第38話 人見知り少女、ルナ
「ローラシア王国の首都、ネフィリムフィア。どうですか? 初めて見た感想は」
「さすが王都って感じだよね。おしゃれそうな店がいっぱいある。あとで行ってみよう」
「こんな人いっぱいの道、俺初めて見たぞ。おっ、あの肉屋、うまそうな肉を売ってる。食って見てぇ!」
メルアも、ダルクも、疲れを吹き飛ばすような珍しい光景に興味しんしんに街並みを見つめる。俺もこの世界に来て、こんな大きい街並みは初めて見る。
その中央にある場所に俺たちは辿り着いた。どうやらここが馬車の拠点場所のようで、ここからは徒歩になる。
「よっと」
まずはメルアがこの場所に降りる。ずっと座っているのも疲れる。
俺もメルアも、降りた途端思いっきり背伸びをする。
人通りの多い、石畳の道を俺たちは歩く。
この辺りは商店が立ち並ぶ通りなのか、メルヘンで、おしゃれな街並みが広がり、見ていて楽しい。
まるで物語に出てくる中世のヨーロッパの街並みをイメージしたよう光景だ。
そんな光景を物珍しそうに見ながら15分ほど歩くと、目的の場所にたどり着く。
シェルムさんがその場所を指さす。
「ここがこの街の本部です。同時にローラシア王国のギルド協会本部としての役割を兼ねています」
「へぇ。でっかくてすごいなー」
「うん。それに建物もきれいですごい立派だね」
俺たちの視界の先にあるもの。確かにそれは豪華絢爛で大きい大聖堂のような建物。
大きさは俺たちがこの世界で見てきた中で断トツに多い。
それに神々しい神秘的な雰囲気をしていてギルドの本部としてふさわしい雰囲気をしていた。
当然メルアとダルクはこんな建物を見るのは初めてだろう、憧れのまなざしでその建物を見ている。
入口を見ると、たくさんの信者が出入りしている。それも個性的な武器や亜人たちもいる。
「さあ、中に入りましょう」
シェルムさんの声掛けの通り、俺たちはギルドの中へ。
中に入ると、たくさんの冒険者が掲示板を見てクエストを探していたり、たわいもない日常会話をしていたり、とても賑やかな雰囲気になっている。
内装も俺たちの村のような質素なものではなく、どこか豪華なつくりだ。
そんな人たちを横目に俺たちは建物の奥の部屋へ。
そして廊下の通路でメルアがシェルムさんに話しかける。
「そういえば、ルナちゃんっていう子はどこにいるの?まだ見てないんだけれど」
その時だった。
「ルナは、すでにここにきているようだ。あ、いたいた。あそこにいるのがルナだ」
俺たちはシェルムさんが指を差した方向を向く。するとその先に一人の少女がいた。
「ひいいいいいいいい~~~。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
そしてその少女は体の半分を壁に隠しながらびくびくと体を震わせ、俺を見つめてくる。
淡いクリーム色の髪、ぽわぽわしてカールがかかっている。服は白を基調としたワンピースにロングスカートで上品な服装をしている。おっとりとした品のあるお嬢様という感じだ。
「あれが、ルナちゃん?」
「ええメルアさん。彼女はとても人見知りで臆病なんです」
人見知りか、意外だったな。
ぶるぶると怯えているルナにシェルムさんがそっと手を差し伸べる。
「大丈夫だよ。彼らは怖くない。ルナの魔王軍の力をやっつけに来た人達だ」
「本当──に……?」
するとメルアがにっこりとした笑顔を浮かべ、ルナに近寄ってくる。
彼女の笑顔に、ルナの警戒がすこし緩んだのがわかる。
「本当だよ。ルナちゃん! だから、怯えないで──」
その太陽のような笑顔にルナは安心したのかゆっくりと壁際から手を離してこっちへ向かってくる。さすがメルア、明るくて誰にも好かれるだけあってルナも安心してようだ。
そしてメルアが差し出した手をぎゅっと握る。
「私メルア。ルナちゃん。よろしくね」
「メルア──ちゃん。よろしく──、お願いします」
ルナが控えめそうに微笑を浮かべた。
「──どうやら、打ち解けられたみたいだね。ルナは人見知りな性格だったから、それはよかった」
それを見たシェルムさんも安心したようで、話し合う部屋へ案内し始めた。
その部屋は会議室のような机といすの並びになっていて、俺たちはシェルムさんの近くの椅子に座り始める。
すると、ちょうどいいタイミングで、メイド姿の女性が入ってきて俺たちに紅茶を入れてくれた。
「とりあえず、私達のためにはるばるネフィリムフィアまで来てくれてありがとうございます。私があなたたちをここまで読んだのは、ほかでもない親友のルナのためなんです」
するとダルクが紅茶を飲み干して質問をする。
「でもさぁ。その子のこと、よくわからないぞ」
「わかりました、ダルクさん。彼女のことについて、詳しく説明いたします。ルナは生まれつき魔王軍の力を持っていて、魔王軍としての人格がすでにできてしまっているんです」
「人格? それはいつ出てくるんだ。彼女の意志とは無関係なのか?」
「はい、信一さん。ひとたびその人格が発動してしまうと、しばらくその人格に 破壊の限りを尽くし、圧倒的な力で街を壊し、それを止めようといた冒険者たちを苦しめてきました」
すると、その言葉が急にうつむきだし、ボソッとつぶやいた。
「正直、思い出すだけでもつらい──」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます