第13話 終末の日常② 後光さんの憂鬱
シャルリアは無心だ。ただ無心に音楽に向き合っていた。
脳内革命をしたことで圧倒的に性能上昇していた。
精神や肉体が極限まで追い込まれ、
通常とは異なった
神々の1柱として相応しい、まさに神がかった動きを見せていた。
終末の世界で最後まで諦めずに咲き続ける
一輪の神花のように一層引き立っていた。
「シャル。歌ってないで私を助けなクチャッ」
神子候補生の一人「ミルエッテ」、勝敗はいまだ、連戦連敗だった。
「ドノバン隊長。最高の映像とった。映像確認よろ」
その光景は、
上級神『
その映像は
すぐに比較対象を際立たせる映像として神編集承認され、
神速のごとき速さで、神々のお茶の間の団欒に届けられた。
その4次元映像は神々のお茶の間を沸かせ、映像を流した
『
その時間帯で最高視聴率を獲得してしまった。
「皆、よくやった。今日の神酒は私の奢りよ」
「もう少しよ。ちゃんとやんなさい!!」
「「「了解」」」」
「「「「いやっほー」」」」
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
コバルトリス=リュオーラ端折ってコバちゃんは、
黒煙に完全に溶け込み、周りの事態の推移を見つめていた。
(赤ん坊達が泣き喚いておるのう。こっちにくるのじゃ。今助けるからのう)
流星のように真っ直ぐ流れていく
その
コバちゃんはさきほどまで、マリちゃんと語り合った脳裏世界の庭園にに
ごく普通の力の弱い下級神なら、自神の脳裏世界に神体を
その御力を使えば、多少の
(おーよしよし、もう泣かなくて良いぞ)
(お主は、今儂の脳裏世界に避難させたのじゃ)
(外の様子が落ち着くまでは匿うのじゃから、落ち着いてゆっくり休んでおれ)
(ぐすっあり・・かと‥ござ…い)
未だ放心状態の
当然のことをしただけじゃと、それからもやさしい念を送り続けると水晶室内の彼女神は、少しずつ落ち着きを取り戻していく。
脳裏世界はある程度時間を
コバちゃんは、その後も黒煙に溶け込み数個の
(それにしても、この空間に満ちている神威は、嫌な神の御力が篭っておって不快じゃわい)
(早く消し去りたいんじゃが、儂がやると目立つからのう)
この頃は神々が増えすぎて、あまたの世界を旅する放浪の暇神が多くなりすぎて、下界世界では、どこも大混乱が起きている。
コバちゃんの世界は、まだ安定している方だが、放浪の暇神達の餌食になった世界も数多い。
コバちゃんは、
(向こうに神達が集まっておるのじゃ)
(ちょっくら挨拶でもしておくかの)
コバちゃんの神眼で見つめた先には、
「おじゃましてすまんの」
「お主達には危害は加えんので安心せい」
「ここはどういった状況なのじゃ」
神達がコバちゃんを取り囲む前に言葉を切り出し、コバちゃんは自神がその場にいる神達の敵ではないよう腰を低くして振舞ってみた。
「失礼します。私はレングランダムと申します」
「御力の強い神とお見受け致します」
「出来ますれば、御力ぞえをおかりしたいのですが」
周りにいる神達は、突然御力の強い神の
コバちゃんが詳しく話を聞くと、避難するために事前に配られた水晶鍵を持っていない神の集団であることがわかった。
なんでも、賭け事で水晶鍵を担保にして、お銭を借りていたらしい。
水晶鍵は、避難行動をとる上でかかせない
御力の強い神ならなんとでもなるが、御力の弱い一般の神民では、そうもいかない。
命知らずもいい加減にしろと、コバちゃんはいいたかったが、コバちゃんは無言で通した。
神である為中々死ねない。死んでも生き返って復活する。
だが、下手をすると無限地獄に陥ってしまう。
もし、そのまま無限地獄が続くと、神の精神、神核に亀裂が入り、その亀裂が酷くなれば粉々に破壊されてしまう可能性が考えられるが、現実では実はよく見られる事態であり、有り触れている出来事であった。
神核が破壊されると次は廃神となり、死なない神として祀られるだけの存在となるのだ。
