶ真似をした。ニワトリのようにクルクル回りじゃれ合いながら小さくなってゆく自称『天使』たちに、僕は自然と笑みが零れた。


「ホントかなぁ。」


 疑わしげにそう呟いた僕の声は、もう彼らには届かないだろう。やがて坂を下ってその姿が見えなくなるまで、僕は二人の天使をいつまでも見つめていた。

 犬を連れた人が寒そうに身を縮めて目の前を通り過ぎる。12月下旬の、しかも一番冷え込む早朝だというのに全く寒さを感じないのは、手のひらに握りしめたままの、まだ温もりが残る白い羽根の所為だろう、と僕は確信していた。



END


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