第2話- 蛇の目傘

ある雨の晩。

夜道を歩いていると、道脇に生える柳の下に幽霊が居た。

初めはそうとは気づかず近寄り、悲しげな顔で佇む女に傘を差し出した。

女は静かに微笑み手を伸ばす。

傘を受け取ったその瞬間女は掻き消え、傘が地面に落ちた。


またある日の夕暮れ、急な雨に慌てて柳の木の下に駆け込んだ。変わらぬ雨足。

その時フッと背後に気配を感じる。

か細い声がこう言った。

主様、雨が。

驚き振り向くと、いつの間にか一本の蛇の目が柳の幹に立て掛けられていた。

これは、助かった。

一言礼を言い、帰路についた。

翌朝 玄関口を見ると、雨の露跡だけを残し、昨夜の蛇の目は跡形もなく消えていた。



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