第9話 服部さんの証言
「この子達は本当に幽霊なんだね……」
あの後、俺は服部さんに経緯を説明した。最初は半信半疑だったものの、実際に貞代や佳代に服部さんを空中浮遊させたり、締め落とさせたら納得してくれた。
だが信じて貰うためとはいえ、少しやり過ぎたか?
なんかさっきよりげっそりとしている気が……。服部さんは疲れ切った様子で項垂れる。
「まさかこんな非科学的なことが起きるとは思わなかったよ」
「信じられないでしょうけど、本当なんですよ」
『私達、殺されたんです。このマンションの地下に埋められてて、それで地縛霊に……』
「なるほどねぇ若いのに大変な……え? ここの地下に遺体あるの? マジで?」
『はい、私たちと違って自我のない娘も合わせると……10人くらいですかね?』
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 同じ場所に埋められてるってことはだよ、君たちは……同じ相手に殺されたってことかい?」
『そうですけど?』
顔面蒼白になった服部さんが絶句するが、それも当然だ。いきなり自分の住んでいる場所で、10人も殺されて埋められていたと知れば誰だって驚く。
「あの、言いにくいんですが……最近、誰かが地下に入ったりとかそういうことはありませんでしたか?」
『うーん、そもそもこのマンションに地下ってなかった気がするんだけど……』
「地下ピットってのがあるんですよ。だいたい一階の共用廊下に床蓋があって、その中に高さ2mくらいのスペースがあるんです」
「ほぉ……それは知らなかったな。ん……?」
貞代の言葉に、顎に手を当てて考え込む服部さん。どうやら何かを思い出しそうな様子だ。頼む、何か手がかりだけでも思い出してくれ!貞代も同じ気持ちだったのか、服部さんに縋りつく。
『何か知ってるんですね!? お願いします、どんな小さなことでもいいんです!』
「ひぃっ!? ちょ、ちょっと待って! 思い出す前におじさんの心臓が止まっちゃうぅ!」
どうやら服部さんは貞代たちの事が怖いようで、顔面蒼白になって震え出す。
まぁ一般人はこんなもんだよな。俺は貞代を服部さんから引きはがして間に入ると、服部さんはほっと胸をなで下ろす。
「ありがとう、鳥塚君。ええと確か……一年くらい前に……」
「心当たりがありますか?」
「うん、仕事が終わって帰る時にエレベーターが混んでいてさ、階段を使ったんだ。その時、管理人室のそばに大家さんがいてね。大きな荷物を肩に担いで床蓋に入ろうとしていたんだ。下水のメンテナンスって言ってたけど……」
怪しいなそいつ。絶対嘘だろ。
そもそもにメンテナンスにそこまでの大荷物が必要とは思えない。
「その大家ってどんな人なんです? 名前とか分かりますか?」
「あぁ、大家……たしか葛森さんっていう人でさ。親父さんが不動産の社長でね、二十代後半の少しチャラい人だよ。特に怪しい感じはしなかったなぁ。あくまで俺の印象だけど……」
「ふむ……」
俺はスマホを取り出し、服部さんの証言をメモしていく。今のところ大家の葛森とかいう奴が怪しいな。まずはその葛森とか言う男を当たってみるか。
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