神核は再生するのだが再生するまでには気が遠くなるほどの年月がかかる為、
天神界では、
「まぁ仕様がないのう」、
と愚痴をこぼすとコバちゃんは御力を使い、直接安全局に神念話を送り緊急避難用神晶鍵を神数分用意して貰い、コバちゃんの脳裏世界宛に転送してもらった。
発送され無事脳裏世界宛に届いた神晶鍵を具現化し、コバちゃんはその場にいる神々に配っていった。
全て簡単そうにおこなっているが、世の最高神の1柱だからこそ出来る御力ずくな対処方針である。
この場にいる神達には当然出来ないことであるから、その場の神達は膝を折って感謝の言葉をコバちゃんにもういいと言うまでかけられ続けた。
代わりにコバちゃんは、神友になってくれんかのと頼んでみるがレングランダム達からは、
御力が強い神様と神友など恐れ多いと断られてしまい落ち込むコバちゃんであった。
1柱の神であるコバちゃんは、また駄目だったと落ち込んでいるなか、
レングランダム達はお礼を言いながら神晶鍵に神威を込めて危険地帯から次々に脱出していき、
そして、その場には誰もいなくなり、コバちゃんだけがその場に取り残されていた。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
水晶神宮殿内神講堂で荒れ狂う神威暴風嵐はまだ収まっていない。
むしろシャルリアの歌の強弱によってゆっくりになったり、
早くなったり、物が激しくぶつかり合ったりと神威によって、
簡単に操作できる画期的な舞台装置が
誰も操作出来る神物がいない為、
この舞台装置は、制御不能にも関わらず、
破壊的な側面が強く強調されているが、
儚い一面も兼ね備えていた。
それ一面は、黒煙の充満した暗黒空間に色とりどりの
光線のように綺麗に流れていき、その光が辺りを淡く照らす。
激しく荒々しい爆炎の炎の障壁が
地表の水晶の花びらが咲き誇って暗黒の闇空に儚く消える。
シャルリアが神子候補生の皆さんにお礼を述べる気持ちもわかる。
だが、言う相手が違う。感謝しなければいけない相手、
それは・・・・・・・
この素晴らしい舞台を作ったのが
一躍
ただ
事実この舞台は、最初から今に至るまで所狭しと、
それは、偶然もあったが、失敗もあった。
そして失敗は、成功に変わった。
ひとつの成功が全てを打ち消す。
そりて過去の出来事を見つめ、自らの行いを省みる。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
中級神である自神では、
周囲に張り巡らした神威の膜壁は突破出来ない。
その中でピカピカ隠れていた。
その結界内部で
4D映像で寂しそうに眺めていた。
「いいかげん話して説明しろ。ピカピカ光ってても、分かるわけねえだろ」
だが、
(味方いままで作ろうとしてこなかったわね)
(いつも消えてるから見えないわ)
(ピカピカしてるだけなら話かけてくれないわ)
(ピカピカいつも光ってたら、ウザがられて当然だわ)
(あなた今も消えてるんですけど)
ピカッ
(私の言うことを聞いてくれたら助けてあげてもいいわよ)
(何言ってるかわかんないけど、つまりこういうことでしょ)
(まずはこの現状の復旧とその後の事後処理でこちらに損害がないようにする)
(あとは、新たな
(出来るわよ。私貴神の上神よ)
(何回あんたたちの尻拭いしてると思ってるのよ)
・・・
・・・
(その前に貴神、私の神霊思念波の波長ぐらい覚えなさい)
(それと、後ろに引きこもってばかりじゃ、肝心な時に失敗するわよ)
(そうそう、今日は休戦日よ)
(それに私シャルと離れるなんて絶対にありえないから)
重たい言葉だ。とても重たい言葉だ。だが、シャルリアは喜びそうだ。
(向こうは私の分神霊で十分。本神の私が今
(つまり、最初から隠れて全部見てたのよ。最初から今までずっとね)
その前に
(それで、何か言うことあるんじゃない。)
