心霊スポット巡り

中学の時の話なんですけど。



地元に有名な心霊スポットがいくつかあるんで、そういうところに友達何人かで集まって行くのが、なんていうか、流行ってた時期があったんです。

俺の友達もコンビニに集合して夜中に突撃したらしくて。

近くの廃工場らしいんですけど、友達みんなで懐中電灯持って、チャリで向かったんですって。

その廃工場に入り込んで少ししたら、どえらいのが出たって言ってて。

何が?って聞いたら



ホームレスのじいちゃん、って。



急に後ろから「こぉらあぁ!」って大声で怒鳴られてめちゃくちゃびっくりしたんですけど、そこからじいちゃんがすごい剣幕で「そこに座れぇ!」ってまた怒鳴って。

友達みんな逃げる間もなく、ホームレスのじいちゃんが掃除したであろう床に30分以上、正座させられたんだそうです。

その間、何をされたかというと横一列に並んで正座する友達たちに


お釈迦様の話をずっとしてきたんですって。


お釈迦様はたいへんに尊いお方で、お前たちのような若い時分から勉学に勤しみ、体を育むための運動に余念がなかった。

やがて人は死ぬということを知り、その無情さを知るために出家し悟りを得て、仏になられたのだ。


って感じの話だってのは覚えているらしいんですけど。


もう足のしびれが凄くてそれどころじゃなくて。

なのに延々とそのじいちゃんの説法を聞かされて散々だったそうです。


話を終えて最後にじいちゃんが「わかったな?」と、聞いてきたので。


とにかく「わかりました」と答えて。


「よろしい。気をつけて帰るんだぞ」とお許しをいただいて。


それからようやく廃工場から脱出できたらしくて。


あそこはやべぇ、って友達が言ってました。


って、話を当時通ってた塾の友達にしたら


「知ってるそのじじい!」


と、思わぬ食いつき方をされて。


その塾の友達は、高2の兄貴とその友達たちと一緒に、ある廃病院に行ったんだそうですが、その廃病院の中を探検してたらホームレスのじじいが後ろから現れて、やっぱり怒鳴られて。

そんで、正座させられて延々とお釈迦様の話を聞かされたらしいんです。


「足の感覚なくなって、しばらく動けなかったよ」


って、その友達がぶすくれながら話してたら、聞いていた隣の席のやつが


「俺もそのじいさん知ってる」って言い出して。


その隣の席のやつは、大学生になる兄貴の車で、県内の心霊スポットに行ったんだそうです。

そこは地元でも有名な廃寺で色々と噂があるところなんですが、そこでそのじいさんに正座させられて、やっぱり延々とお釈迦さまの話を聞かされたらしいんです。

ただ、その隣の席のやつが首をひねってて



「俺が兄貴と廃寺行ったときと、その廃工場のやつ。同じ日じゃね?」って。



というのも、その隣の席のやつと学校の友達が近所で。

兄貴の車でそれらしい連中がコンビニに集まっているのを見たらしいんですよね。

え?って思って、LINEで日付聞いたらやっぱそうなんですよ。




隣の席のやつと、学校の友達、同じ日に違う場所で、ホームレスのじいちゃんに怒鳴られているっていうことになるんです。




廃工場と廃寺の間は、車で20分はかかる距離なんで。

あり得ないんですよ。




なんかそれがわかってから、俺の周りでは心霊スポット巡りするやつがいなくなりました。




怖い、とかよりは、どこにでも現れて延々と説教されるのがヤダってことで。




俺もやですもん。





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