第30話 とうとう始まる、メルアとのデート
待ち合わせの正午の時間。
雲一つない住み切った空。天気は最高。
公園に到着。
昨日の公園の木陰に彼女はいた。
「信一君。おはよう!」
「お、おはよう──」
控えめに行って、素敵だ。
純白を基調としたワンピースに、淡い青色をしたフリフリのミニスカート。
彼女のかわいさと、純粋さがこれでもかというくらい表現できていて、魅力が引き立っている。
彼女の、元気で明るい女の子とうイメージを一新させるイメージだ。
メルアの言葉に、駆け寄りながら俺は声をかける。
「ごめん、待った?」
「ちょっとね。早く信一君に会いたくて、ちょっと早く着いちゃったんだー」
にっこりとした笑みを浮かべながら、彼女は俺の隣に寄ってくる。
わずかに二の腕が触れで、ドキッとする。そして、彼女の髪がかすかに顔のそばを通過する。
「メルアの髪、いい匂いだね──」
オレンジの香りがかすかにする。香水でも使っているのかな。
俺は本音を伝えたつもりだったが、メルアは一瞬で顔を真っ赤にし、「そ、そんなこと言わないでよー」と言いながら顔をふくらませてしまう。
誉めたはずなのに、地雷でもふんじゃったのかな……。
「それじゃあ、デート、行こうか」
そういって俺はメルアに手を差し出す。メルアはほんのりと赤い顔で、俺を見つめている。
「で、でもどこに行くの?」
「じゃ、じゃあメルアが使ってる香水が売ってるとこ!」
口から出まかせだった。さっき香水のことを口にしたから行っただけ、ただそれだけのことだ。
そして互いの視線が、ぎこちないながらも会い、見つめあう。
「こ、香水? 興味とか、あるの?」
「こ、香水ってどこで手に入れるのか、教えてほしいんだ」
とりあえず、場をつなぐ。
「わ、わかったよ。信一君が、そこまで言うなら──」
そう恥ずかしそうに言って、メルアは俺が差し出せていた手をそっと握る。
女の子らしい、冷たくて繊細で、柔らかい手。
出来れば、ずっと握っていたい。
そんな思いを心に残しながら、俺たちは目的の場所へ向かった。
村を歩くこと10分ほど。
「ここだよ」
メルアがその場所を指さす。メルアの話によると、この店はとある商人が開いている店で、魔王軍の土地と王都をよく行き来している。
その中で互いにとって有益なものを、売りつけることで、珍しいものを手に入れているらしい。
白髪を蓄えたおじいさんが俺たちの元にやってくる。
「へいいらっしゃい! って嬢ちゃんかい」
「今日は、香水を見せてほしいんだけれど、いいかな?」
顔なじみらしく、仲良く2人が話している。
店内を見回す。どこか高級感のあるたたずまい。店内には珍しい形の人形や小物類、食器などが丁寧に置かれている。
そして、店中から、どこか不思議なにおいが漂ってくる。
窓際の棚には、カラフルで色とりどりなガラス瓶が並んでいる。その瓶もまた、きれいなプリズムをしていて高級そうだった。
「どんなのにするのかい?」
「香水? つけているんだ」
「まあね。外に出かけている日は大体つけてるよ。汗かいたりするから、こういうの気を使っているんだよ」
へぇ──と意外に思った。
そうなのか、女の子って色々大変なんだな。今まで気づかなかったことが、少し恥ずかしい。
感心すると同時に、メルアのつけている香水のことが気になり、クンクンと嗅いでみる。メルアはその姿のびっくりして1歩退いてしまう。
「ちょ、ちょっと、女の子のにおいをかぐなんてデリカシーなさすぎ。気を付けているけど、万が一ってこともあるじゃん!」
「──ご、ごめん」
何が万が一なのだろうか。
内心疑問になる。──が、流石に近づいて匂いを嗅ぐというのは失礼なのだろう。
慌てて誤ると、メルアが一つの小瓶を差し出してくる。
「これなら、安く売ってくれるって。信一君も、つけてみない?」
その言葉に、丁寧にキャップを開ける。すると、ラベンダーのような落ち着いた香りがするのを感じた。
「金貨1枚で売ってくれるって。他の香水の半額だって。使い方教えてあげるから、買ってみない?」
金貨1枚か、この前魔王軍討伐の件で報酬は金貨5枚。他にも今までの貯金もあるからから、買えないこともない。
「試してみようよ。ちゃんと使えばモテモテになれるよ!」
そんな宣伝はどうでもいいとしても、試してみてもいいかもしれない。もし使わなくなっても、教会の女の子に上げればいいし。ちょっと買ってみるか。
「わかったメルア、試してみるよ」
メルアの俺への気遣いに、俺はホッと表情を緩める。
その香水のボトルを手に取り、その香水を買った。
「あいよ。まいどあり」
香水か、今までそんな経験なかったから、楽しみだな。
そして俺たちは次の店に向かっていく。次に行くのは──。
「次は、服買いに行っていい?」
「いいよ!」
そう、先日ダルクと一緒に行った服屋だ。なんか女の子っぽくて楽しそうなデートだ。
メルアも笑顔でご機嫌。楽しそうだし。
いいデートになるといいな……。
それからしばらく歩くと、目的地に到達。
店主のおばさんだ。
「ちわーっす! 店主さん。今入って大丈夫ですか?」
どこか年季を感じさせる店内には、様々な服が所狭しと並んでいる。
「おうメルアちゃんか。男作ったのかい?」
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