やり直したい過去と変わる未来
高山 響
プロローグ
『もし過去に戻れたらやり直したい過去はありますか?』
気温が32度を超えるようになった6月のある日家のポストに一枚の手紙が入っていた。
「何だこれ?」
宛先も書いてない。ただ、その手紙にはその文章と一つの電話番号が書かれていた。
「どうしたの?」
手紙を見ながら部屋に戻ると妻が不思議そうに声を掛けてきた。
「いや……なんかこんな手紙が入っててさ」
手紙を妻に見せると妻は首を傾げてこう言った。
「なにも書いてないけど……?」
妻から手紙を受け取り再び手紙を見るが手紙にははっきりと文章と電話番号が書かれていた。
「いや……もし過去に戻ったらやり直したい過去はありますかって書いてあるじゃん」
妻にそう言うが妻は訝しげに私を見て
「疲れてるんじゃない?今日はゆっくりしなよ」
そう言って洗い物をしにいった。
「やり直したい過去ね……」
一人になった部屋でポツリと呟きながら頭の中でやり直したい過去がいくつか頭に浮かんだ。そして右手でスマホを持ち電話番号を打ち込んでいく。数回コール音が鳴り流石に誰かの悪戯だと思い電話を切ろうとすると電話がつながった。
「もしもし?」
私がもう言うが電話の向こうの誰かは何も言わなかった。
「悪戯ですか?」
『……』
電話の向こうにいる誰かは何も答えず何かを待っているようだった。
「……昨日、喧嘩した過去をやり直したい」
気まぐれだったのかもしれない。悪戯でも構わないと思いながら変わっても変わらなくてもいいことをポツリと呟くと電話が切られた。
「……まぁ、こんなので過去が変われば苦労しないよな……」
床に寝転がり、天井を見上げていると唐突に眠気が襲ってきた。遠くからアラームのような音が鳴ってるのが聞こえたがゆっくりと私は睡魔に身を任せ、意識が落ちていくのを感じた。
やり直したい過去と変わる未来 高山 響 @hibiki_takayama
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