・・
・・・
(はい。よく出来ました)
(ここで謝んなかったら、この前と同じ罰を受けてもらうつもりだったけど)
(成長したわね。ちょっと嬉しいわ)
(場が和んだところで後光さんの新しい罰を発表するわ)
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
「みんな、御免ね。私がお母さんに逆らったから、みんな、御免ね、許して」
神子候補生エマメルダは、震えている。外は灼熱の地獄のように燃え盛っている。
外の風景を見たエマメルダは、変わってしまった世界に恐怖した。
視界に入ったその世界に震えが止まらず、目を覆って縮こまる。
それからしばらくの間、石のように体を丸め込んで頭を両手でしっかり覆い、
目を瞑り俯きながらブルブル震え続けていた。
エマメルダはこれから自神がこれから何度も
お母さんのお怒りを買ってしまわれたわ。今からお母さんの罰が与えられると思うと怖くて泣きだしたかった。
この無慈悲な世界に対してエマメルダは怖くて怖くて震えていた。
助けたかっただけなのに、私にはやっぱり何もできないのね。
誰も助けてくれる神々はいないわ。震えるだけじゃ駄目よ。
お母さんに私の願いを叶えてもらうには、もっと真剣に向き合わないと駄目よ。
エマメルダは自分自神を叱咤激励して、なんとか気持ちを持ちこたえようとする。
怖々と顔を上げて周囲を見渡すと、そんなに熱くないような気がした。
それどころか、自神が乗り込んでいる
神威圧力も全く感じていないことに気づく。嘘っどういうことなの。
キョロキョロして、
神様は、私を見てくれてたんだ。ありがとうございます。優しい神様。
自神を守ってくれている神様に、一言お礼を言いたいと探すけれどもまったく見当たらない。
それならばとエマメルダは、また祈りを捧げだした。
「私を見守ってくれて、神様本当にありがとうごさいます」
「私は、祈ることしか出来ませんが、神様のことを思ってお祈りします」
聖女のように、献身的に祈りを捧げる姿に1柱の神は、助けて良かったとほっとした。
実は、エマメルダは、助けられた神様を自神の視界に入れている。
エマメルダの視界に入っている神は、エマメルダには、地獄の底にいる怪物として
お母さんが私に罰を与える為によこした魔獣として認識していた。
だからあれほど怯えていたのた。
自神を
エマメルダの魔獣と認識されていた神はエマメルダに祈って貰えて大満足だった。
自神が今ならなんでも出来そうな気がする。
「御力漲るぶひ~、もうビンビンぶひ~」
実際その信仰の力を貰い、彼神は、一回り体格が肥大化した。うほーおいしーぶひ。
その神は、名は『ブタデオークマッタ』
オークとベアー系魔物に崇め奉られている神の1柱であった。
お姿は、オークキングを10倍強くした体型と誰もが怯える顔立ち、ベアー種の特徴もあり、真っ黒の毛皮と真っ黒な尻尾を身につけていた。
腕は4本装備である。見た目はほぼ間違いなく、邪神と見られても仕方がない。
「怖がらなくても、大丈夫ぶひ」
「守ってあげるぶっひ」
「弱い子見ると助けたくなるぶっひ」
「だから、安心してぶひぶひ」
彼神の性格は魔物にも等しく優しくなれる良い奴なのだ。
ただちょっと変態なだけだ。
「だから、妄想は許して欲しいぶひぶひ」
「次はあの神衣装きせて、楽しむぶひぶひ」
「ぶひぶひぶーひ、ぶひっ凄いぶひー」
「そこは、いけないぶひ~」
「おたすけぶひ~やめてぶひ~」
「もう好きにしてぶひ~」
彼の脳裏世界では、すでにエマメルダは、彼神の巫女となり傍で仕え、
彼神の為にあんな事やこんな事までいろいろな事をして貰っていた。
「ぶひ、ぶひ、ぶーひ、ぶうひー、神体中が熱いぶひ~」
ブタデオークマッタは、思った。
これは、恋ではなかろうかと。
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