第3話
「お邪魔します」
「はぁーあ」
と乗り込む子達と違いどこか堅い挨拶をしながら助手席に乗ったマユは喋らない。
大体の子は同年齢位だが,マユは何歳なんだろう…?
濃いメイクはこの世界では当たり前で,年下と思えば年上だったり逆にナチュラルメイクだからと若いなんて言いきれない。そんな世界に入ったのは,おれが公務員を辞めてからだ。
地方であれ,堅い職業に居た方が給料は良いし何故収入の良さを捨ててまで夜仕事に就いたかはおれ自身分からない。
「可愛い子がいるからだろ」とか「楽だもんな」とか言われるが,現実はそんな甘くない。
実際チャラチャラしたように見えるからの偏見であってそれは未だ根強い。
その界隈でスーツ姿でかたまってる人を見ればイメージなんて簡単につくが,これだって仕事だ。閑古鳥が鳴き続ける店なんかそもそも人を雇う事も店舗を構える事もまず無理
「ねーコンビニ寄って」
「あいよっ。いつものとこでいい?」
俺の考え込む癖はいつもこの聞くのでなく半ば命令により現実に戻され助けられる。
「頑張って飲んで朝まで働いてくれてありがとう」
なんて言ったら「きもっ」の一言で片付けられるから,ただ従うだけ。
普通車で助手席にマユ,後ろに二人乗っていてその二人が財布片手に出て行き,おれとマユの二人きりになった。
マユは乗る時の「お邪魔します」以来一切喋っていない。
大体の子がオンとオフがかなりハッキリしていて仕事が終わった途端無口になる子や,元々喋りが好きなのかずっと話してる極端なパターンしかない。
これもまたこの仕事ならではでもある
「マユちゃんはいいの?」
沈黙が苦痛では無かったが話したかった
「はい」
またこれだ。ふっと笑ってしまったらしい
それに気付いたののか
「お金があれば寄りたいですけどね」
楽しげにあれこれ選んでいる子達をまっすぐ見ながら軽く笑う。
「なんなら何か買ってこようか?」
「いや,いいです」
こんな短い会話だが苦ではない。
言葉は少ないがこの空間は決して冷えきってはいなかったからだ
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