友達の怖い話①
友達の話なんですけど。
友達が、廃墟で遊んでたら急に俺が現れてビビって逃げ出したっていう小さい頃の不思議話があって。
その時俺は廃墟にはいなかったんで、ドッペルゲンガー的な話なんだろうなってずっと思ってたんですよ。
そういえば、その廃墟ってまだあるかなって思って、地元にいるその友達に聞いてみたんです。
そしたら、それお前の話だろって言われて。
俺が、廃墟で遊んでたら急に友達が現れてびっくりして逃げ出したってそう話してたじゃんかって言われて驚いて。
でも思い返してみても、廃墟の中で友達がわあってびっくりして、絶叫しながら必死に出口を目指す後ろ姿の映像しか思い浮かばないんですよね。
その映像ががっちり記憶に残ってるんで、なぁんか納得いかないんですよ。
やっぱ友達が俺を見たって話だと思うんすけど、みたいな気持ちになっちゃって。
少しして、たまたま俺と友達の里帰りが重なって会おうってなった時があって。
やっぱその話になったんですよ。
そんで、俺が、廃墟を探検してた友達の目の前に急に現れて、俺の顔にビビってお前がうわーってびっくりするっていう映像が、ちゃんと脳みそに残っているって熱く語ったんですよ。
まあ、要するに勘違いしてるのそっちじゃね?的なかんじで。
そしたら、友達が、廃墟を探検してた俺の目の前に急に現れて、ビビった俺がうわーって逃げ出す映像が記憶にあるって言い出して。
なんで自分の体験をそんなふうにひん曲げちまうんだ?とか言われて、いやいやいやって言い返そうと思ったんですけど。
あれ?って
友達もあれ?ってなって。
いや、仮にですよ。
俺が、友達の目の前に急に現れたって話が、正しいとするじゃないですか。
なんで俺はその記憶を、俺主観の視点で記憶してんのかなって。
まるで俺がその場にいたような視点で記憶してるのって、違和感ないっすか?
友達が言うように、俺が友達を見たって話が正しかったとして、友達が友達主観で俺を、逃げていく俺を見てるっていう記憶にしてもそうですよね。
なんでその場にいなかった人間が、いたかのような視点で記憶してんのかって。
あと、そもそもフツーに考えて。
何で俺や友達が急に出てきたくらいで、そんなビビって逃げ出すの?って。
そう考えると、その視点の持ち主って、本当に俺や、友達かなって。
俺や友達が記憶している視点って、誰の視点?ってなってきて。
そんな話をしてたら、そういえば俺も友達も、あの廃墟ですごい怖い思いをしていることを思い出したんです。
何がどうとかは、全然思い出せないんですけど。
ただなんて言うか、お互いに話してた廃墟の怖い話って、あんまり良くない何かの、やばい感覚みたいなのを共有しちゃってる感じがして、どんどん気持ち悪くなってきて。
この話は金輪際しないって、2人で決めました。
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