道案内

友人たちと旅行に行った時の話です。



友人7人と車二台で相乗りして、尾瀬に旅行に行こうということになりました。

友人の赤いセダンが道案内として先行し、私が運転して後ろをついて行きました。

まだおおらかな時代でしたので、それぞれお酒もタバコも飲んで、いろいろな話をしながら車の旅を楽しんでいました。

もちろん私は飲んでませんよ。

何しろ道が分からないので、友人の赤いセダンについていくのに必死でした。

助手席のやつにも見てもらいながら、運転に集中していました。


1時間ほど走った頃ですかね。

よく覚えています。

信号で赤いセダンの後ろに止まると、後部座席の友人が手を振ってきました。

私も助手席のやつと一緒に、うるせぇって追っ払うような仕草をすると、笑いながら前に向き直りました。

信号が青に変わって。

タバコを灰皿に置いて、アクセルを踏む。



そこにいたはずの赤いセダンが消えていました。



前には黒の軽自動車が走っています。



軽自動車の前に出たのかな?

いません。

もちろん後ろにもいません。

どういうことだ?




隣をみると、助手席のやつも同じように驚いていました。




後ろのやつらも、首をひねっています。




とにかく道なりにしばらく走っていたら左手にスーパーがあり、そこの駐車場に見覚えのある赤いセダンが停まっていたので、とりあえず入りました。


友人の車でした。

合流して、話を聞いてみたのですが驚きました。




赤い車の友人たちは、私たちを見失っていたというのです。




いつの間にか後ろに私たちがついてきていないことに気づき、このスーパーで止まって、私たちの車が通り過ぎるかもしれないと道路を伺っていたとのことでした。


私たちはついさっき見た光景を話しましたが、そんなはずはない、見失って30分は経っていると友人たちは話を聞いてくれません。




これが私だけなら、気のせいだとかぼんやりしていたとかで終わる話ですが。




私の車に同乗していた友人3人も、同時に見ていますので。




そのあとは何事もなく尾瀬に到着し、ひとしきり観光して、予約していた民宿に泊まってと、楽しく過ごすことができました。

夜はやはり、突然お互いの車が消えたことの話でもちきりになりましたが、最終的にはタバコか酒の飲み過ぎだ、で笑われて終わりました。




煙に巻かれるとはこのことだと、赤いセダンの友人がよけいなことを言っていましたね。





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